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ライトル  作者: ビタミンA
神と神嫌いの少年
7/14

05_二人の側近

読者を置いていく展開が炸裂するーッ!

腕時計の針は17時を回っていた。

人間派閥の幹部である角の青年こと【シャルヴィ】と同じく幹部でありシャルヴィの妹でもある紅のメイドこと【レスクヴァ】。

二人は運が良いか悪いか、道端で一人の神と対峙していた。


「いやぁ、ツイてるわね。早々敵に会えるなんてね。いや、まぁずっと探し回ってただけなんだけどさぁ。」


とても女の子とは思えない表情でニタリと笑うレスクヴァ。知っている方は知っているだろうが彼女はこんなナリ(メイド服)でも戦闘狂である。この聖戦に幹部入りしたのもひたすら戦いたいという理由であった。


「どの派閥のどの神か教えてもらえますかな?」


シャルヴィが目の前に対峙する男に問いかける。

ボサボサの頭に黒いツナギ姿の男はレスクヴァと同じく殺意のこもった笑みを浮かべて答える。


「君ら、人間派閥の幹部さんだよね。しかも伝説の【雷神トール】の側近。これは相手にしがいがあるなぁ。名乗れと言われりゃ名乗りましょう。俺は《悪魔派閥》の【テスカトリポカ】。そんじゃぁ始めるか?」


その名を聞いてシャルヴィが顔をしかめる。


「レスクヴァ。一旦引きましょう。」

「はぁ?何言ってんのクソ兄貴!」

「クソ…。お兄ちゃんと呼びなさいっていつも言ってるでしょ!」

「は!キモいから!近寄んな!」

「いいから引きますよ!名前くらいは聞いたことあります。相手はアステカ神話の主神級。下手したらやられますよ!」

「は?何弱気になっちゃってんの?だっさ。」


掴まれた腕を振り払いレスクヴァは紅の魔法陣を展開する。

はぁ、とため息をついて諦めるシャルヴィ。レスクヴァの横に並び戦闘態勢に入る。魔法陣から伸びたグリップを引き抜き、レスクヴァの愛用武器である血塗れの金属バットを取り出す。血にまみれた金属バットを握り締めて笑うメイドなんてどこを探しても彼女一人だろう。


「それじゃ行くわよ!兄貴!」

「お兄ちゃんと呼べとあれほど…。」


一歩目を踏み出す瞬間に能力を発動させるレスクヴァ。


先に説明しておこう。それぞれの幹部は神ではない。それぞれの派閥名の通り、天使派閥は天使が、悪魔派閥は悪魔が、人間派閥は人間が幹部になっている。

ここで疑問が生じる。天使や悪魔などという神話上の存在に人間が勝てるのか?

答えは勝てる。である。

人間派閥の幹部に選ばれる者には条件があった。何らかの理由で"特殊な能力を持つ者"。理由は単純、ただの人間では話にならないからである。能力を持つ人間を募り、天使や悪魔といった存在に対抗できるようにする。しかしそれでもまだ対等とは言えない。それを埋めるための手段はまた別の機会にでも説明しよう。


地面を蹴り出したレスクヴァはそのまま地面を滑るようにして飛び、15メートルほど離れたテスカトリポカに向かってバットを振り上げる。

振り抜いたバットは軽々とかわされ、地面に叩きつけられる。瞬間、地下で爆発が起きたかのように地面が割れ、陥没する。

もう一度言おう。人間派閥の幹部は人間である。

そして、能力持ちである。



《肉体強化》


それがレスクヴァの能力である。

そう、単純明快。読んで字のごとく。

自身の肉体を、極限を超えて強化する力。

それ以上でもそれ以下でもない。



割れた地面から逃げ出すよりも早くシャルヴィが追い打ちをかける。

しかし、振り抜いた拳もテスカトリポカには当たらず、軽々と距離を取られる。


「ちょっと!誘ったんだからちゃんと当ててよね!ほんと使えないクソ兄貴なんだから。」

「知っているかい?お兄ちゃんの好物は馬刺しとエンガワと妹の罵倒だよ。」

「うわ…きっも…。」

「まぁまぁ、罵倒もいいけど、そんなピリピリしてると美容に悪いよ。」


兄弟でいちゃつく中、テスカトリポカがしかける。

軽快に宙を舞い、二人の頭上で拳を振り上げる。構えるより速くシャルヴィに拳が直撃する。


「がっ…。」


ガードした腕がへし折れ、曲がり、バキンと嫌な音が響く。


「あーぁ、痛そ。」


兄の粉砕した腕を見て他人事のようにそう言いながら、レスクヴァがバットを振り抜く。金属製のバットはテスカトリポカの横腹を射抜き大きく吹き飛ばす。


「ほらさっさと立てよグズ。踏んでやろうかしら?」

「ぜひともお願いしたい。さらに言えば踏んでいる時にスカートに気付いて恥じらいながらスカートを抑えて「お兄ちゃんのエッチ///」みたいなゴフッ…。」

「キモイ死んで。」

「これはこれで…。」


妹に踏まれて喜ぶ中、テスカトリポカは楽しそうに笑っていた。


「…お前、回復系の能力か。」


途端にテスカトリポカの雰囲気が一変した。簡単に言えば殺意の度合い。異変をすぐに察知したシャルヴィがレスクヴァの前に出る。


「下がってろ。」


その表情は先程までの気の抜けたものではなく、テスカトリポカと同じ殺意を抱いたものだった。

楽しいおもちゃを見つけた子供のような笑みを浮かべてテスカトリポカはまっすぐシャルヴィ歩き出す。シャルヴィもポケットからタバコのような白く細長いものを口に加え火をつける。煙を大きく吸い込み、大きく吐き出す。

吐き出された煙に覆われながらシャルヴィの姿が徐々に変わり出した。

元から生えていた角がより大きなものになり、バチバチと雷を纏う。それを見ても歩を緩めず、近づいて行くテスカトリポカ。腰を低く落として臨戦態勢へと入るシャルヴィ。

そして二人の距離が10メートルを切ったであろうその時、空間に溶けるようにしてテスカトリポカの姿が消えた。


「ッ!!」


直感的な危険を察知して防御の構えをとるシャルヴィを襲ったのは真っ赤な煙だった。予想を超えた攻撃にすぐ後ろにいたレスクヴァを無理やり突き飛ばす。

顔を狙って吹き出された真っ赤な煙に目を眩まされるも距離を取ろうとするシャルヴィにテスカトリポカの追撃が入る。


バキャッという骨が砕ける音が響きシャルヴィが倒れる。膝に走る激痛。見ると膝が曲がってはならない方向にひん曲がっていた。痛みに顔をしかめるも、すぐさま大きく火のついたタバコ、否、"骨"を吸う。一瞬にして膝が元に戻る。


回復系の能力か


テスカトリポカの考察は正しかった。最初の一撃でへし折ったはずのシャルヴィの腕は少しの時間で元に戻っていたのだ。それは彼、シャルヴィの能力によってであった。



雷羊の祝福(ゴー・トゥ・ヒール)


レスクヴァ同様、いたってシンプルな能力。高速回復である。

さらに"タングリスニの骨"の煙を吸うことによってそもそも高い治癒能力を極限にまで高めることが出来る。



立ち上がろうとしたシャルヴィは異変に気付く。視界が眩み、うまく立ち上がることが出来ない。すぐさま骨を吸い異常を回復させる。眩暈が消え立ち上がった瞬間に再び赤色の煙が吹きかけられる。依然としてテスカトリポカの姿はない。

再び襲われる眩暈を消そうと大きく息を吸い込んだ瞬間、胸に重い衝撃。全身を揺らすその攻撃は内側へもろにダメージを与え、肺に打撃を与える。肺の中の空気が押し戻され、こみ上げる血と共に吐き出される。タングリスニの骨も落としてしまい、テスカトリポカによる二撃目で大きく吹き飛ばされた。


「がっは…。」

「兄貴!」

すぐさまレスクヴァが駆け寄り、肩を揺する。遠のく意識を揺すり起こされギリギリで意識を保つ。



コロ…。


シャルヴィの足元に何かが当たる。

白い棒状のそれは、落として手放してしまった"タングリスニの骨"であった。


さっさと回復しろ。


嬉しそうに笑うテスカトリポカの姿が脳裏に浮かぶ。

完全に遊ばれている。


「こんの…!」


バットを握り締め見えない敵に向かおうとするレスクヴァを引き止める。


「落ち着け、まだやれる。」


煙を吸い回復するシャルヴィ。


「俺が相手する間に、頼んだぞ。」


ゆっくりと立ち上がり、レスクヴァから離れる。

彼女の能力なら敵の位置がわかると知っているから任せた。


「随分とまぁ妹思いじゃないか。」


声が聞こえた瞬間その方向に拳を振るも当たらず、カウンターと言わんばかりに煙がシャルヴィに吹き付けられる。

全身に走る激痛。煙の色は青。皮膚が爛れ血が滲む。そして回復しようとすれば肉体への攻撃が入る。そして回復。攻撃、回復、と何回も繰り返される。時々聞こえるテスカトリポカの笑い声。


「回復に頼りすぎなんじゃないのかぁ?辛そうだねぇ!痛そうだねぇ!暇は与えてるよ?ほらほら回復しなよ!」


もはや勝負になっていなかった。敵の姿は見えず、一方的に攻撃される。

考えては折れてしまいそうなこの状況。幹部ともあろう者が、二人がかりでたった一人の神相手にこのザマというこの状況。信じられるのはレスクヴァの能力のみ。これ以外に打開策はない。頼れるのは…。


「キャッ!」


目を見開き後ろを振り返る。そこには赤い煙に包まれた妹の姿。


ギリギリで保たれていた理性が遂に切れる。


「貴様ぁぁぁぁあああ!!」


レスクヴァを庇うようにして背中に隠すが、レスクヴァだけを狙ってテスカトリポカの攻撃は続く。意識の朦朧としたレスクヴァはそれを防ぐ手段がなかった。


これ程までとは思わなかった。

もっと上手くやれるはずだと二人共思っていた。

タコ殴りにされる妹を庇おうと必死になりながら、自らの未熟さを悔いると共に、側近としての役割を果たし切れることもなく終わりを…。


迎えられるわけがなかった。

聖戦開始から数十分ではい死にましたーなんてとてもじゃないが言えない。自らの主を汚すに等しいこの行為は許されることではない。

かと言って状況を覆す手段はない。



主と側近では絶対の信頼関係があるというものだ。

現に雷神トールと二人の側近の間には確かな信頼があった。主のピンチには二人がそれを支え、二人のピンチにはいつも颯爽と救いに来てくれた。


肩書きだけの主となった彼は果たしてこの状況を返すことができるか。



二人の元に白い魔法陣が展開され、中から雷神の肩書きを背負う少年が転げ出す。






改めていうと道端で戦ってます。

夕方です。

状況描写下手くそ二キ

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