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次へと

転移した時は20歳程になっていた。


40歳から20も若返っていた。

それから待ち続けて20数年、正確に数えてはいない。

ギルドカードを見れば分かる。



待ち続ける時間は長かった、しかし自分にはこれ位は必要だったと思う。

なにせ、レベルを充分に上げるのに10年を要したのだ。

自分の能力の方向がそういうものだったからだ。


一番最初の頃は普通の冒険者に交じり、地味に普通に経験を積むしかなかった。

ザン達も最初は同じだが、特化能力の力で劇的に強くなった。

彼の場合、全く戦闘向きの能力ではない、それは無かった。


10レベルで芽生えたのは良く言えば特化能力を伸ばす、悪く言えば重複だった。

だが、そのおかげで周囲からは引かれる程の努力で多少多く進めた。


20レベルで他の者や魔物のレベルが見えるようになった。

最初はレベルが高いと見えなかったが、見えなければ敵が強いという事であり、攻略には役立ったと言えるだろう。


それからはずっと我慢と努力の積み重ねだった。

特化能力のサポートにより、耐えること自体はできた。

その数年が一番長かった。



50レベルに達した時、精神の速度、正確には神経速度を高める事ができるようになった。

ただし、魔物を斬るには通常速度に戻る必要があった。

いくら神経速度が速くとも、剣を突き刺した瞬間動かせない。


とはいっても習熟するに連れ『瞬間移動』と言える程の移動が可能に。

工夫次第でオーガなども撹乱出来る。

数は必要だが、持ち前の耐える力があれば楽にさえ思えた。



60レベルで他人の記憶を探れるようになった。

この頃からアンテ派として極秘で“悪魔教”信者を摘発した。

それはあくまでその後の活動への『伏線』であったが。



70レベルでメイン能力発現を確認してからはそれを磨き、相手レベルの把握と記憶を探ることでABランク昇格試験で不可欠な人物となった。

自由気ままを装うことである程度の行動の自由さえ確保しながら。


メイン能力は【不動の意思】。

サブは【強靭な精神】で、【丈夫な体】のメンタル版と言えるだろう。




この世界に来る前ウインドは『時間の止まった部屋』、女神様と部下のいた部屋で数年過ごした。

そして、世界のありのままの本当の歴史を見続けた。



あまりに長い時間だったため、娯楽のTV番組も見た。

興味のあったニホンの、女性バラエティタレントのファンになった。

あまりにおバカだが、一所懸命さが面白く惹かれた。


全く外国語のできない彼女が海外のバイトで稼げるかというのがあった。

植物園だかの草刈りだが終始要領が悪く、普通以下に思えた。

結果はビックリ仰天だった。


雇い主は「こんなに完璧に仕事をした人は初めて!」と、通常の1.5倍のバイト料を払った。

ただ言われた範囲の草刈りとその運搬をしただけだが、今までそれができた人はいなかったのである。


ニホン人にとって当たり前のことが世界では当たり前ではない。


よく、『どの国はこうだ』と言うと『決めつけるな!』と言われるが、実際国民性による違いは間違いなくある。


その国で過ごした親に育てられ、友人や学校で多くの人と過ごす。

その中で考え方や行動の方向はある程度決まる。

国が違うだけで言葉が全く変わるのに、行動が同じというのは変だ。


これは異文化の立場から見たり実際体験して初めて実感する。

体験しなければ、知識として知っていても本当には分からないのだ。



ともかくウインドは、変わっていて面白い国ニホンに惹かれていった。


歴史も真実そのままを見た。

汚名を着せられて言い返せず、ずっと流された情けなさ。

自分を捨てても仲間を見捨てない潔さ。


清濁合わせ呑んだ上で、世界を救えるのは彼らだと思った。





ウインドは既にジョゼの体の中にいた。

もしかしたら、心のどこかにメイリアやジョゼの意識が残っているかもしれない。


そんな事より問題は、メイリアが呼び出し、本人自身を100年もの間依代(よりしろ)とするとともに“悪魔教”のトップとして乗っ取っていた存在だ。

“それ”はウインドの意識をも乗っ取ろうとするだろう。


【不動の意思】と【強靭な精神】があれば絶対に乗っ取られることはない。

ただ、それが体を乗り換えた状態で全て機能するのかが問題である。

ここまでは女神様と部下のプラン通り、この先もうまく行けばそうなるが。



わざわざおぞましい儀式を行ったのは、メイリアではやがて“それ”の影響下に戻りかねず、影響を一時的に離れても自由な行動が出来ないからだ。

“それ”はメイリア自身を傷付けない、それどころか完璧に守護した。

自分の存在に絶対必要だったからだ。


直接物理的干渉ができぬよう、ウインドの3つ目の能力であるエリアごとの『隠蔽』を使ったが、それでも意識の一部には干渉していたのだ。

エリア内でメイリアの協力を得て儀式を行う必要があった。


覚悟はしていたし、【強靭な精神】の余波である痛覚を遮断する能力もあった。


待つしか無い。

このまま意識を保てるなら、女神様と部下のプラン通りに進むだろう。

ザンユウと仲間の行動を待つしか無いのだ。



私も耐えなければならない。


だが、ザンとユウがこれから自分で動けるかが大事だ。


信じろ。

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