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ウインド

後半スペース以下は、直接的表現は無いものの残酷かもしれません。

共感性の高い方はご注意ください。


『ウインドの一人舞台だった』


~~~~

ウインドはザンとの会話でふたりの能力の概要は知っている。

ザンからは直接記憶を読み取ってほぼ能力は知っているはず。


そもそも「ニホン人をこの世界に送る」と知り、それに関する計画にも加わっていたのである。

おそらくアードス含む3名に負けることは無いと思っていたのだろう。


鐘を鳴らしたのは単にスケジュールの問題ではないのかとも思える。


あの場を用意し、知らせる事でアードスと裏切り者の捕縛または討伐は果たせたであろう。

だが、悪者を倒してめでたしめでたしとなるだろうか?



ウインドは自らを『裏切り者』として知らせ、その上で公式に『ヘイワカイ』に出席した。

真っ赤な鎧を晒し、ご丁寧にも呪法陣を説明しつつアードスを罵った。


“悪魔教”お墨付きを与えたわけである。


その上で「全員殺せ」と言い残し逃走した。

普通に見れば“悪魔教”代表と言っても過言ではない。



“悪魔教”お墨付きにより、アードスを殺したザンユウが、教会を含む世界の人々から誤解を受けることは無くなる。

それどころか英雄とさえ言える。


全員がウインドの手の平で踊らされた一方、彼自身は完璧な裏切り者となったのである。



ザンはこれからウインドが何をしようとしているのか考えようとして止める。

もう何度目の事だろう。


カタカナで書かれた、「必ず出来る、信じろ」という言葉がザンへのものかウインド自身へのものか、もうどうでもいい。

両方に違いない。

~~~~


ザンの一瞬の思考は終わった。


皆でウールとバモに別れを告げ、ゴザへ帰る。




~~~~~~~~~~~~




「そうか、アードスは終わったか。

(お前は、わしを!)

もう時間がない、本当にやるのか」


「落ち着いてください。

終わらせる為には“アレ”しかありません」


「愛する人はやってくれた、あんな恐ろしいことを。

(何をやろうとしているのだ!)

どんなに愛されていたんだろう、想像さえできない」


「私には私の愛する人が、守りたい人が、大事な約束があります。

全て終わらせます」


「そう、ですね。

(おまえ達にわしを抑えられるものか!)」


「すぐに始めましょう」


「商人の女はどうする。

(そうだ、そいつがいる!)」


「彼らに任せます、任せる意味があるのです」



古城の地下処刑場だ。

多くの生贄の儀式がここで行われた。

最後になるかもしれない儀式が行われようとしている。


生贄自らの意思で。



「少しだけ話をさせてくれ。

(馬鹿め、逆らえると思っているのか!)」


「辛くなるだけですよ」


「それでもいい、最初のときの話を聞いていない。

(感傷に浸るうちに戻ってやるぞ!)

教えてくれ」


「大した事ではありません。

手品のような物です」


「そんな単純な物ではない、それがあったからこそ私は戻ってこれた。

(やめろ、穢らわしい!)」


「あなた自身の記憶です。

単にそれだけです」


その者は嗚咽し、涙を流す。

かと思うと一瞬真顔に戻り、また涙を流す。


その者の記憶が蘇る。

深く記憶が探られる。

それと同時にその者の体験がありありと蘇る。


風のそよぐ草原だ。

愛しのジョゼが女を抱きしめる。

その者もジョゼを抱きしめる。


(穢らわしいものを見せるなぁぁぁぁ!・・・やめ)


2人だけの結婚式を挙げた。

神父もいない。

教会でさえない。


一緒にいた山のボロ家だ。

自分の余命は少ない。

束の間の幸せに過ぎない。

それでも良かった。


この時が永遠に続きますように。


「ここまでです、すみません」


「ありがとう、思い出したわ。

今は干渉は無くなっています」


「本当は不安です。

あなたが一時的ですが優しいメイリアの記憶を取り戻しても儀式を続けてくれるのか」


「ならどうして思い出させてくださったのですか?」


「あなたが望んだからです」


「ありがとう・・・。

私も覚悟を決めます、もう終わりにしなければなりません。

あなたの覚悟にも答えなければなりません。

全ての汚名を着てくださったあなたの覚悟に」

















生贄は台に横たわった。


床には細かな溝が刻まれている。

血を流すためだ。

そのまま溜めておくことも出来るが、今は綺麗に洗浄され栓は開いている。


その者は大きな釘を生贄の手の平に打ち込み、台に固定する。

もう儀式は始まっている。


両手両足を固定し、その者は禁じられた呪文を唱える。

複雑な魔法陣も必要ない、双方が覚悟を決め意思を示し、唱えるだけだ。

その後に行うのは・・・おぞましい生きたままの解体だ。


祈るのは悪魔の大元であるが、この儀式が呪いなのか何なのかは分からない。




その者、元メイリアは純粋に多くの命を助けたかった。

自分が助かろうとしたわけではない。

自分が愛する人の中に残ることで、2人とも生き続けようとしたのだ。


その者、ジョゼはメイリアを全て赦し、受け入れた。

彼女が自分の中で生き続けることを望んだ。

どんなに残酷な儀式であっても行う覚悟を決めた。


以前に記憶を探ると、双方が覚悟を決めてからのイメージが薄れていた。

それが儀式自体によるものか、先程まで罵倒していた者の影響かは不明だ。



そして、ジョゼ、いやメイリアは100年以上変わらず生きている。

呪法によるものか、“アレ”の力か。

記憶を取り戻してからも、自ら命を断つことさえできないのだ。


あらゆる方法で『死ねない』。


恐らく、依代となる者が生きている必要があるからか。



今回は違う、記憶の混濁など無くはっきりしている。

明らかに以前は“アレ”の影響下だったのだ。


同じことが起きるのか?

同じ現象は起こる、だから“アレ”は必死にやめさせようとしたのだ。



ウインドには後悔は無かった。

後はザンとユウ次第だ。


私はここにまで至った、お前たちなら必ず出来る。


シンジロ

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