第十六話『動き出す絆』5
作者の拙い戦闘シーンです。どうか細かいところを気にせず読んでください……。
「両者、入場してください!!」
高らかな審判の声を聞き、私は闘技場へと足を踏み入れた。
中に入ると観客席は生徒達で埋まっている。さすがにこの数は驚きだけど。
まあ、そんな事いい。それよりも、
「茉依……」
「ふん。よく逃げ出さずにこの場に来れたわね。
その姿勢だけは認めてあげるわ」
私の目の前には茉依がいる。
大事な大事な親友。
今はその関係は崩れてしまっている。
でも、気にしない。今日こそ……。
「茉依、私はあなたに勝つよ」
「あっそう。その思いがいつまで持つかしらね」
やっぱり舐められているわね……。
それも仕方がない。それだけ私は弱かったから。
だけど、それが勝利のカギになる。
今の私を茉依は詳しく知らない。
それをいかに試合で生かせるかどうかが私達の勝敗を左右する。
負けられない。私の意思はそれしかない。
両者が出てきたのを確認した審判は、
「両者、構え!!」
力強い声でそう呼びかけた。
それを聞いた私達は鞘から細剣を抜き、レイピアを構えた。
僅かの間、辺りは静寂に包まれる。
もうすぐで試合が開始される。
私と茉依の絆を取り戻す為の試合が……!!
そして、その時はやってくる。
「両者、試合開始!!!!」
『おおおおぉぉぉおおおぉぉお!!!!』
試合開始の合図とともに観客席から凄まじい歓声が起きる。
「行くよ、茉依!!」
私は茉依めがけてレイピアで突進しつつ、大きく振り下ろした。
もちろん、そんな攻撃で茉依が敗れるはずもない。
キイィィィン……!!
茉依は咄嗟に私の攻撃を受けとめる。
私の攻撃を受けても茉依はビクともしなかった。
さすがだ。私は茉依から離れ体制を立て直す。
長い試合になりそうね……。
予想はしていたけれど、どうやらその読みは当たっていたらしい。
「はあぁぁぁぁ!!!!」
茉依はとんでもない速さで攻撃を仕掛けてきた。
まったく、軸がぶれていない。
私は何とかレイピアで受け止めるのも二、三歩後退する。
だけど、茉依がそれ相応の実力者であることは分かっている。
だから、こんな所で絶望なんてしない。
むしろ、茉依が実力が落ちていなくて良かった。
さあ、ここからね。
「おりゃあ!!」
私は再び茉依にレイピアを振り下ろす。
今度は軽々と避けられる。だが、それがチャンスだ。
私はその瞬間を見逃さない。
地面に振り下ろしたレイピアを素早く振り上げ、茉依に突撃する。
「甘い!!」
後退しようとしていた茉依が私の攻撃を再び弾いた。
やっぱり一筋縄ではいかないわね……!!
だけど、私だって負けてられない。
あいつに鍛えてもらった恩をここで返す。
弾かれた衝撃を利用して体制を立て直し、レイピアで茉依のレイピアめがけて振りかざす。
「……!?」
今の攻撃に茉依は少し動揺した表情を見せる。
どちらが引くまで私と茉依は至近距離にいる状態が続く。
茉依から振り払おうという様子はない。
なら、私が仕掛けるまで。
レイピアを少し引いた瞬間、
「くっ!!」
私は茉依に足払いを仕掛けた。
今の、レイピアでの攻撃はあくまでフェイクでしかない。
足払いを受けた茉依は転びかける。
とはいえ、転びかけただけ。
すぐに軸を整え、再びレイピアを弾いた。
まあ、牽制だからしょうがない。
少しでも今の実力を知ってほしかったからだ。
「もしかして、本気で私で勝とうとしているの?」
「当たり前よ。でなければ、ここには来ないわ」
茉依の目は私を軽蔑していたが、ほんの少しだけ感心しているようでもあった。
少し分かってくれたみたいね……。
私は気を取り直して構えなおす。
「私はね、茉依。あなたともう一度友達としてやり直すためにここにいるわ。
だから、私はあなたに勝つ!!」
「ふ~ん……。まあ、勝てたらね」
「はああぁぁぁ!!!!」
私はもう一度茉依に突撃で切り込む。
だが、
「えっ……?」
茉依が私の攻撃を一切受け止めようとしない。
まさか、負けるつもりなの……いや、違う!!
そんな葛藤もすぐに理解する事になる。
「あれ、もしかして忘れたの? どうしてあなたが私に惨敗した理由を」
「……!!」
私は瞬時にそれを思い出す。
神人に当然あるもので私だけにない……固有スキル。
まずい!! だけど、気が付いた時にはすでに手遅れだった。
「なら、思い出せてあげる。」
茉依は不敵な笑みを浮かべ、
「反射、レイピアの衝撃を相手の腹部に」
「かはっ!!」
私の腹から何かに殴られたような痛みを感じる。
茉依が余裕なのはこれのおかげだろう。
「思い出した? あなたが私に惨敗して、そして勝てない理由。
最弱なあなたにはない力よ」
リフレクト。それが茉依の固有スキル。
相手の攻撃や魔法などを全て跳ね返すことが出来る、ほぼ無敵なスキル。
むやみに戦っているだけは勝てない。
改めてそう実感した。
「ふふっ。どう、降参する?」
「もちろん、するわけないでしょ。
私はあなたに勝つんだから!!」
そう、これぐらい諦めていけない。
どこかに弱点があるはずだ。
それが分かるまで耐えればいいだけ。
私の言葉を聞いた茉依は心底呆れたようにため息を吐く。
「さっさと、負けを認めてくれれば痛い目に遭わずに済んだのに……。
自分を恨むことね!!」
そう言って茉依は私に素早い突進をしてくる。
とりあえず、弱点が見つかるまでは私が攻撃を仕掛けなければいいだけね……!!
私はそう思い、茉依の攻撃を受け流そうとした。
その瞬間、
「リフレクト、衝撃を相手の足へ」
「……!? ぐっ!!」
まるで鈍器で叩かれたような痛みを今度は両足から感じた。
その痛みで床に倒れこむ。
その後、何とか立ち上がることが出来た。
「どうして……?」
「分からない? このスキルは別に相手の攻撃を反射するわけではないの。
発生する衝撃を反射する……それが私の固有スキルよ」
「……!! じゃあ、つまり攻撃しても防御しても反射で私は衝撃を受けるっていうことなの……」
「そう。だから、最初から勝利の二文字なんてあなたには無かったのよ。
あるのは敗北の二文字があるだけ……それも惨敗に近い敗北がね!!」
「……」
私はただ黙るしかなかった。
そんな滑稽な私を茉依は再び軽蔑の眼差しを向ける。
「無様ね。戦う事自体が愚か。本当に残念。
少しは期待していたけれど、失望したわ」
そんな……。
最初から私は茉依の思うつぼだったというの……。
始めから私の負けは確定していたのかもしれない。
そんな考えがついには生まれてきてしまった。
私は、私は……やっぱり弱いんだ……。
もう勝つ方法なんてどこにもない。ただあるのは敗北のみ。
そう思った時には、私の心はすでに深い絶望に染まっていた。




