第十六話『動き出す絆』9
今回で百部を超えました!! 本当にありがとうございます!!
「罰則は以上だ。さっさと出ていけ!!」
「はいはい、分かりましたよ」
ようやく解放された……。
自分が仕出かしたことは悪いとは思っていたが、ここまでとは厳しいとは全然予想だにしていなかった。
これで俺は完全に問題児になってしまったというわけだ。
実に最悪だな、まったく。まあ、自業自得だから何とも言えないが。
俺こと涼風司に科せられたのは三つだ。
一つ目は、一週間神人のフロアに入るのを禁止。
つまり、俺はもう神人のトーナメント戦は観戦出来ないということだ。
二つ目は、一週間訓練場、闘技場を使うのを禁止。
まあ、明日が団体戦だがしっかりとコンディションは整えてきてあるので心配ない。
この二つはまだいい。次が問題だ。
三つ目は、以後上からの命令と依頼は断ることは出来ない。
はぁ? もう、意味が分かりません。
というか、今まで拒否出来たのか? それなら瀬那先輩の命令に聞かずに済んだのにな……。
瀬那先輩のおかげで今があるのも間違いではないけどな。
それに以後だと……。まさかの無期限だ。
これから馬車馬のごとく働かされるのが目に見えている。
本当に最悪だ……ついてない。
俺は最悪の気分のまま取調室から出た。
この学園に取調室があるなんて知らなかったな。
とりあえず、今は何もないからいいか。
そういえば、試合の結果はどうなったんだ……?
これで、柊が負けていたら洒落にならんぞ。
確か試合結果が張り出されるはずだよな……。
俺は辺りに試合結果が張り出された用紙がないか探す。
だが、
「やっぱりないよな……」
もう既に剥がされた跡があった。
恐らく俺みたいな奴に見られない為だろう。
「はぁ……なんて理不尽だ」
俺は深いため息を吐いた。
すると、後ろから女の子の声が聞こえた。
「あれ、あなたは……成実の知り合いじゃない」
「お前は確か柊の対戦相手の…………」
名前が出てこないぞ……。
「天道茉依よ、失礼な人」
そうだ、確かそんな名前だったな。
長い時間取り調べを受けていたから、忘れてしまっていた。
天道は少し拗ねているが、表情からは嬉しさが滲み出ていた。
「試合結果が知りたいのでしょ?」
「ああ、そうだ」
「なら、教えてあげるわ。私は成実に全力で戦ったけど、負けたわ」
良かった……。
俺は心の中で安堵する。
とりあえず、勝つことは出来たようだ。
「でも成実、私と同じように倒れちゃってその後は不戦敗で一回戦勝利で終わってしまったわ」
「そ、そ、そうか……」
あいつは……まったくしょうがない奴だな。
団体戦なら構わないが、連続戦うトーナメント戦にそれは駄目だろう。
気持ちは分からないわけではないが。
「柊は今どうしているんだ?」
「成実はまだ寝ているわ。あんなに一生懸命戦ったからね」
「そうか……。柊もそうだが、お前は大丈夫なのか?」
俺がそう聞くと、天道は非常に驚いた表情をした。
「な、何だよ?」
「いや、ごめんね。まさか私まで心配してくれるとは思っていなかったらつい……。
てっきり問題児だから知らない人には薄情かと勘違いしていたわ」
俺って薄情だと思われていたのか。
少し心に傷がついた気がする。まあ、仕方がない。
「あれ? もしかして落ち込んでるの?」
「いやいや、全然!! お前に薄情とか言われても全然気にしないから、そう気にしてない!!」
「本音出てるわよ、あなた」
しまった……。
俺って本当に駄目だな。自分でも悲しくなってくる。
「なんか……思っていたイメージと全然違うわね。まさかここまでのヘタレだったとは……」
「いや、ヘタレって言うなし!!」
「ふふっ。冗談よ、でも安心したわ。成実に大切な人が出来て」
「ん? 大切な人って……」
そんな人、柊にいたのか……。
俺は内心非常に驚いている。
そんな俺を見た天道が深いため息を吐く。
「やっぱりヘタレね……まあ、いいわ」
「いや、良くないだろう」
「いいの!! とりあえず、柊の状態を知りたいでしょ」
「それはそうだな」
こんな茶番しているより柊の状態の方が大事だよな。
「案内してあげるわ、成実のもとへ」
「それは助かる」
俺は天道にお願いして柊のいる場所まで移動することにした。
歩く事、十分。
天道曰く、今俺がいる場所は救護フロアらしい。
神人達の治療を行ったり、神人達が救急時に寝る場所だそうだ。
ここに柊はいるとのことだ。
「ここよ」
天道は立ち止まると目の前の扉を指差した。
丁寧に『柊成実様』の札が掛けてあった。
「入っていいのか?」
俺は一応あだ名『問題児』から本当の『問題児』になってしまったので、念のため天道に尋ねる。
「別に構わないわ。罰則の執行は明日からだから」
「そうなのか……ってどうして知っているんだよ?」
「理由はなんてあなたが問題児だからに決まっているじゃない。こういうのは全員に伝わる者になっているのよ」
もう、いっそ殺してほしい。
これじゃあ俺の居場所ないんじゃないのか……。
聞けば聞くほど億劫になる。
「丁寧な説明、ありがとう。とりあえず、今日は大丈夫だな」
「ええ、気にせず入って」
なら、入ろう。
俺は扉を開ける。
中に入ると静かに眠っている柊がいた。
とても気持ちよさそうに寝ている。
そんな柊を見ていると少し顔が熱くなる。
「どうかしら、成実は?」
「大丈夫だ……特に心配するところはない」
こんな気持ちよさそうな柊は初めて見た気がする。
でも、良かった。本当に良かった。
一時はどうなることかと心配したが、もう大丈夫だ。
「ありがとう」
「どうした、急に?」
急に天道からお礼を言われたので、少し動揺する。
だけど、天道から伝えたい意思があることに気が付いた。
それに笑顔で本当に嬉しそうだった。
「私と成実の絆を取り戻してくれて、本当にありがとう。あなたのおかげで私は道を誤らずに済んだ。
感謝しても感謝しきれないわ」
「俺はただ背中をそっと押しただけだけどな……」
「それでも全然いい。それが結果的に幸せを生んだのだから。
だから、成実の分も含めてもう一度お礼を言うわ。本当にあり――」
「茉依、待って」
ふと、ある少女に天道の言葉が遮られる。
もちろん、柊だ。
「成実、起きていたの?」
「違うわ。正真正銘、今起きた。最後のお礼は私に言わせて」
「うん、分かった」
天道はそう言って、口を閉じた。
「司、こっちに来て」
「ああ、分かった」
俺は柊に言われた通り、柊の近くまで寄る。
その瞬間、
「えっ、柊?」
柊が俺に抱き着いてきた。
うそ? いったい何が……。
俺は何をされたのが今も理解出来ない。
「バカ……本当に……バカなんだから……」
「柊……」
「今回は本当にあなたに何の関係もなかったのに……司は私を助けてくれた。私の事を別に無視しても良かったのにそれでも私に付き添ってくれた。
本当にお人好しね……あなたは」
「そんな事ない、柊。誰かが困っていたら助けるのは当たり前だろう。
こんな問題児だって思っていることだ。別にそんな凄いことじゃ――」
「違うの、司」
俺の言葉を遮り、柊はそう呟いた。
いったい何が違うのだろうか……。
「私はね……助けてもらう人が誰でも良かったわけじゃないの。
司、あなたじゃなきゃいけなかったのよ」
「……!!」
俺じゃなきゃいけなかった……?
そんな事があるのか……こんな残念な問題児なのにな。
「あなただからこそ意味があったの。あなただから私と茉依の絆が戻ったのよ。
全ては司のおかげよ。司がいらないと言ったとしても私は言うわ。
本当にありがとう!!」
俺の目の前で柊は今までに見たことがない嬉しそうで可愛らしい笑顔を見せた。
何だよ……可愛いじゃないか。
俺ってバカだな……本当に。
しっかり意味があったんだな。
俺の中で何かがすっきりした気がする。
そして、俺は言葉を口にした。
「当たり前だ。俺は最強で問題児だからな!!」
「うん、そうだね……!!」
俺はしっかりと正しいことをしていた。
どうして、俺は自信を無くしていたんだよ。
どこかできっと間違っている、お節介だと思っていたかもしれない。
柊だけじゃない伊吹や七瀬、瀬那先輩達にもそう思われていると勘違いしていた。
思い過ごしだというのに……まったく俺は。
でも、もう心配いらない。
前に進める。明日の団体戦も大丈夫だ。
まあ、その前に……。
「とりあえず、もう離れてくれないか? 俺、結構恥ずかしいからさ」
「……!! そ、そ、そうよね!! 恥ずかしいよね、ごめん」
柊は顔を真っ赤にして急いで離れ、俺に頭を下げた。
「まあ、大丈夫だ」
「これからもよろしくね」
気持ちが落ち着いた柊は俺にそう言った。
「ああ、こちらこそ」
この後、俺達は天道と共にしばらく話をした後帰路に就いた。
今日はよく寝れそうな気がするな。
さて、ようやく第十六話は終了です。次回は第三章最終話の第十七話です。問題児と神人少女による物語をこれからもよろしくお願いします!!
追記
明日、投稿予定です!!




