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ライトル  作者: ビタミンA
神と神嫌いの少年
11/14

09_アルバイト

なんか雑です。

「わぁ…あんなすごい車もあるんですねぇ。」


カチカチとカウンターを押しながら、オラオラ系が改造した羽が生えてるような車を見て驚くティアマト。


学校から東側に少し行った所、大きなビルが立ち並ぶ大通りでの交通量調査を担当するティアマト、カーマ、レスクヴァの三人。


「まぁ、あんな車に平気な顔で乗ってられる奴は頭おかしいのが相場ね。」


汚いものを見るような目でギラギラウィングカーを見るレスクヴァ。

あいも変わらずメイド服で、辺りに人が集まってきている。

そういう店の客引きじゃありません。


「目立つのはあんまり好きじゃないんだが…。レスクヴァ、着替えてきてくれないか?」


カーマが眉間にしわを寄せてそう言う。

カーマと視線が合った女性軍団が黄色い悲鳴をあげる。一応確認しておくがカーマはイケメンです。


よくよく考えれば、褐色イケメンとメイド服の美少女と可愛いロリっ子という謎の組み合わせの三人組。目立つのも当然。


「あの!一緒に写メ撮ってもらっていいですか!?」

「いや、そう言うのはちょっと…。」

「ちょっ!姫裡ちゃんそんなアグレッシブに…。どうもすみません。」


苦々しい笑いを浮かべながらいえいえと断るカーマ。写メをせがんだ少女も引きずられて退場。


「これじゃまともに車数えられませんね!」


楽しそうに笑うティアマトにまで歓声があがる。


「喋った…。」

「あれ人形じゃなかったのか…。」

「幼女尊い。」

「犯罪的可愛さじゃね。」

「ちくわ大明神。」

「手出したらそれこそ犯罪だぞおい。」

「おい誰だ今の。」



「ちょっと!邪魔なんだけど!」


痺れを切らしたレスクヴァが怒声を上げる。一瞬静まり返るも「有難うございます…。」「我々の業界ではご褒美です…。」とよくわからないつぶやきが聞こえる。


「さすがに目立つのはよくない。悪魔や天使にも気をつけなきゃいけないし。とりあえず移動するぞ。」


カーマの指示で逃げるように人混みを抜ける三人だった。




□■□■□■□




「熱い…。」


雲ひとつない空を見上げて恨めしそうに呻くユピテル。


ユピテル、イシス、シャルヴィの三人は学校から北側の比較的交通量の少ない場所を担当。


「それにしてもリーダーは何でこんなよくわからないことを始めたのでしょうかね?」

「え?シャルヴィ知らないの?幹部も知らないってどういうことなの…。」


マジかと言わんばかりの驚きを見せるイシスにシャルヴィはお手上げのポーズ。


「会った時からよくわからない人でしたよ。ミステリアスというか、名前と能力以外何も知りませんよ。聞いても教えてくれませんしね。」

「気になるわね。謎のリーダー。色々と試してみようかしら。」

「何やら楽しそうですね。」

「まぁね〜。でも、それよりも今はこの状況をどうするか考えましょうか。」

「?」

「さっきから誰かに監視されてるわ。」


イシスの一言にだらけていたユピテルも反応する。辺りを見渡すも怪しい人影は特には見当たらない。


「…敵か。」

「敵じゃないといいんだけど、人間とは思えない魔力量でねぇ。ちょっとまずいかもしれない。」

「どうしますか?イシスがまずいと言うならかなりの強敵だと思うのですが。」

「とりあえずまだ様子見ね。下手に動かない方が身のためかもね。」

「俺という足手まといがいるから迎え討とうにも厳しいっていうのを直接言わないのは優しさと受け取っていいのか?」

「あはは。ユピテルはその卑屈な性格から直さないとね。そう言うんじゃなくてね。ちょっと色々あってのことなのよ。」


まぁ本当にヤバかったらリーダーに助けを求めましょうと笑うイシス。




□■□■□■□




「う……、嘘だよな?」

[本当です。]


手から携帯が滑り落ち、その場でしゃがみこむ彰人。

頭の中は先日のテスカトリポカの死体がフラッシュバックする。

あいつは神話の主神だと聞いた。そのレベルの強さの神が簡単に死んだという事実。

そしてそんな中に無能力な一般人が投げ込まれると言う現実。


「無理ゲーかよ…。」


一人うなだれながらポツリと呟く。

一般人にはとうていわからないであろう死という感覚がすぐそばまで迫ってきている気がした。


「トール!休憩終わるわよ。さっさと終わらせてヒラヤスに文句言いに行くわよ。」

「あー…、すまんがもう少しだけ休ませてくれ…。」

「はぁ?なんであんただけ特別扱いなのよ!調子乗ってないで行くわよ!」


スクルドに無理やり腕を掴まれ連れて行かれる彰人。もう抵抗する元気もなく頭の中ではボーッと死に方について考えていた。


(あーぁ、どうせ逃げられないんだろうしな。死ぬとしたら痛くないといいんだけどなー。)


彰人、スクルド、一番ケ瀬の三人は始めに担当していた南側から西側へ移動、時間も12時を回りお昼時、車の通りも徐々に多くなってきた。


「どうしたトール!元気ないな!」


流れるように汗をかきながら、せっせことカウンターを押していく一番ヶ瀬


「いや、ちょっと色々ありまして…。」


カウンターを押す気力もなく、パイプ椅子に座ったままうなだれる。もう何もする気になれなかった。


「あんた、働かないならどっか行ってくれる?邪魔だから。」


普通なら気にしないスクルドの暴言も今は心に深く刺さる。


(邪魔だから…。邪魔。はぁ…。)


こいつらはいいよな。たとえ無能力でも超人的な身体能力があるから。一番ヶ瀬は知らないけど幹部だし、きっとそれなりに強いんだろうな。どうせピョーンと十メートルくらい軽々飛んでいくんだろうよ。


「こんなことなら運動部くらい入っとくんだったなぁ。」


まだまだ十六歳の高校一年生。人生の半分も行かずに終わりを迎えるのか。

深いため息をつく彰人の頭上に、不意に影が落ちる。


「あの、すみません。」


声をかけられて顔を上げるとそこにはヒラヤスが…


「あぁ、リーダー。何やってたんすか。」

「え?」

「ちょ!あんた!何寝ぼけたこと言ってんのよ!」


スクルドに頭を軽く殴られる。

その軽くも一般人には重いんだけどなぁ。


改めて見るとヒラヤスとは違う人だった。


「あの、道を聞きたいんですが。ここから一番近い駅ってどこにありますかね。」

「えっ、あ、駅ならそこの通りをまっすぐ進んだら着きますよ。」

「すみません、ありがとうございます。」


その人はそう言ってスタスタと歩いて行った。


彼の後姿を眺めながら不思議に思った。


(なんでリーダーと間違えたかな。)


白髪のヒラヤスとは正反対の黒髪。ジーパンにTシャツというラフな格好のヒラヤスとは違って、こんな真夏日なのに真っ黒なファーコート。暑くないのだろうか。


しかし、共通する部分も確かにあった。

髪で隠れた右目、何か含んだような笑み。

それはまさにヒラヤスのそれであって…。


(だいぶ神経にきてるな。)


ファーコートの彼が人ごみに消えると同時に再びうなだれる。


「あんた具合でも悪いの?また吐く?吐くならなるべく離れて人目のつかないところで吐いてよね。」

「はいはい、心配どうも。」


もうこのままバックれて帰るかと椅子から立ち上がる。


「まぁまぁ座って座って。」


ポンと肩を押されて、流れるように再び椅子に座る。


眼前にはスーツを着たオールバックで顔には縫った後、いかにもやばい系の仕事をしてそうな出で立ちの男。

男はにっこり笑って彰人の肩をポンポンと叩く。


「俺はこれで二回目なんだけどさ。前回のお偉い方は目立つのを嫌って、なるべく人目を避けるようにやってたわけなのよ。好き放題できないわ挙句負けるわで散々だったわけよ。」

「それに変わって今回はどうだ。課された命令は好き放題暴れろ。痺れたねぇ。感服したねぇ。俺は今の頭に命尽きるまで従うと決めたよ。」

「君。君には何か命を賭けていいと思える程慕ってる者はいるか?」


よくアニメだとか漫画であるようにこういうヤバそうに見える人程、実は良い人みたいな感じに、楽しそうに笑うスーツの男。


「いや…、特には。」

「そうか、それは良かった。もしかしたらこの中に君の慕っている"人"がいたかもしれないからね。人間派閥は人間界に染まりすぎたと聞いたから。」


そう言って男は片手に握っていた銀色のスーツケースを開ける。

風に巻き上げられ、スーツケースの中身がバラバラに、空高く舞い上がり広がる。


札束。


空いっぱいにお札が舞い上がる。

それはヒラヒラと宙で少しの時間舞い、やがて滑るようにして地面に落ちる。


「人など、俺たちを信仰するだけの愚かな肉塊に過ぎない。実に醜く、汚らしい生き物だ。」


土曜日のお昼時、お昼を済まそうと家族連れ、カップルなど多くの人が歩いている。

とある一人が空から降ってくる物に気付き、それは一瞬で周りに伝染していく。

立ってる者は誰一人としてない。スーツの男を除いて。

耳を覆いたくなるほどの歓声に包まれた中、スーツの男が口を開ける。


「頭から言われたんだ。始まりは派手に頼むって。」


ゆっくりと見せつけるようにしてスーツケースを持つ逆の手、左手を掲げる。


パチン。と乾いた音が鳴り、スーツの男は続けて言った。


「耳は塞いでおいた方がいい。」



ゴッーーーーーー。



辺り一面を覆う光の中にスーツの男の笑顔だけが焼きついた。




どう頑張ってもバトルまでの導入が無理。

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