09話 魔王と使者
主人公が出ない話です!笑
今回も色々な言葉が出ます!
この『異世界ワールド』には四つの世界がある。
一つ。星夏から見た『現実世界』。《地球》という名の惑星。色々な人が色々な考えを持つ世界。
二つ。《地球》から見た『異世界』の一つ目。《魔水邪悪》という名の『ダメ人間』の集まる世界。
三つ。《地球》から見た『異世界』の二つ目。《魔虹重色》という名の『才能ある者』が力を合わせる世界。
四つ。《地球》から見た『異世界』の三つ目。
《魔金純宝石》という名の『天才の中の天才』が争い、頂点を目指す世界。この世界が一番裕福であり、一番物理的にも強い世界である。
《地球》は、《魔水邪悪》、《魔虹重色》、《魔金純宝石》の三つの世界に比べてかなりの遅れを取っている。
裕福と貧困の差が激しいのは《地球》くらいだ。
それをハッキリ分けようと動いた三世界。
その三世界から代表して出てきたのが『使者』である。
『使者』はそれぞれの役割を持つ。
《魔金純宝石》の『使者』は、『地球から天才の中の天才を連れていく』役目がある。
しかし、天才と言うだけあって中々天才を見つけることに苦労している。
《魔虹重色》の『使者』は、『地球からそこそこ優秀な人を連れていく』役目がある。
しかしこちらも、優秀な人と言うだけあって、自分の意思をしっかり持っている人や、人生を楽しんでいる人が多い。見つけることは出来ても『意思』という人間特有の魔法によって連れていくことはとても困難である。
そうそう、人間は『意思』という固定魔法を誰でも持っている。それを上手く使えるかは人それぞれだが。
最後に《魔水邪悪》の『使者』の役割だが、『ダメ人間を連れていく』事である。
ダメ人間は、自分の『意思』魔法がとても弱い。「自分はダメだ。」「私には出来ない。」「どうせ無理だ。」と。
「拒否権はない」とハッキリ言ってしまえば、簡単に連れていくことが出来る。
そのせいで他の世界に比べて《魔水邪悪》は、人口(人外も居るが)密度が高くなり、今や落ちこぼれの『地獄』の様な世界になってしまった。
こんな世界と仲良くしたくないと《魔水邪悪》は他の二世界から嫌われさえもした。
そんな時、特徴的な出来事でダメ人間になった一人の孤独な男が《地球》にいた。
その男は《元エリート》で、本来なら《魔虹重色》。いや、《魔金純宝石》に行ってもおかしくなかった才能の持ち主。
そんな彼は、《夢作替具現化》という特別な『素質』を持っていた。
この力を利用して《魔水邪悪》を替えよう。
そう考えたのは《魔水邪悪》の『使者』。
「ルミナス=レイミ。君なんだね。」
魔王は全てを見透したような顔をして。
「全くその通りです。」
レイミも納得した顔だ。
「そして、その彼というのが」
「赤坂星夏。なんだね。」
「はい。」
《魔水邪悪》の魔王は、金色の瞳を窓の外に向けた。
「そうか。悪くない考えだね。今頃、私の分身も彼と会っているだろう。」
「魔王様は、分身魔法も使えるのでしたか。」
レイミは、興味深そうにしている。
「あぁ。そうだ。私が得意なのは水魔法だけでは無いからな。」
「流石です。」
「まぁな。そういえば、お前とこうして直接会うのは、初めてだったな。なら、知らないことがあっても仕方ない。」
少し退屈そうに返事をする。
「はい。それにしても、また《魔炎邪悪》が起きましたね。つい、先日もあったばかりなのに。」
魔王が目線を向ける先にも大火事の山だ。
何回目だろうと呆れる魔王もレイミも心配すらしなくなった。慣れとは何とも恐ろしいものだろうか。
「そうだな。そろそろ、私も動くべきなんだろうか。」
レイミは大きく瞳を開く。
魔王が動くなんて相当な事がないと有り得ない。
「いえ、僕に任せてください。魔王様が動く必要はありません。」
魔王とはその世界のトップである。
トップがそんな事でいちいち動いていては、この世界も舐められたものになる。
既に舐められているかもしれないが、これ以上は避けたいのだ。
「そうか。承知した。レイミの健闘を祈る。」
「お任せ下さい。」
深々と一礼する。
《魔炎邪悪》が起きたせいで、星夏の《夢作替具現化》の魔法が解けて、一瞬だけ世界が歪んだ。僕は彼のすぐそばにいたから、その衝動で僕も個体として、ここに保つのが難しかった。だから、僕の固定魔法『二次元化』を使用して一時的に姿を電子機器の中に閉じ込めていた。
固定魔法『二次元化』は、電子機器の中に姿閉じ込める事が出来るが、デメリットとして何処に出られるか分からないのである。
それで、たまたま出てきたのが魔王様の居住している城だったということだ。
魔王様とお初にかかれて良かったが、星夏さんを一人にしてしまったのが不安で仕方ないと伝えたら、魔王様が自分の分身を彼の所に連れていこう、と言ってくれた。
そして、今にあたる。
まぁ、今から星夏さんを迎えに行くことにしよう。と部屋を出ようとしたその時、
「最後に言うが、『男』になるなよ。レイミ。」
魔王様がそう言った。
「それは、いくら魔王様でも理解しかねますね。」
僕は、意味深な笑顔を向けて部屋を出ていった。
ルミナスの呼び方をレイミに変えていますが人物は変わりません!
5月18日▶誤字訂正