世界のテーマ
「おじいさーん、すぐかえるからねー」
「アリア―」
里からゴザへ戻る。
あのアニメを思い出すユウ。
一番感動したのは少女がまさに山小屋に帰ってきたシーン。
最初「おじいさーん」という遠くからの声を聞き、空耳だと作業に戻る。
よくある場面だ。
もう一度はっきり声が聞こえ、少女が見える。
良かったな―などと笑ったりはしない。
おじいさんは怒るような表情、怒るような声で「おお」と言い、少女を見る。
少女が走り寄り、抱き合う。
思い出すと涙が出てくる。
「どうしました?」
茶さんが声をかけてくれる。
「いえ、昔見たアニメ・・・演劇を思い出して」
「ああ、あれか。名作だな」
ザンだけ分かった。
「茶さん、ユウにはもっと親しく話してあげていいんじゃ?
オレから言うのも変ですけど」
「そうだね、女性と付き合ったことが無いから」
意外な茶さんのカミングアウト。
「話し方、わたしもだね」
ユウがぽつりと言った。
宿に戻り、イジワが帰る前に反省会をおこなう。
「イジワ、近接で斬りまくってたようだけど確かにそれもありだけど。
もっと色んな事を試すべきだと思うよ」
「ありがとう、確かにそうだ」
ロロは足を止め、目を狙い、急所へ。
強敵にはそれを徹底することにより強力な補助となる。
ルーナは、痛みを伴う風による切断。
女王様になりきって痛めつけ、おびき寄せる。
ルナノは、指輪の力で暴走気味に放つ魔法をコントロールする。
ユウほどではないが、数百発は魔法が撃てるはず。
ここというときには波○拳を放つ。
リリアと茶さんは着実に長所を伸ばしている。
アリアはよく分からないが、実力を出すだけなのだろう。
一方ザンの場合・・・。
各属性は別々になら完璧に発動できるようになった。
だが全属性を、混ぜ合わせではなく同時に発動は厳しすぎる。
木火土金水、風、光・闇と8つもの属性があるのだ。
(よしっ、うん! よくやったのう。
逆に混ぜてみるんじゃ、全部じゃ)
ザンは言われるままに、薄くだがすべてを混ぜ合わせる。
(そのまま維持できるか? どうじゃ)
これなら割合簡単だが・・・。
(それを濃くしてみるが良い、またキープじゃ。
続けてみよ。 その先はわかるじゃろ。
こんなんでましたけど)
混ぜたまま、濃度を高めてゆく。
続けるうちに・・・ゲージが光った。
ユウのゲージや魔法陣と同じ輝きだ。
白金色の剣を両手に実体化させる。
ニホン刀に見える。
編み込んだ黒に菱形の模様のある持ち手というか柄。
「全てを斬る剣、か」
ザンは辿り着けた感慨とともに、今までを思い出す。
女神様と部下に【何でも斬れる剣】と頼んだこと。
最初に剣を振っても何も起きずに落ち込んだこと
短剣でラピッドウルフを数百切り捨てたこと。
腕を失い・・・
それでも上を目指せたこと。
「イジワ、ルナノ、みんな、ありがとう」
両手の脳内ゲージが分かれている、2本ある。
違った属性にしたり、片方普通の剣に纏うこともできそうだ。
更に・・・四角の枠だけだったゲージが右端まで伸びている。
まだ先がありそうだ。
食事はいつものとおりだ。
良い酒も程よく味わう。
風呂では3姉妹が戯れる。
アリアもいるが、保留。
リリア神が4人に近づく。
手を合わせ、祈る4人。
「よろしいでしょうか?」
ルーナが触れる。
「こちらこそいいかしら?」
アリアも触れてみる。
触れてみるまでこれほど違うとは思いもしなかった。
これは真面目な話である。
本当である。
ハリのあるおっぱいと、指の埋まっていくような吸い付くおっぱい。
この物語のテーマである。
服を着ながら光る石を見てアリアが呟く。
「はじまったねぇ、なのです」
もう9時だが、全員集合(イジワ除く)。
「さあ、うごきましたなのです。
お風呂で確認しなおしたけど、わかったのです。
あたしたちさえ鐘は鳴らさず、たまごがさきかニワトリがさきか、さっぱりわからないのですが。
タイミングを動かしているのはウインドなのです」
「どういうことです?」
ザンとユウが声を合わせるように言った。
「3日後、教会総本山の町ロワで大集会が行われるのです。
『女神様による平和を祈る集会』だそうで、なまえ長すぎなのです。
今までアードスに面会したりあった人で近くにいる人は必ずいくでしょうなのです」
「私は何も感じませんが?」
リリアが聞く。
「治療や魔法陣を何度も受けて、完全解呪に早くからなっているはずです」
ユウだ。
「完全なしゅうかいだけでなく、おまつりとしておみせをだしたりして人をあつめるようなのです」
「ひでぇな」
「代表出席者の中には、エビノ商会かんけいしゃをのぞく、うらぎりリストの全員がいるのです。
ウインドもです」
「わざわざ行方不明になっているのに名前を出しているんですか?」
「完全にアピールしてるな、あちらには重要な存在なんだろう」
茶さんとロロだ。
ルナノは『エビノ商会』の名前が出ないのは一安心だろう。
しかし、それは裏で存在し続けている可能性を示す。
(よしっ、うん! わしは現場に着いてから皆に分かることを教えるえ。
それまでは皆普通にやるがよい。
こんなんでましたけど)