第64話 フニフニ
◇ ◆ クロガネ視点 ◆ ◇
「とっ、止まったのか?」
良かった、何とか無事に止まったみたいだ。
--はぁ......
しっかし、良くあんな勢い付いて、無事に止まったな。
「おい、シビにトウカ、無事か?」
「う~......いったいどうなってんのよ」
「んっ、あったかい、ですっ」
いや、どうなってんのか聞きたいのはこっちだよ。
それとトウカ。俺とシビの間に挟まってあったかいのはわかるけど、まずは一旦退こうな?
あー...それにしてもこの視界が開けた感じ、吹雪は止んだのか?
綺麗な星空が見える......。うん、もう夜だわ、吹雪止んだのにこれから気温ガンガン下がるわ......。
--フニッ
--フニッ
......んんっ?
なんだ? この背中のフニフニ。
--フニュ
--フニュ
背中の下に何か......。クッションみたいな。...なんだこれ?
--フニ
--フニ
「いっ、いい加減フニフニせずにどくのだっ!!」
「うおぉっ!?」
びっくりしたっ、なんだなんだっ?
いきなり背中の下から怒鳴られたぞっ!?
ちょっと待て、てっきり俺が一番下だと思ってたら、更に下に何か知らないヤツが1人増えてんぞ!?
いったいどうなって、いつの間に......。
あっ、もしかして、コイツにぶつかったから止まったのか?
......。
...。
いやいやいや待て待て、それでこの状況って、もしかしなくても轢き潰して下敷きにしちまってるのかっ!?
しかも今のって、女の子の声だったよな? 俺らマジで最悪じゃねーかっ!!
「おいシビ、トウカ、早くどけ」
「ちょっ、タツヤ、シビって略すの辞めなさいよ」
「うっせぇ、いいからどけっ」
まずいぞ最悪だ、これ謝って許してもらえんのか?
そもそもこんな大人数で突っ込んで、怪我とかしてんじゃねぇか!?
折角初現地人だぞっ!? 重要な情報キャラだぞっ!?
ここで敵対したら非常にまずい!!
そんなワケで、速攻でトウカとシビを放り投げて起き上がったわけなんだが。
--えーっと......
「んっ、レムちゃっ、着れたっ」
「おっ、おおギンコ、この紐はだな、前じゃなくて背中の側で縛るのだ」
「んー......んっ、......こう?」
「うむうむ、それで結び方は固結びではなくてだな。そうそうそこで引っ張って......うむ、その結び方で大丈夫なのだっ」
なんだこれ?
いきなり犬耳尻尾の付いた銀髪メイドの幼女が駆け寄ってきたと思えば、俺達が轢き潰してた金髪ドレスの少女が、その子にメイド服の着かたを指摘してて......。
いやいやいや、ちょっと待て。それよりも何だこの強烈な違和感は。
確かにこんな場所に幼女メイドとドレス少女は違和感しかない組み合わせなんだが、それ以前に......この女の子、何処かで見た覚えがあるような。
......ここまで出かかってんだが思い出せねぇ。
「ねぇタツヤ、声かけないの? ねぇ」
「あー...うん、取り敢えず声かけてみるか」
そうだな、どっちにしろ謝んないといけねぇし。
まぁ、違和感は後々思い出せるだろ。
それより今は、吹雪は止んだとはいえ寒さは夜で更に酷くなってるしな。早く謝っちまってこの状況を何とかしねぇと、凍えちまう。
...んだけども、話しかける前に......。
あのさ、トウカ? ......重いんだけど?
何で俺の腰にひっついてんの?
こんな格好で話しかけるのは絵面的に間抜けすぎるんで、ちょっと辞めて欲しいんだが?
トウカさん?
--ゆさ
--ゆさ
おーい......。
--ゆさゆさ
--ゆさゆさ
......なぁおい。
コレ......まさか寝てねぇよな?
「うむ、これは寝ておるのか?」
「うおぉっ」
びっ、びっくりした。
トウカをゆさゆさしてたら、ドレス少女が話しかけて来た。
「こんな所で寝たら風邪をひいてしまうのだ」
「あ、ああ、そうだな。焚き火でも焚くか?」
「うむ、それが良いのだっ」
どうも盛大に押しつぶした事は根に持って無い........みたいだな。
軽い調子で会話してくれてるし。
それに、見た感じ怪我もしてないみたいだし......。
あー......でも、一応謝っといた方が良いよな? 遺恨は残しときたくねぇし。
「そのよ、さっきは悪かったな」
「んむ? 何のことなのだ?」
「あー、えっと、さっき押しつぶしちまっただろ?」
「んーっと......ああっ、あれの事だなっ!」
「あれの事って......」
--まさか忘れてたのか?
「むぅぅ......まぁ、ダメージはなかったからな、特別に許してあげるのだっ」
「そ、そうか、助かる」
「それよりも焚き火なのだっ!」
「ああ、そ、そうだな、焚き火か」
まぁ気にしてないみたいなら良かった......のか?
......。まっ、問題ないならいっか。
それより今はこの子の言う通り防寒が先だな。
えーっと、そうなると薪か。
薪なら鍛冶用にストックがあるから......。
「んむっ、薪は用意できたのだっ!」
「はやっ! ってそれ、もしかして収納魔法か?」
いきなり虚空から薪が出現したんだが。
「む? 違うのだ、これはインベントリなのだっ」
「インベントリ?」
それ、収納魔法と何か違うのか?
「それよりも火を頼むのだっ」
「え? 魔法でつければいいんじゃねぇのか?」
そんな収納魔法使えんだし、火くらい自前で出せるだろ?
「魔法は......駄目なのだ」
「駄目? まぁ良く分からんが、それならえーっと......火種はこれで良いか」
さて、安定の『火炎岩』を薪の中に放り込んでっと。
「ふぅ...これで凍えないですみそうだな」
「うむっ」
さてと、それじゃあ......。
「んむっ、下にはこの毛皮を敷けば大丈夫そうなのだっ! 皆もこれを使うのだっ!!」
「あ、ああ、ありがとな」
おお確かにこの毛皮、全然冷気を通さねぇな。結構良い素材なんじゃねーか?
用意良いなこのドレス少女......。少女......。
そういえばまだ自己紹介してなかったな。
「えーっと、俺は銕 竜也。んで、こっちの猫耳がトウカで、そっちのソレがシビだ」
「ちょっと! ソレ扱いは辞めなさいよ。それに私の名前はシ・ヴィ・ス! 『シヴィス』よっ! いい加減ちゃんと呼びなさいよ!」
あー......はいはい。ソンナナマエデシタネ。
それよりトウカ、そろそろ起きろー、自己紹介タイムだぞー......。あー...駄目か。ガチ寝してやがる。
「うむ、クロガネタツヤにトウカにシビだなっ」
「ちょっと!?」
まぁシヴィスって発音し難いし、シビで覚えちゃうよな。それから俺の自己紹介も悪かったが、クロガネタツヤって繋がった名前じゃねぇからな。
「あー......俺の事は『クロガネ』か『タツヤ』って呼んでくれ」
「うむ、わかったのだっ『クロガネ』だなっ! んと、妾は『レムリア』で、この娘は『ギンコ』なのだっ!」
「レムリアにギンコだな」
「うむっ、妾の事は気軽に『レム』と読んでくれれば良いのだっ」
「わかった『レム』だな」
「うむっ」
--ん?
「......レム?」
「んむっ、レムなのだ」
おい、ちょっと待て。
「レムリア?」
「うむっ、そうなのだ」
レム...?
......レムリア?
よく見ればそのドレス。
それにその細剣も。もしかしてさっき感じた違和感。
おいおいおいおい。まさか......。いや、でもアイツなら巫山戯てやりかねん。
「おいっ、おまえ錬じゃないのか!?」




