02話 異世界ワールド
ルミナスの性格が少しだけ出ます
「異世界ワールドに来てもらいます!」
そう言われてから彼に手を引かれて来てしまった。いや、実際には向かっている途中。
彼に手を握られた瞬間、自分の部屋が無重力状態になって全然知らない場所へと変化した。
拒否権はないと言われたし、無駄に暴れるのもめんどくさくて、俺は途中から助けを求めなくなった。
まぁ、俺なんか助けてくれる奴いないしな。
それにしても、なんで俺が『異世界ワールド』という所に行かなくてはいけないのかが気になった。
「....なぁ、なんで俺が異世界に行かなきゃいけないんだよ」
実際に聞いてみた方が早いと思い、ルミナスに質問をした。
「それはですね、僕が地球という名の世界で生まれたダメ人間を異世界に連れて行く仕事をしているからです。」
「......は?」
こいつ今俺の事ディスったよな。ダメ人間って。
「悪口じゃないですよ、仕事の役割を言っただけです。」
しかも自分に保険かけてるじゃねぇか。
「あれ、それってつまり、怪盗ルミナスってのは、ダメ人間を異世界に盗んでるから?」
「そういうことですね。まぁ、怪盗っていうのは僕だけじゃないんですけど。」
なるほどなぁ。こいつは『怪盗』という仕事をしていて、その仕事の為に俺は異世界に連れてかれるのか。
「でも、異世界に行くのって大体、主人公が死んだり、召喚されたりするからじゃないのか?今の感じだと、俺がお前に手を引かれてるだけなんだが。」
「それは、ライトノベルの読みすぎじゃないですか??」
少しだけ見下すような目線をするルミナス。
うわムカつくわぁ。なんだよ、その馬鹿にするような顔は。
「今時、死亡やら召喚やら、ネタ被り多いんですよ。」
サラッとこいつ本音漏らしたぞ!?ネタ被りって何だよ!!
「なんか不満そうですね。一度死にますか?」
「前言撤回。遠慮しておきます!!」
なんだかよく分からないが、こいつ俺の心の声聞こえてるな。
「なら次からムカつくとか思わないでくださいね。」
ほらな!!!やっぱり聞こえてた!!
あーもう、これから変な事言わないようにしとこ。命が危険だわ。
「わーったよ。そんで、いつ『異世界ワールド』につくんだよ。」
「あと五時間ですかね。」
「何処も異世界じゃねえええええ!!」
え?何なんだ?異世界って魔法とか奇跡とか色々あるんじゃないのか?なんで五時間もかかるんだよ!!全然異世界じゃない...。
「っていうのは冗談です。」
「冗談かよ!」
なんなんだこの子は。俺で遊んでるのか??からかってるのか??ポーカーフェイス過ぎて何も読み取れねぇよ。
「っていうのも冗談です。」
「はぁ!?」
悪い。俺この子のペース掴めないんだが!
「普通に五時間かかります。」
「勘弁してくれ....。」
「すみません。」
いや謝られても困るんだが....。
「急に異世界に行くって言われて、それなのに五時間もかかるなんて迷惑ですよね。」
お。こいつ意外と優しいかもしれない。まぁ仕事なら仕方ないしな.....。毎回こんなのしてたら疲れるだろうし。
「ま、まぁ、別に、俺は今の生活に満足してなかったし、良いんだけどさ...。」
「チョロいですね。」
「ぶっ殺すぞ」
そんなこと無かったわ。こいつやっぱうぜえええ!!
「はっ、殺してみろよ。」
こいつの本性これだな。これなんだな!!
ドヤッてんじゃねぇ!
もういい、疲れたわ.....。
「相手してるだけで疲れる...。」
「まぁまぁそう言わずに。」
マジでこいつなんなんだよ...。
「.......ん?そういえばさ、『異世界ワールド』って訳したら異世界世界になるんだけど。これはどういう事だ?」
「あぁ。それについて説明してませんでしたね。異世界とワールドは別物なんです。」
「と言いますと?」
「基本的に、ライトノベルなどに出てくる異世界は現実世界と異世界。と二つに綺麗に別れているわけなんですけど、ここで言う異世界とは現実世界も指すんです。」
ん??イマイチ分からないな......。
「現実世界も異世界なのか?」
「はい。異世界は複数存在していてそのひとつが現実世界なんです。」
それは異世界が沢山ある中に俺が生きてきた現実世界も含まれるということか。
「まぁそんな感じですね。」
「俺何も言ってないんだけど!?」
「魔法で何考えてるか聞こえてますから。」
「だよね知ってたよ!」
「簡潔に言いますと、それら全てを総合したのが『ワールド』という事になります。」
いや、軽くスルーされたよ....。
「なーんか、難しいな色々。」
「はい。」
「ってことは『異世界ワールド』ってのは、異世界が沢山集まった所っていう事でいいのか?」
「そうですね。まぁ、日本が現実世界だとして、その他の国々を異世界だとすれば、地球や宇宙がワールドにあたるわけです。」
と、ルミナスは少しだけ分かりやすく説明し直してくれた。
「よし!理解した!」
「理解が早くて助かります。大抵ここで皆さん頭の中ぐちゃぐちゃになるので。」
まぁ、ダメ人間なんて言われるくらいだしな。そんなに皆頭良くないんだろうな。
てか、普通にパニックになると思うけど....。
「さて、今みたいに聞きたいことがあれば聞いてください。なにせ五時間もお話出来ますからね」
ポーカーフェイスの彼は少しあざとくウインクした。
一瞬だけときめきかけたのは気の所為だから放っておいて欲しい。