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第三話 海の民


この世界には大きく分けて三つの人種がいる。

海のアクアリスタ

日のソール

空のジェダイト

それぞれ大きな特性を有していて空の民以外は海が大半を占めるこの惑星で水の上を歩けるという特性を持っている。

逆にその特性を持っていない人種が空の民として浮遊大陸にくらしていた。


海のアクアリスタはその名の通り海と共に生きる種族で海の様に青い髪を持つのが特徴だ。

日のソールは地上にある少ない大陸に住む『天海クジラ』を崇めていて比較的赤い色の髪を持ち、雨に弱いのが特徴だ。

空のジェダイトはそのどちらにも属さない、様々な人種が集まってできた種族名だ。


海の民である彼女は日の民に追われていた。

いくらローブを貸したとはいえ無事に逃げ切れたかどうかわからない。

少し心配になりながらいつも自分がお世話になっている工場に入る。


「すみません。遅くなりました」

「おう、問題ねぇから早い所そいつを見てくれ!」

親方に謝るとすぐに壊れかけのエンジンを見るように指示された。

作業用のゴーグルを着用すると解体するための道具を取り出す。

沢山のパイプと捻じれた部品を外して中を見るとやはり主力動力部に欠損がある。

「親方―!これもう飛翔石が割れて使い物にならないっすよー!」

「はぁー?!そいつ取り替えてまだ一か月だぞ?!」

「文句は無茶な使い方をしたクライアントに言ってくださいねー!」

こういった俺達が普段使っている機械には総じて『飛翔石』という鉱石が使われている。

これは外側から圧力をかけると浮力に変換してくれる大変便利なもので沢山空に浮かんでいるので数も多い。

だがこうして割れてしまうと一気に力を失ってしまい交換するしか手が無くなる。

壊れる前に持ち込んで欲しいものだ。

俺は工場内に用意されている飛翔石から大きさの合いそうなものを選んでそれに交換した。

蓋を閉じて仮運転をさせれば順調に動き出す。

仮起動を止めてパイプを元の位置に戻して行く。

一つの機械を治せばまだ山のように積まれている機械を直してしまわなければならない。


「あの、すみません」

工場に似つかわしくない可愛らしい声が響いた。

入口の方に小さな少女がいる。

深く被った青いフードからそこにいるのが海の民であることがわかった。

他に手を離せそうな人間がいないので俺が応対にいく。

「はい、どうしました?何か壊れてでも?」

「あ、いえハルトさんがここにいると聞いたので……」

そういってフードをずらすと見覚えのある知人がそこにいた。

「え、ちょ、お前護衛は?!」

「撒いてきました」

存外アグレッシブな知人を慌てて工場の奥まった作業部屋へ案内する。

ドアをしめるとようやく落ち着けたのかフードを脱いだ。

彼女は海の民の中でも一等美しい宝石のような髪を持つ女の子で最上のアクアマリンと呼ばれている。

つまり海の民のトップだ。

なんでそんな人物と知り合いなのかと言えば姿を見せなくなった幼馴染の依頼があったからだったりする。

「で、護衛撒いてまでどうしたんだよ」

「ハルトにお願いがあって……」

「なんだよ、手紙ならちゃんと届けているだろ?」

その言葉に彼女は首を横に振る。

「助けてあげて欲しい人がいます。彼女の名前はルシエール。先代ラピスラズリだった人です」

「は?」

ラピスラズリとはアクアマリンにつく護衛の総称で、強い人物のことを指す。

あのルシエールが、ラピスラズリだって?

「彼女はある目的で天海を目指しているのです。それはハルトの目的とも一致しています。だから助けてあげてください!」

「いや、助けてって……今朝出会って別れたばかりなんだが」

そう言えば彼女はふらりと体制を崩して椅子に座り込んだ。

さらりと髪が波打る。

「まさかもう接触していただなんて……」

「オレンジのフードに追いかけられてたから助けたんだが、見送らない方がよかったか?」

彼女は頷いて答える。

「彼女は日の民というより神聖国家ファレナから追われています。捕まればどうなってしまうのか私にはわかりません……」

「ファレナが?なんでだ?!」

神聖国家ファレナは主に日の民で構成された宗教国家で天海を神として崇めている国だ。

まさかそんな危ない国に狙われているとはおもわなかった。

「イーリスの幼馴染である貴方であれば話してもいいかもしれませんね」

そう言って彼女が語りだしたのはルシエールに関しての事だ。

曰く、彼女の血は人魚に近く年を取らなくなっているらしい。

人魚の血肉を得ると不老不死になるという実物が目の前にいるのだ、捕まえたくもなるのだろう。

「捕まればきっと生きてはいられない……なのにいなくなっちゃうんだもの」

そう言ってわっと泣きだすアクアマリンにハンカチを贈呈した。

暫くして泣き止んだ彼女は、再度俺にルシエールの保護を願って帰って行ってしまう。

保護ったってもうどこにいるかわからないのにどうしろって言うんだ。


「おーい、用事が済んだならこっち手伝ってくれ!動力が荒れてしょうがねぇ!!」

ルシェのことを頭から追い出すように横に振って修理作業に戻る。

そこには大き目の飛翔石が暴走を始める直前で止まっていた。

「ちょ、親方何した?!」

「何もしてねぇよ!」

「起動を止めて!三番!七番のバルブを閉めて!ギアの周りが悪いからグリスさして!!」

慌てて指示を飛ばす。

この大きさの飛翔石が暴走したらこの辺りの工場が浮いてしまう。

がしゃんがしゃんと他の作業員たちも動き始める。

「なんでこんな仕事請け負ってきたんだよ!」

愚痴を言いながらも飛翔石へのプログラミング動作は止めない。

カチャカチャとナットがずれる音がした。

「下の二番!ナット緩んでるぞ!!」

慌てて言えばそちらに人員が走る。

「くっそ、こんな巨大な飛翔石俺が欲しいくらいなのに……!」

悪態をついてカシャン!と作業を終わらせた。


飛翔石の大きな使用用途は浮遊艇である。

物を浮かせる事でこの島は他の島と貿易を行う。

ただ、俺には飛空艇技師シルフエンジニアだった親父の残した工房を持っている。

俺の代かも改造を繰り返した飛空艇がそこにはあった。

ただ一つ、飛翔石エンジンだけがこの飛空艇には足りない。


買うにもこの大きさの艇だと相当な金額が必要になる為工房でアルバイトをしてお金を貯めているのが現状だ。



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