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ユウは再会する

初めての野営、というよりキャンプかと思えるほど夜は快適だった。


ユウには見張りは徐々に任せるから今晩はゆっくり眠りなさいという。




今晩の前半見張りはアリア。


「おいしいおいしい蛇ちゃん採れると思うから楽しみにねー」


どこかの催しで蛇は見たことがある。正直ゾワッとした。

アレが本当に美味しいのかとも思うが、アリアがいうならそうなのだろう。


蛇の事は忘れ、テントの中で横になる。



床は魔道具の木の床で平ら、テントの中はエアコン付きのように快適だ。


適度に柔らかいマットが敷いてあり、薄い毛布と一体型になっていてそれをめくって横になり、下半身中心に覆う。

寝ている間体温が下がることは、この世界でも経験的に分かっているのだろう。


ベッドこそ無いが、まるでホテルである。



後で知ったが、このような環境は種々の魔道具を持てるほど稼ぎ、その上で収納の魔道具を持っていないと成立しない。


限られた上級冒険者にのみ可能な事だそう。




暗いテント内の明かりの下、リリアとユウはまだ眠れず話していた。


「色々面倒に巻き込んでごめんなさいね」


「え、いいえ・・・。

あの。めがみ・・・神様が“縁”を大事にしなさいと言ってたので。

こうなるのは決められていたんじゃないかと」


「あ、神様は女神様よ」

「?」



アリアも山の家でわざわざ“神様”と言い直していたが、わざとだとユウは思っていた。


そもそも、今の世界の神が広まった当初から“今代の神は女神”とされていて、普通に神と呼ぶらしい。

改めて知ってもふーんと思うしか無いのだが、自分の会った女神様はもしかしたら・・・。




翌日はアリアに起こされた。

普通に起きて、魔法で出す水での身支度など教わる。


そういえば、朝アリアにヘビで起こされるイタズラなど想像していたがそれはなかった。

夜のうちに開いてすぐ食べられるようにしたらしい。


リリアもヘビを捕まえていた。

自分も獲らなければならないのかな、とユウは少し憂鬱になった。


ヘビは開いたものに軽く塩など振り串に刺して丸焼きメイン、何でも使える。鶏肉のよう。

スペシャルスパイスゴブリンより美味しかった。



~~~~~~~~~~~~



恐らく一週間以上は過ぎた。



冒険者でも初心者や中堅の人々にとっては、とてもでは信じられない道中のルートだっただろう。


ゴブリンはもとより、バイパーと呼ばれるヘビや熊など、ことごとくリリアが誰より先んじて見つけ切断、残りはユウが魔法でほぼ一撃であった。


厳密には、ヘビの魔物がバイパーであり、亜種が種々存在する。

熊も同じような感じだ。


どの動物や魔物が出ればどこを狙えば倒せるか教わっているが、必殺過ぎて近づくことさえ無かった。



ただ、吐きそうになりながら、魔物の魔石の取り方や、食用肉の解体方法などを教わらなければならなかった。

これも生きるため、とストレスに耐えながら粛々とユウはこなした。


ストレスと言えば、派遣での仕事場でのあまりの扱いの悪さなど思い出せば、こんなもの辛くもなんともないと思えてきてしまうのが面白いかも。




熊に似た魔物、ポイズンベアーが出現して、この辺りからは魔物がいきなり強くなるかもしれないと言われた。


「もう少し早めに渡しておくべきだったかもしれないけれど」

と、リリアからは短めの湾曲した剣を渡される。


万が一眼の前に現れた場合のみで、少しでも距離があればユウであれば魔法で倒すのが最良だとも言われた。



その日のうちに別の襲撃者が現れた。


ギー!ギー!と鳴く猿ども。

「囲まれてる。ユウは兎に角近づけさせないように。先手必勝!」


ユウはリリアのように素早く動く自信がない。

背面を2人に任せて、兎に角視界に飛び込んだ“エイプ”を撃つ。


1匹、2匹、・・・6匹目で一発外し、慌てて剣を抜こうとしつつ撃った魔法で頭が吹っ飛んだ。

念のために剣を抜いておく。


と、3匹同時に飛んできた。



自分でどうやったのか・・・3匹同時に頭を撃ち抜いた。


後ろ、アリアの方を見る、一旦ピョーンとアリアから離れた3匹をまた撃ち抜く。

辺り全体見回す。3度に渡って数匹を撃ち抜く。


静けさが戻ったようだ。




ユウの視界の一段後ろの意識で“10”の文字が浮かぶが、別の違和感に気づく。


右下の【聴】。

文字は聴くという意味だが、これは聴力と同時に“感じる力”だと分かった。


漫画での“気を感じる”という類なのだ。

“ス○ウター”とは違う。機械ではないから・・・。


なんとなくエイプらしき残りの数匹の感覚があって、そこにファイヤーボール+数瞬後ミストシャワーを飛ばす。


本当に全て消えた。



「最後のは・・・もしかして何か見えた?」


リリアに聞かれ、能力に自分で気づき敵を見つけた事を話す。


今は周囲には何もおらず、感覚的に言えば“耳を凝らせば”かなり遠くに点在する魔物や獣の存在まで分かることを、話しながら改めて自分で気づいた。


地形も分からないし、きっちりした場所はわからずぼやっとしているが、間違いなく存在は分かる。

中には今まで遭遇していない強い気配もあった。離れてはいるが。



「確かめる必要があるわね、近づいてきたと思ったらら早めに教えてね」


「はい。たぶんですが・・・分かると思います。

強そうなのは強いって言います。私基準ですけど」


その後は、強そうなのがいる方向はまだ避け、エイプにまさに“囲ませて殲滅”しながら1日を終えた。




晩の食事を食べながらリリアがため息をつく。


「普通のエイプとはいえ、エリアにはいってこんなに楽って、笑っちゃうわ」


「完全に守られちゃってるわ―。

おばちゃん一生ユウちゃんに付いていくわー」

アリアは相変わらず。



「あ、そういえば」

聞き忘れていたことを聞いておこう。


「パーティーってギルドに申請するんでしたよね。あのー、なんていうか、魔物を倒して力が上がるっていうのは申請していないと一人づつなんでしょうか?

今日、自分だけ能力が上がったような気がして・・・」


「そりゃ嫌味・・・あはは、違うよね。ほとんど一人で倒したから誇っていいんだよ」



アリアの言葉にリリアが正確と思われる補足をする。


「申請するだけで仲間になるわけでもないし、しなくてもなる。

ギルドのは対外的なパーティーですよ宣言ね」

「お互い守ろうとする意思と、友情・・・仲間パワーみたいなもんだっていわれてるよねー」


そりゃそうだな、ギルドで申請しても形だけというのに納得。


長い間冒険者だった二人には、今日の数度のエイプ程度ほぼ誤差の範囲だろうし。




就寝時の見張りは、実質3分の1の時間を彼らと1人ずつと過ごす。


寝る前になって思ったのは、近くにオーガ?らしき強い気配はしないものの、自分が起きている方が安全では・・・

と思ってしまい慌てて打ち消した。


彼らは最初からある程度強い魔物の存在を知りながら森に入ったベテランハンター、それもランクはまだ聞いていないが相当の実力者である。

装備というか、野営での至れり尽くせりの魔道具だけ見ても。


安心して眠りにつく。








・・・男の人・・・男の子が立っている。


ザンさん・・・中学生くらいになっている。

なぜか嬉しさに涙するが・・・、


眼の前に女神様。なぜ遮るように・・・



「まだ会ってはなりません、会えばふたりとも・・・。



もっと、もっと強く気高くなるのです。待つのです。待つのです。



(よこしま)なものに気をつけて・・・。



会える、その時が来れば・・・」




目が覚めた。見張りはまだだ。


本物、女神様、間違いない。

サポートはしないと言っていたが・・・。


夢だからノーカン?



それより、言われたことを繰り返し忘れないように。


まだ会ってはならない。

会えば恐らく死ぬ・・・のか。

強くなるまで待つ。


会えるその時は、教えてくれるのか。自然と会うのか。



(よこしま)なものとは・・・アレか。

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