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ユウとアリアとリリアと

女神様の夢を見て・・・それから見張り(見習い)交代まで眠れなかった。

時間が分からない。相当長かったような、そうでもないような。



起こしに来たのはアリア。


テントの外に出ててすぐ、アリアから聞いてきた。

「怖い夢でも見たぁ?」


「いえ、女神様の夢・・・夢じゃないと思います」

「・・・遊んだとかじゃなく、お告げ?」

「そんな感じです」


「ちょっと待ってー!」



アリアはテントに戻りすぐ出てきた。


バッグからシートを出して広げ、リンゴっぽい実とまな板を取り出した。

ヘアブラシ、何かの本、鍋、バケツ、調理台、大弓、・・・。


「あったぁ!」

ノートと筆記具らしきものを探していたのか。


魔法袋って、四次元袋なのかもしれない・・・。



「もちろんまだ夢覚えてるよねぇ、すぐに内容を詳しく書いておきなー」

思い出して書いてみる。



「書けた?もう一度しっかり順番に思い出して、修正してみてー」



中学生くらいのザンさん、女神様がさえぎる


・まだ会うな、会ったら・・・(死ぬ?)


・もっともっと強く、 気高く


・よこしまなものに気をつける(アレか?)


・時が来れば会えるが、それまで待て


さっきは“気高く”が思い出せなくて、“高貴に?”と書いていたくらいで、大丈夫そうだ。



「大丈夫そうねぇ」

メモを見て自分が頷いているのを見て、アリアが言う。


「で、あたしそれ読めないから、よければどんな夢か教えてもらえる?」



まず、夢の全体の感じを話したが、ある用語が思い出せなかった。

「覚醒してる夢、夢なのに目が覚めている感じって言うんでしょうか?」


「明晰夢ねー」

明晰夢というと、(元の)現代の言葉だ。


なぜそれをと思い、直後に納得できた。

女神様の力で言葉がわかるのだ。


こちらの言葉で魔物のことが日本語で「魔物」と聞こえるように、同じ概念の言葉は同じになる。



「でも、普通に言う明晰夢とは違うと思います。現実なんです」

「なんとなくだけどぉ・・・分かった」


順を追って内容を説明する。そのまま。


「信じるしかないよねぇ、女神様だという事は。

ちなみに、例の判定は意味ないから使ってないよ」


「信じていいんでしょうか・・・ですよね」

意味があるのか分からないが、自分に納得させるようにもう一度聞いてみた。



「どこかのギルドに着いたら、早速ザンさんの捜索を依頼しようとおもってたけどぉ。とりあえずやめるべきねー。


気高くは光というか“聖”の属性のことねー。

強く気高くなれるように協力するしぃ、邪悪に注意というのは改めて腑に落ちた気がするよ」



なぜか、リリアと関わりを持ったこと。

これだけでは“悪魔教”に気づかれやすい事になってしまうが。


そこでリリアはゼロから再出発出来、ユウは“アンテ”との関係を持つことが出来た。


“アンテ”については分からないことが多すぎるのだが、アリアは任せろという。




それから、なぜ慌てて夢を記録させようとしたのか教えてくれる。


「しっかり記憶したつもりでもぉ、簡単に夢の記憶は無くなってしまうものなのぉ」


自分も同じことを思ったことはある。

「今回の場合、普通の夢とは違うかもしれないしぃ、記憶に残る可能性もあるけど念の為ねー」




アリアは夢の研究についても話してくれた。


「あたしの生まれた里の人々は全員明晰夢を見ることができるのぉ。

夢を常に記録してぇ、夢を見ている時に『これは夢だ』と自覚する練習をするのねー」


「そんな事がどうやって?」



「ほとんどの場合は自分の手のひらねー。夢の記録によく出てくるものがあれば、それを使うほうがいいけどぉ。

あ、それを、手を夢の中で見つめるのねぇ。夢と現実では見え方が違うから、そこで気づく。


普段から、夢でも普通にやってしまうくらいに、手のひらを見る習慣をつけておくのー。

ここらへんまでは、暇な貴族が本にしてたりして一部では知られてるけどぉ」



明晰夢の話はSNSで読んだことがある。あまり覚えていないが。

それから先?



「ヘビっぽいのがいます!」


【聴】で、なんとなく周囲にいたヘビの一匹が目に見えるくらいまで来ようとしたのが分かった。

アリアが何か投げ、走って行ってまた帰ってきた。


ナイフの突き刺さったヘビを持っていた。

まな板に片側を固定し、開きながら話再開。



「これはうちの里だけの話で、よそ者には無理なんだけどねぇ。

里以外の人に話すこともほぼ無いけどぉ。

夢の中で、知っているあらゆる場所に行ける。

仲間内ではお互い恥ずかしいからダメな場所は決めてるけどねぇ」


「それって無事に体に帰れるんですか?」


「それがねえ・・・魂だけ出かける、とかじゃなくてぇ。

調べても解明不能で、一説には遠くが見通せてるだけとも言われるけどぉ。

里の話はまたしてあげるねー」




アリアは懐中時計のようなものを取り出して、見る。

「ちょっと過ぎちゃったけど、リリア起こすねー」


リリアが起きてきた。

身支度のための水を魔法でさっき見たバケツに一杯に注いであげる。


大丈夫そうねーと、アリアはすぐ引っ込んだ。



「ふわあ。ユウ、もうちょっとがんばってね・・・」

いつも鋭い決断と行動を見せるリリアさんのこういう姿はほっとするかも。


ちなみに私の起きている時間は大体2人と同じだが、見習いなので半分ずつ1人ずつと過ごす。




「実は、女神様の夢を見て・・・」

同じように夢の話をした。


更に、アリアが言うには結果的に最も私を守れるようになったはずだという事を。

ザンさんの捜索はしない事も伝えておく。



「そうね、あれから色々気づいたことがあったわ。

私は両親の仇を討つ事に必死過ぎて、周囲のことを何も考えていなかったわ。

一度死んで、時間を置いて、整理できたことは多いわ。


大教皇アードスは完璧に見せ球、罠ね。

ウールもヤツの事は知っていたし、恐らく少なくとも数カ所であれほど目立つ事をやってきたことは意味があったのね。


多くの生贄で手に入れた能力で、最大権力である大教皇に座ることで自分の欲望を満たした・・・とも考えられるけど。

恐らく何者かの下で、ある程度の政治力を持つことはもちろん・・・一見隠れた悪魔教の、“実は見せ球”として出てきたと思ったほうがいいと思う。


でも、“アンテ”は自分が思いを果たすことに協力し、自由にさせてくれたと思っているわ」



遠慮しつつ、聞きづらいことを聞いてみる。

「敢えて、リリアさんの復讐心を利用したってこと・・・なんでしょうか?」



「違うわ。当時の私にとっては仇討ちが全て。

たとえ死んだとしても悔いはなかったと思う。

仮にアードスを殺せて、その後手配されて殺されても。


私の思いを最優先して果たさせてくれたの、感謝しているわ」


ほっとした。

そう、リリアにとってはそれが全てだったのだ。



「あなたに助けられて・・・巻き込んでしまって本当に申し訳ないと、数日前まではそれしか考えられなかったわ。

結果的に大きなあなたとの縁を得られ、得をしたのは私だけだと。

でも“アンテ”はどう動くか・・・。


アリアからなにか聞いた?」



「アリアさんは“アンテ”に関しては心配はいらない、任せろ、みたいに言ってました」


やはりいつものように沈黙してしばらく考えるリリア。



「何となくわかった気がする。

とにかくあなたは全力で守ります。逆に守られる方になる気もしないでもないけれど・・・」


何やら、はっきりと教えてはくれないようだ。



女の戦い?違うか。

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