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アードス(1)

ユウが声を張る。


「聞きなさい、全ての者よ!」

ユウは覚悟を決めて決定的な言葉を放つ。


「この者、アードスに大教皇の資格はありません。

悪魔に魂を売り飛ばしたこの者には」



教会内にいた人を含め、ユウの魔法陣内の人々は全て解呪された。

解呪された信者の殆どがなぜここにいるか分からず呆然としていた。

普通の信者も状況がつかめていない。

信者は80人程、聖堂全員で100人いくか。



「大教皇さまに『この者』とは、闖入者が何を!」

「何をとんでもないことを」


参列しているものの中には貴族や有力商人もいる。

なまじ権力を持つ彼らは大教皇という違った権力と依存関係にある。

彼らにとってあってはならないことだ、声を上げる。


アードスはそれに乗じてユウ達を罵倒する。

「この者たちこそ悪魔の使いに違いない、捕らえよ、すぐに!」


騎士たちは赤い魔法陣を見ているが、状況の整理がつかぬまま迷っている。

アードスに従いかけ、ユウ達に歩を進める者さえいた。



そこに響く教会関係者の叫び。


「私は大教皇様に何かをされて・・・人を崖から投げ捨て殺しました!」

「私も人にあらざる所業を・・・はっきり覚えているのに逆らえなかった」


信じられぬ事を口々に叫びだす司祭たち。


ひとしきり司祭たちの懺悔が終わり、静かになった聖堂に枢機卿が声を響かせた。

「残念ながら、あの夜から私も自分ではなくなった。

大教皇様就任の晩餐のあとから先程までずっとだ」



「私もだ」「わたしも」

教皇2人が口を揃えて言う、否定するものはいない。


はっきり自らの行動を覚えている協会関係者は、もはや真実が分かっている筈。

集まった信者達には訳がわからないが。



訳が分からず何を言い訳すれば分からないのは、“悪魔教”関係者として名を連ねていた4人も同じだ。

アードス・アーシュ・トマソ。

ただ、ウインドを除いて。



解呪を確認したユウは改めて白金色の魔法陣を造り、維持する。

聖堂の半分を覆う程度。

魔法陣が全員に見え、かつ今後に備え背後の全員が逃げ込める広さだ。


敵、味方、全ての者がその神々しさと美しさに息を飲んだ。




「この役立たずが!」

叫んだのはウインドだ。

全身を覆っていたローブを脱ぎ捨てた。


真っ赤な鎧。

一部には噂程度しか知らぬものもいるが、教会の人間にとっては(まさ)しく忌むべき“悪魔教”の正装と言ってもおかしくない。


「アードスよ、お前はこの大事な儀式を目前に醜態を晒し、先程は多くの者の目の前で『赤い呪いの魔法陣』を騎士たちに放って見せた。

この大馬鹿者が! 


このアーシュとトマソの2人と共に、この場を隠蔽出来ねば教祖様は貴様を永久に見限るだろう。

この場の全員を殺せ」



ウインドが消えると同時に、舞台上背後の2階にあるウインドガラスが割れた。


ユウだけには、ウインドは既に教会から離れた場所にいると分かった。

そもそもこの状況で彼一人を追えないが、万全を期してアツノは(追うな)と言ったのだろう。


既にいないのは分かっているが、氷壁で全てのガラスを覆う。

【想】は既に使っているので普通の氷壁だが、数メートルの厚みである。

魔法陣と転移で減る魔力も、この程度では1ミリも減っていない。



「みなさん、魔法陣の中へ! 早く!」


アードスがユウの輝く魔法陣に向けてでかい呪法陣を飛ばす。


協会関係者・信者・騎士は未知の恐怖に叫びかけたが声が出ない。


ザンユウとシンヨルは落ち着き払って微動だにしない。

ザンだけはもしもに備え即対応する準備はするが、もちろん不要だった。



呪法陣は霧散した。


慌てて信者達は魔法陣へ、元々殆どが中にいたが。

騎士たちは司祭達へ走り守ろうとするが、司祭達も既に魔法陣に入ったようだ。



アードスはニヤリと笑い、横や背後の枢機卿と司教に向かって更に赤いものを飛ばす。

ザンがいつの間にか立っていて2本指を指揮者のように振り、そのたび呪法陣は消える。


「さあ、早くあちらへ」

ザンは落ち着き払ってアードスと彼らの間に立ち“見えない剣”を振るい続ける。




「騎士さんたちも早く」

「しかし、我々は・・・」

「私はザンユウのユウです、この場は私達にお任せください」


名前を聞き何が起きているのか納得したのか、騎士たちも魔法陣に入る。




茶さんとイジワが2人の“悪魔教”剣士の前に歩み出た。

リリアとロロ(ろろ)、ルーナとルナノは魔法陣に入った人々を守る。


ザンは全ての状況を【視・多】とアツノの意識と共に、アードスの目前で見守る。

まだ動かない。




トマソが剣を投げた。

2本の剣は茶さんの正面に向かっていく。

避ける茶さん。


トマソの顔が笑いで歪む。

背後からブーメランのように戻る剣が迫る。




アーシュは剣を両手で持ち、くるくる回転さる。

すぐに剣の回転が円形の壁になった。

床が削れている、触れるものを全て斬る壁か。


イジワが対峙している。

横へ移動すればその方向に壁が移動する。

人々を守るため真正面へ戻り、構えるイジワ。




(アリアがアードスの唱える何かの詠唱を感知したのじゃ。

しばし待つかよい、ヤツは自ら“悪魔教”の足跡を残すじゃろう)

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