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ヘイワカイ

9人のローブ集団がアパートの一室に現れた。

出現ポイントが前もって決められないので念の為の変装だ。


筋肉隆々の女は座ったまま剣に手をかける。


「ただいま、ウール」

一人がフードを外しにこやかに言った。


「リア! 聞いてたがいきなり過ぎるな。さすがに驚いた」

全員フードを外す。


「アリアもこんなに可愛く若返って・・・」

「あの」

ユウは少し照れて・・・顔を知っている筈だと気づく。


「あたしゃこっちだよぉ、なのです」

「おお、そっちがアリアか、ますます変になって・・・冗談だ。

こっちはユウだったな、また会うとは思ってなかった」


若返りを聞いていたウールが素で間違った事は誰も知ることはないだろう。



もうひとり、扉を開けて部屋に現れた。

背の小さな若い男だ。


「みなさん、お早いお着きで」

「勝手に入るな、スケベ」

「声がしたもんで・・・」


「こいつは気にしなくていい、話を進めよう」

「ちょっと・・・」

「仲がよさそうなのですね」


ユウは別の部屋で寝ている彼に気づいていた、聞いていた通りだ。


「全く、私がこいつのヒモ設定のおかげで毎日飲み歩いて大変だ」




収拾がつきそうにないので、ザンから自己紹介を始める。

人数が多いので、パーティー名とザンと茶さんだけにしておく。

ユウも一応彼に名乗っておく。


彼はバモ、金持ち貴族の放蕩息子、役でなく本物だ・・・。

ただし、アンテの重要な協力ファミリーの一員であるのは間違いない。



ダイニングのテーブルを隅に動かして、清浄をかけた床に腰を下ろす。

用意してきた弁当を魔法でチンして、あまりうるさくしないように話す。


「とりあえず、ここを拠点にしててきとうに見て回るのです。

シンヨルとユウ、それ以外で別れてとりあえずはローブなのです。


もんだいは夕方近くなってからですが、それまでには作戦がでるのです」


ユウは町全体を探るが、人だらけなのが分かるくらいだ。

怪しい感じはぽつぽつ混じっているが、会うまではっきりしない。

アリアのかけられていた呪いと同じ物も無い。


「昼まではあまり教会には近づかず、普通に散策しましょう。

昼も買っておくので、おすすめの店はあります?」


ウールとバモのイメージを見て同じ店が分かった。

「じゃあ、そこにします。見えました」

顔を見合わせる2人、やはり結構仲はいいのかも。





昼食を買い、一旦集合する。

もちろん移動の最初と最後は転移だ。


「見た目や言動では、狂信的とか操られた人は見かけませんが・・・。

色が変わっている・・・何かに引き寄せられた人はたまにいますね」

「状態異常の詳細は分からないですね。ユウと同じです」

茶さんも見てくれたようだ。


「オレ達も普通に見えた。ローブが巡礼者に見られるのは助かった。

アリアのほうが気づいたんじゃ?」

「んー、なんとなくしかわからないのです。ユウでもむりなのですから」


(夕方、鐘が鳴るまで待つのじゃ。)

「鐘が鳴るまで待ちましょう」


一応、ウール達にも分かるようにユウが言っておく。





(間もなくじゃ。 ローブはいらんのじゃ。

教会内から色の違う人間全体に大魔法陣維持、後はいつも通りじゃ。

大事なことはその時教えるのじゃ)


準備は整っている。

鐘が鳴った。

9人は教会大聖堂中央へ跳ぶ。


アードスの目の前だ。



赤っぽい光点はほぼ全員教会内に集まっていた。

種類の違う“呪われ”だ。


「何者達だ! 武器を持ってここへ立ち入るのは騎士を除き許されぬ!」

アードスの言葉に、騎士たちは何も知らず職務を果たす。

無法者の排除のため、離れているが剣を構える。


ユウは無視し、解呪の大魔法陣を展開する。

この広さなら3分の1消費で充分だ。

次の動きがあるまで、何も気にせず踊り魔力を高める。


周囲はザン・茶さん・イジワ・リリアが剣さえ抜かずに囲んでいる。

アードス側にはザンだ。


アードスのすぐ側には教会に似合わない者が3人いる。

一人は全身ローブ、他2人は普通の冒険者。

似顔絵で見た。裏切ったAランクのアーシュとトマソだ。


恐らくもう1人は・・・。


まだこちらからは動かない。

彼らも動けない、計算通り!


やがて、アードスと同じく一段高い場所にいる司教や枢機卿と思われる者たちが、そして周囲にいる司祭達が。

全員膝から崩れる。


呪われた人達も呆然としている。


ユウは既に満タン、動きを待つだけだ。


司教の一人が叫んだ。

「大司教、あなたはあの夜なにをしたのですか!」

司祭達からも声が上がる。

「私達はなんということを!

あの時から・・・、死体を捨てた手の感触が!」


「なんてことをしてたんだぁ!」

「大司教、あなたはぁ!」

「夢じゃなかった、私達が自分でやったんだ!」




冒険者2人は何が起こったのかさえ見当がついていないようだ。

アードス自身も周囲を見回しているだけだ。

ローブ男だけが落ち着いているように見えた。


「その不埒者達を切り捨てよ!」

アードスがたまりかね、やっと動いた。

「しかし、彼らは何も・・・」


正義感を持ち、正しく職務を果たすべき騎士はたとえ大教皇の言葉といえども理不尽には動かない。

リリアを斬ったのも、暗殺者に対しての当然の行動だった。

その後のアードスの寛容な言葉に感動さえした。


アードスから騎士に向けて赤い呪法陣が飛んだ。

ザンが手首をクイッと曲げると呪法陣は分断され消失する。

最大に伸ばした見えない“纏い”で斬っているだけだ。


誰にも見えないが。



(ローブ男はウインドじゃが、決して手を出すな追ってもならん)



ユウが声を張る。


「聞きなさい、全ての者よ!」

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