08_魔力集めと気がかり案件
8話にして設定やら何やら崩壊してる気がするんですケドー。
カチッ。
カチカチッ。
カチ。
目の前に広がるのは大きな交差点。いつもと変わらずおびただしい数の車が行き来している。赤い車、青い車、トラック、バス、タクシー。そんな車の往来を道端で安物のパイプ椅子に座り、無心で眺める。
「ちょっとあんた!今一台見逃したわよ!」
「…」
「なんだと!ちゃんとしないとダメだろうが!世の中のためにならんだろう!」
「…」
(なんでこうなった…。)
□■□■□■□
「皆さん集まりましたね。」
場所は登竜山高校一年二組のクラス。
昨日と同じ人間派閥の面々がこの教室に揃い踏みである。
教卓に立つヒラヤスから、まるで朝のホームルームのような状態で今日の日程を告げられる。
「昨日も言いました通り、今日は魔力集めをしてもらいます。まぁ簡単に言ってますが、結構気力と体力がいる作業になりますから気をつけてください。」
「それと、まだ顔を合わせたことない幹部の紹介をしましょう。」
今日はお前らにいい知らせがあるぞぉと言わんばかりの笑顔で扉の方を向くヒラヤス。
「それじゃ、入ってきてください。」
まるで転校生を呼ぶようなノリで話すヒラヤス。それに呼応して勢いよく扉が開かれ、外から一人の少年が飛び出してくる。
「元気かみんな!俺は【一番ヶ瀬 蓮二】!能力はないがこの熱い気持ちと体力には自信ありだ!みんなの頼れる幹部になれるよう尽力するからよろしく!」
Vサインで胸を張る少年。
中身が若干激しいことを除けば、どこにでもいるようないたって普通の高校生らしき年齢と外見。
「それじゃ改めまして、彼は一番ヶ瀬 蓮二くん。人間派閥の幹部ね。能力は不明。本人も御しきれてないようでちょっと扱いに困る存在です。ぶっちゃけ、できれば関わりたくないと思ってます。」
毒舌を絡めた紹介を物ともせず、蓮二は深くお辞儀をして一番前の席に座る。
「ちょっと待って!今聞き捨てならないことを言ってたわよこいつ!」
ガタンと身を乗り出すようにして蓮二を指差して叫ぶスクルド。他の神々も口を半開きにして唖然としている。
「何か?」
「何か?じゃないわよ!今こいつ能力無しって言ったわよね!?ただでさえ私たちが弱いのに幹部まで弱かったらどうなるのよこの派閥!!」
「そんなこと言われましても、選ばれたのは彼なんであって、誰も文句は言えないんですよ。」
「いや、それでもこれじゃあんまりにも…。」
「グダグダと他人に文句を垂れる前に、自分の方をどうにかしようとは思わないんですか?ん?」
「うぐっ…。」
ヒラヤスの毒舌が槍のように胸に突き刺さる。三秒先の未来を見れるより、無能力の方がいっそ晴れ晴れとしてる。中途半端な能力を持つ方がなんか哀れな感じがすごい気がする。
ヒラヤスは黙るスクルドを鼻で笑って次に進める。
「そしてもう一人、これで最後の幹部。幹部は一応リーダーの私を含めて六人。では、自己紹介をお願いします。」
そう言ってスマホを前に掲げるヒラヤス。
神々全員の頭にハテナマークが浮かぶ。
画面には通話中の文字。
[…ふひひ。]
スマホのスピーカーから漏れる異様な笑い声。
[どうも皆さん音声のみで初めまして。私、【竜宮ノ使】っていいます。もちろん本名じゃないよ。ふひひw。レンちゃん(一番ケ瀬)は簡単に能力言っちゃってるけど。って言える能力なかったんだけどね。私はそう簡単に能力も素性を明かす気ないからね。ふひひwサーセンw。さらに言うならお金貰わないと動かないから。そこんとこよろしく頼むねwww。]
そのまま電話はプツリと切れた。
突然のトルネードに、家の屋根を丸ごとすっ飛ばされたような気分に襲われた。
「と、いうわけで彼女が最後の幹部です。実際に彼女については私は何も知らないし知ろうと思いません。」
ヒラヤスがなぜか嬉しそうにそう言う。
人間派閥というものはそもそもの時点でいろいろと破綻しているようだった。
リーダーは幹部を把握しきれていない適当ぶり、幹部は個性が強すぎる変態ばかり、残りに至っては無能のダメダメ集団。
「さぁ、皆さん心のどこかで思っています通り、人間派閥は弱いです。幹部、神両方共。とても。どうしようもなく。惨めなほどに。弱いです。」
槍のように剣のように、ヒラヤスの言葉がもはやトゲなんていうレベルを超えて突き刺さる。
「能力値ド平均の側近コンビに、能力なしの能天気バカ。強いといえるのが幹部六人中三人というこの現実。さらに追い討ちをかけるように無能勢ぞろいの神々達。ほんとなんでこんなことになるんですかね。」
深いため息を吐いてうなだれるヒラヤス。
必死に怒りを抑える平均側近コンビの片割れレスクヴァと、無能の烙印を押されたスクルド。見ていて哀れだ。
ボロクソ言って焚きつけるのも、もはや何かの手なのかと思えてくる。
ちなみに俺は褒められて育つタイプです。
「そんなあなた達と共に戦っていく中での最初の作戦。まだここは準備期間です。極力戦闘は避け、力をためる時です。」
「今回の聖戦でも、人間派閥はいいカモだと思われているようです。いいように使うだけ使って後は魔力の足しにでもしようとしてるんじゃないですかね。」
「果たしてそれでいいのか。いいや、よくないですね。実によくない。そこで一つ、想像してみてください。余裕ぶっこいてる悪魔や天使達にひと泡吹かせる姿を。奴らの驚き慌てる姿を。」
「これを現実にしてやりましょう。」
一瞬の静寂の後、休日の校舎内に怒声が響き渡る。
「うおおおおおおおおおおおおおおやってやんよおおおおおおおお!!」
「ぶっ殺してやるおらぁぁぁああああああああああああああ!!」
レスクヴァとスクルドに火がついた。
注意、二人とも女の子です。
(この人、焚きつけるのうまいな…。)
叫ぶ二人を眺めつつ苦々しく笑う彰人。
まぁ、戦争するにあたって士気が高いのはいいことではないだろうか。
だがしかし、俺の士気はイマイチ上がらない。
一つ気になることがあるのだ。
チラリとシャルヴィを見るも、レスクヴァを抑えるのに必死こいていた。
「では、準備の一歩目。魔力集めを始めますか。」
「具体的には何をするんだ?」
「今回はこれを使います。」
そう言って、問いかけたカーマにポンと渡す。
「なんだこれは?」
銀色のボディにボタンのようなものがつき、そして0000という四桁の数字。
「今から皆さんにはチームに分かれて、これであることをやってもらいます。」
□■□■□■□
「なんでこんなことになったかなぁ…。」
彰人は七月の炎天下の中、ひたすらに流れる車を眺めてはカウンターを押していく。
「どうしたトールよ。元気がないようではないか?」
「肉体的にも精神的にも疲れはピークだよ。」
「はぁ?何言ってんのあんた。まだ始まって一時間も経ってないわよ。」
(お前らみてーな気苦労するメンバーなのが悪いんだよ!)
「リーダーも言ってただろう?これも必要なことだって。意味のないことなら、"交通量調査のバイト"なんてさせるわけないだろう?」
無能力幹部の一番ケ瀬がそう呟きながらもカウンターを押していく。
そう、ヒラヤスに言われたのは魔力集めなんかではなく、ただのアルバイトだった。
日給8000の交通量調査のアルバイト。普通に良い給料のアルバイトなのだが、今はそういう問題じゃない。
「何がしたいのかまるでわからないんだよ。突然のアルバイトもそうだし、このメンバーわけもそうだし。」
ヒラヤスは今回の魔力集め(アルバイト)において三人一組でチームを組んでやらせている。
彰人、スクルド、一番ケ瀬。
カーマ、ティアマト、レスクヴァ。
ユピテル、イシス、シャルヴィ。
ヒラヤスとユウトは別で何か用事があるそうだ。
(なんでこんな面倒なチームになったんだよ…。)
百歩譲ってアルバイトは許そう。だがしかし、このメンバーわけは許されない。無駄に暑苦しい無能と、少しでも喋ると突っかかってくる無能。
「あんた何ため息なんてついてんのよ。そんな暇あったらちゃんとしなさいよ。」
前言撤回。何も言わなくても突っかかってくるわ。もう横にいるだけで疲れる。
無能な二人に囲まれた彰人。だが、実際のところバカにできる立場ではない。
そう、彰人も無能力なのだ。
気がかりがあるといった。
俺は雷神として代理に戦えと言われたのだ。ならば何かチート能力の一つや二つ。持っていてもいいのではないか?よくあるラノベや漫画なら大抵持ってるはずだ。うん、きっとそう。
なのに全くその気配がない。これじゃまともに神も殺せないし、先日の戦闘を見る限り逆に殺されかねない。
気になる。俺が一体どんな能力を手にしたのか。それを知らずにこれから戦うなんて自殺行為だろ。
バイトの休憩中、シャルヴィに電話してみることにした。
[もしもし、トール様ですか?]
[うっ…そうだ。トールだ。]
もう名乗るのきつい…。
「ひとつ聞きたいことがあるんだが。」
[なんでしょうか?]
「俺の能力ってなんだ?」
[と言いますと?]
「俺は雷神の代理となったんだろ?肩書きから察するに電撃系の能力だと思うんだが、その使い方とかわからないんだが。」
[あの、言ってる意味がわからないのですが。]
「いやだから!これから俺が戦っていくにあたっての能力だよ!使い方わからないと俺死んじゃうって!」
[確認しておきますね。トール様は元々普通の人間ですよね。]
「そうだけど。」
[それがわかっててなぜ能力などと…。]
「お前頭が硬いなおい!確かに俺は元一般人でお前らに頼まれて雷神の代理になったんだろ?ならその雷神としての能力ってやつがあるわけだ。その使い方だよ。」
[えー…っと。少し、いや、かなり勘違いしてるみたいなんではっきり言っておきますけど…。]
[あなたに与えられたのは雷神の肩書きだけであってですね。]
一拍空けてシャルヴィは言った。
[何も変わらずただの一般人。能力も何もないただの人間ですよ?]
「………はい?」
ハンッ(嘲笑)
人間派閥がまともな能力なんて持てるわけないじゃないですかヤダー。




