03話 異世界ワールドその2
「さぁ、着きましたよ。ここが『異世界ワールド』!異世界が複数集まった世界です!」
「あ、あぁ.......」
リアルに五時間かかった........。マジでなんなんだ!?!
本当に疲れが半端ないというか、思わずため息が出たよ。
というかな、この男と五時間も手を繋いでいるのも気持ち悪いから!!
『手を離したら死にますよ』とか不気味な事言われたから離せずにいたのに後から『本気にしたんですか?嘘ですよ(笑)』とか言われて俺結構傷ついたからな!!
しかも無重力状態だし。身体中が痛いよ!
そんなことは知らんと言った顔でルミナスは俺に声をかけた。
「星夏さん、お疲れ様でしたね。」
あれ、こいつ俺の名前知ってたっけ。
「あ、あぁ。てかお前、俺の名前知ってたのか?」
「.......。貴方のことならなんでも知ってますよ。身長百六十センチ。結構身長低いんですよね。それで体重は......」
「おいちょっとまて!!おま、なんで俺の身長体重その他諸々知ってるんだよ!?」
「異世界に実質誘拐してるんですからそれくらい驚くことないと思います。」
自覚あるのかよ!!
「いや、驚くわ!」
「ダメ人間か判断するには知らなきゃいけないんですよ。僕だって星夏さんに興味無いのに星夏さんの全てを知ってるなんて気持ち悪いです。」
「勝手に知りやがってその上、気持ち悪いとは何様だよ!」
「ルミナス様です。」
「誰も自分に様付けしろとは言ってねぇ!」
なんだこのコントは.....。俺はお笑い芸人か......。
「本当に疲れる....。」
ため息の回数がこれから増えそうだよ...。
「すみません。」
少し俯きルミナスは、
「急に異世界に五時間かけて連れてこられたのに個人情報保護の存在も無いなんて......」と言った。
「ま、まぁ、俺も言いすぎたっていうか.......」
「チョロいですね(二回目)」
「うん、知ってたよ!!」
何してんだよ俺.......。
「まぁ、そんなことはいいとして、目の前に見えるのが『ワールド』ですよ」
何も良くないんだが.......、と思いつつ『ワールド』に目を向ける。
思わず固唾を飲んだ。
広がっていく世界は今までに見たことが無い美しさだった。
五時間ずっと浮いている状態だったから地面に足がついた時は少しだけ安心した。
でも、地面も普通じゃなかった。下が水だったのだ。どこまでも続いていく。空は青色で快晴だった。
俺がいた世界で言う、ウユニ塩湖ってところだな。人生で一度は行きたいと思っていたから、少し、いや結構、感動してしまった。
「この『ワールド』には方向が多数存在するんです。前に前進すれば異世界に、後ろに行けば別の世界が、さっき来た右に行けば元の世界に.......って星夏さん?」
「...........え?あ、あぁ、いや、綺麗だなって思ってさ。」
「......。そうですね。『ワールド』は綺麗ですよ。結構自慢なんですから。」
「あぁ。自信もっていいところだな。」
すると、俺が褒めたことが珍しかったのか、きょとんとした顔をした後に優しく微笑んだ。
「星夏さんも良いところあるんですね。」
「なんだよ、悪いか?」
「いえ、別に。良いと思いますよ」
そんな会話をして俺とルミナスは遠い景色を見つめていた。