プロローグ~始まったようで実はまだだった物語~
初投稿ですよろしくお願いします。
皆さんと一緒により良い作品が作れたら幸いです。
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人には様々な体質が存在するという。怒りやすい、運動音痴、変人が集まるなど
本来これらを持つ人に対する一般的な考えは「気の毒に」であるが、そうは思わない人もいる。
ボクの様に……。
「悩みを引き付ける」それが僕の体質である。この体質のせいで今も某お助けマンガ真っ青な展開中である。
そこには4人の人物がいた。罪が暴かれ絶望に浸る教師、今までの悩みが消えて泣きじゃくる女子生徒、この問題を「解決」したボクとその後ろにいる小動物を彷彿させるボクの大切な義妹。
この事件は女子生徒の弱みを握り陰湿な嫌がらせなどを行っていたというものであるが、
今回の話は決してこのことについてではない。
というよりも
このぐらいの事件は月一ぐらいで起きるからね。
これでどの位ヤバイか理解して貰えただろうか、とか自己回想してみる。
やっぱ、悲惨じゃねえか。
というような現実を振り返って絶望していると。
「さあ、帰りましょう兄さん。」という声をかけられた。
「確かにあいつらも待たせてるだろうしな。」
そう言ってボク達は、帰路に就いた。
ボク達の通う私立上条学園が設立されたのは遡ること明治時代である。
その地の地主が
「今の時代は学業の時代である」と
一言言ったためにできたと言われている。小中高の一貫校であり、特に高校と中学は同じ行事をするなど関わりが深い。そのため高2のボクが中2の妹の様子を見に行っても
「シスコンだ、微笑ましいね。」
としか言われない。え、シスコンなのかって…。
逆に聞こう。いつからそうでないと錯覚していた。あんなのが妹だったらそうならないのがおかしい。
彼女が家に養子に来たのはおよそ1年前だ。ボクが少々ヤサグレテいた時期と重なる。
彼女は両親を何者かに惨殺され、彼らの莫大な遺産だけを手にして天涯孤独の身となった。
【名家柊家惨殺事件】 といえばこのあたり一帯の住民なら知らない者はいない
しかし、今は話すべき時ではないだろう。それよりも今はなすべき相手がいる…かと思ったけどその前にいうことがあったね。
遅くなりましたが、ボクの名前は村上晃司、妹の名は柊薊。
二人で成り行き上【お悩み相談室】のようなものをしていて、その帰りです。自分としては、とても優秀な妹君のおかげで解決できている側面がある。しかし薊としては
「私はただ与えられたことができるだけです。」
となぜか謙遜をする。いや、謙遜という言葉は正しくない。
彼女はボクを過大評価しすぎている。
まあ、そんなこんなで今までやってきました。ボク達は愛でる、愛でられるの正しい兄妹であります。
ボク達は、駅に到着すると見慣れた二人を視認した。その二人はこちらに気付いたかと思うと声をかけてきた。
「おーい、遅いぞ晃司」
「悪い遅くなったな。たかし」
「あなた……また薊ちゃんに仕事手伝わせたでしょ。断れないんだったら自分だけでやりなさい。」
「まあまあ、落ち着いて美咲。いくら薊ちゃんLOVEだからって、その兄にあたるコタぁないでしょ。」
「お兄ちゃんは黙ってて。投げられたいの。」
「すみません。宙を舞いながら肩を脱臼するのは勘弁です。」
この二人は、小鳥遊兄弟。兄の公仕と妹の美咲である。
兄は、顔立ちがとても整っているいわゆるイケメンというやつで。正確にいうなれば、美少年といった顔立ちであろう。
過去にストーカーになるほど熱狂していた人もいるほどであるが、彼女はなし。それ自体は後述の通りなのだが、どうやら問題はそれだけではないらしいがボクは詳しく聞かない。彼から初めて「聞くな。」の一言をもらったためである。
それに加え元天才少年であるが、中学時代はキチ0イでありそのせいで女子生徒からは敬遠気味である。その後まともになるにつれ、彼の天才性は薄れていった。
彼とボクは、一時期疎遠となっていたが、今でもボクの大切な唯一無二の親友である。ボッチ気質のあるボクにとっては最後の希望ともいえる。
妹は、合気道の有段者で道場では師範代を瞬殺するほどである。しかし、編み出した技が強すぎるかつ、危険すぎたため全日本の地区予選で永久出場停止となった化け物である。
薊を心の底から、百合的な意味で愛しており、薊が転校して日が浅いとき、ファンクラブを装った
ストーカー集団をボクと二人で壊滅させたことがある。
ちなみに薊はこのことを知らない。
「今回の件、そんなに厳しかったのか晃司。」
「いや、いつも通りだよ、たかし。」
「いい加減その呼び名やめて。」
「いいじゃん、名前おんなじなんだから。」
「小鳥遊でいいだろ。」
「妹いるじゃない。」
「にしても他にないの。」
この呼び名は、起源がよくわかっていないが、一説には小鳥遊の略、または小鳥遊と公仕をもじったともいわれるがどちらも決定した決定的なものは彼の軽くとっちゃん坊やな顔立ちだろう。
確か学校の七不思議のひとつである。
「兄さんやめてあげて下さい。小鳥遊さん困ってるじゃないですか。」
「違うよ薊、これがボク達の挨拶みたいなものだから。」
そう言って、ボクは彼女の頭をなでる。こうするといつも嬉しそうに頬を緩ませる。そしてボクも
癒される。win-winである。ああ、薊。カワイイなぁ。
地上に舞い降りた天使という表現の使い道このぐらいしかないんじゃね。
「いいな、私も撫でたい。」
「だめだ、これは兄の特権だ。貴様にさせるわけにはいかん。」
と言いつつも、ただ独占したいのではなく。この子にやらせるととても不安で仕方がない。
お兄ちゃんはとてもとても心配なんだ。過保護ではなく割かし真剣に。
「ふふ、兄さんのは最高です。」
そう言ってはにかむ。
「だ、そうだが。」
とあてつけがましく言ってみる。
「キザマァァ…ガルルゥ。」
うなるなよ。狂犬か?おのれは。
そう軽口をたたきそうになるが、ここにいる薊を除く全員が脅威を知っている。そんなこと言おうもの
なら考えるのも恐ろしいことになってしまう。以前ボクもなめたこと言っておちょくったことがある。
目で「悪いこと言わないから謝れ。」と言っているたかしを思い出すが、本当に記憶に残るのはその
10秒後ほどである。
相手の体が少し動いたかと思うともう終わっていた。体は宙を舞い、メキメキと音を立てる肩。地に
着いたかと思うと、着地がうまくできるはずもなく全身打撲する。その際、肩を確認すると力が入らずにプラプラしていた。その後すぐに意識はなくなった。
医師の診断によると肩が外れているらしく割かし危険だったそうな。ただ外れただけであったので、
治るのは早かった。しかし、くっつける作業が整骨院で麻酔なしの無理やりはめ込むだったため、
一生もののトラウマができるほどの激痛であった。
あぁ怖い。体が他人からはわからないだろうがガッタガッタに震えている。ボクもそれなりの修羅場を乗り越えてきたのでこれほどで済むが、他の人はもっとひどいのだろう。たかしはなんか慣れてそうだなぁ。そんなトラウマがあるから容易に美咲に軽口など叩けるはずもなく、毎度こんな感じである。
こんな風に少々苦労しながらも普通の日常を送れると思っていた。
少なくとも今月はもう強烈なのはもうないだろうと思っていた。そう思いたかった。彼女と出会ってしまうまで。
私こと柊薊はおよそ1年前から村上家で養子として暮らしています。お察しの方も多いと思いますが、私の家はそれなりに裕福な家庭でした。
父はとある研究をしていて、それは何世代も前から続いていたもののようです。柊家の事件もその研究の成果を盗むための強盗殺人だと考えられています。
そのため私や家の財産などには一切興味がないようでした。父は常に
「これは世に出していいものなんかではない。」
そう言っていましたが、政府の命もあるようで作らなければならないようでした。それはすなわち金とは別の利益があるということです。だから、
私は兄さんに迷惑をかけずに済む。
それが今考えるべきことであり、心の片隅に残すべきことでもある。今は村上家、いや、兄さんがすべてである。私を救ってくれたただ一人の人。
【兄さん】という呼び方は兄さんが考えたものです。
最初はお兄様と呼んでいたのですが、顔を右斜め上に傾けて
「その呼び方は…そういう趣味の人と思われるから…やめていただけると嬉しいです。」
とおっしゃったので、次にお兄ちゃんというと
「身が…持たない…。」
と言いながら膝をついていました
どうしたんでしょうか?たまに兄さんはこんな行動をすることがあります。多少気になりますが、別に
いいでしょう。
その後兄さんがこの呼び名を決定しました。
兄さんは私と出会う前に色々とあったらしく必要以上に自分を卑下する癖がある。その分、人のためだと自分のことよりも真剣になれる。
例として、私に恥をかかせないようにと学年順位を中の下から上の中まで引き上げた。
私は自分を救ってくれた兄さんを割となんでも受け入れる自信がありますが、ただ一つ、本人すら自覚していない一面がある。
兄さん自身はその時の記憶がないらしい。その時の兄さんは一言でいうと
こわい。
それが何なのかはわからない。お母様に聞いても
「時が来たら話す。」
としか言われない。だから待つしかないのだろう
【その時】を
ボク達の最寄りの駅に到着し、出口が逆なため小鳥遊兄弟とは別れる。
「じゃあな、親友。」
なんてクサいセリフはいて別れた時に見つけてしまった。
隠しているつもりだろうが、ボクには隠せていなかった。ボク達の前を横切った女子高校生は、全身に痣があった。
「どうしたの兄さん。」
「新しい悩みだ。かなり深刻な。取り敢えず、あの人を追いかける。」
「わかりました。」
ボクの勘が正しければあれは…。そう考えながら二人で尾行していた時であった。彼女はひとりでに気絶した。