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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第三章 奮闘編
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第十六話『動き出す絆』4

 もうすぐね……。

 いつもより敏感に聞こえる時計の音を聞きながら、試合が始まるまで私は控え室で待機していた。

 ついに、ようやくこの日が来た。

茉依まいとようやく戦える……!!

 ここまで来るのに長かったような短かったような何とも言えない気分だ。

 私は時間に余裕があるので、体を慣らすことにした。

開始時間は九時。まだ、三十分もあるわね。

 時間を確認しつつも、体を慣らしていく。

最初は足から始まり、最後は首まで慣らしていった。

 うん、バッチリね。

 でも、私ってこんなに柔らかったっけ……?

以前から体は徐々に柔らかくなっているのは気が付いたけど、まさかここまで柔軟になっているとは思ってもみなかった。

 努力の賜物ってやつなのかも。いや、それとも司のおか……って!!

 私はどうしてこんな時まで司の事を意識しているの。

べ、べ、別にいつもだって司の事なんて考えてないからね……!!

「私、誰に言い訳しているの……」

 気を取り直す為に鞄から水を取り出し喉を潤した。

 別に私しかいないのだから、誤魔化す必要なんてどこにも……って違う!!

集中よ、私。今から試合があるのだから。

 でも、なぜだろう。今まで緊張していたのに今は全然緊張していない。

きっと、私は楽しみなのだ。

 茉依と再び一戦を交えることに。

思い返せば、一年前にも私は茉依と勝負した。

 もちろん、勝敗は言うまでもない。

 あまりに一方的過ぎて、負けというよりは惨敗に近い。

あの頃、ただがむしゃらに取り組んでいた。

 そして、残念だけど負けてその場で泣いてしまった。

 そんな私を茉依は軽蔑する視線を向けてそのまま去っていったことをよく覚えている。

 だけど、今は違う。

決して私は強いとは胸を張って言えないけれど、負ける気もしない。

 茉依に勝つ……。それが私の目標であり、使命だ。

そして、もう一度友達になる。

 あの時のように。

 一通り体慣らしを終えた私は、細剣レイピアを手にする。

どんな時だって私が使ってきた武器。

 本当に大切なものだ。

 私はレイピアを綺麗に布で拭いた。

拭いたことにより、より輝きを増す。

 さて、準備は出来た。

 もうそろそろ……。

ちょうどそう思っていた時、

「失礼します!! 柊選手、まもなく試合が始まりますので闘技場へ入場してください!!」

 大会進行員が私を呼びに来た。

 いよいよね。

「分かりました、すぐに行きます」

 そう返事をし、レイピアを鞘に仕舞い控え室を出た。



 × × ×



「うわぁ……予想以上だな」

 俺が思っていた以上に観客席は生徒達で埋まっていた。

やはり神人のトーナメント戦は人気なんだな……。

 俺達が参加している団体戦とは大違いだな、まったく。

恐らく通常より二、三倍いや四、五倍多いだろう。

「こっちです、司さん」

「あっ、はい」

 彩那さんが手を招きながら、俺をある場所へ連れて行った。

 特等席というからには相当いい場所なんだろうな。俺はそう思った。

それはそうとして、またこの視線か……。

 さっきから俺に対しての視線がやけに冷たい。

 特に男子から。まあ、その気持ちは分からなくはないが。

俺はただ、彩那さんと一緒に移動することになっただけなのにな。

 それがまずいという事か。

 もし、そうならごめんとだけ言っておこう。

俺だけまるで異様に寒い場所にいるような気がした。

 まあ、そんな気分もすぐに終わることになる。

「ここです、司さん」

「これは……凄いですね」

 ここから特別闘技場の全てを見渡す事が出来るようだ。

さすが、特等席。例のVIPルームに引けを取らないくらいだ。

 俺は驚きつつも、とりあえず案内された場所に座ることにした。

「どうですか? ここならよく見えるでしょう」

「あの、彩那さんはいったい何者ですか?」

 つい尋ねてしまった。

いや、こんな良い席が使えるのは中々いないだろう。

 余程の実力者か、それとも生徒会長だったのか……?

「そういえば、教えていませんでした。私がこの女神コスモス学園の卒業生だという事は言いましたよね?」

「はい、それは先ほど聞きました」

「実はですね、私この学園の生徒会長で主席で卒業したのですよ」

 まさか、どっちもだったとは。

それならこんな豪華な場所が使えるのも納得だ。

 ただ、本当にあいつの母親かよ……。

 それだけが本当に疑問である。

「それは凄いですね……」

「ごめんなさい!! 不快になりましたか?」

「いえいえ、大丈夫です。普通に驚いただけです」

 そう、ただ驚いただけ。

 想像以上に彩那さんは凄い人物だった。

「そんなに凄いことなんですか……? てっきり司さんなら驚かないと思いました」

「いや、平然にしている方がおかしいです」

 彩那さんって意外に自覚していないのか……?

 聞けば聞くほどとんでもない人だ。

「そうですか……。それはさておきこれ飲みます?」

 少し残念な表情を浮かべつつも彩那さんは話題を変えるため俺に紅茶を渡す。

とてもいい香りがする。

 上品な気分になるな。

「頂きます」

 俺は紅茶を一口飲んだ。

「どうですか?」

「美味しいです。こんなに美味しい紅茶は初めて飲みました」

「そうですか、褒めていただけて嬉しいです」

 手を合わせるように彩那さんは喜んだ。

「もうそろそろ始まりますね」

 彩那さんは闘技場の方へ視線を移動しそう答えた。

いよいよか……。

 俺と彩那さんが今か今かと待ちわびていると、

『おおぉおおおおぉおおおお!!!!』

 まるで雄たけびのような歓声が上がる。

 俺も視線を闘技場へと視線を移すと、柊の姿と対戦相手の姿があった。

 勝てよ、柊……!!

 心の中でそう力強く思った。



 次回からいよいよ因縁の対決です!!

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