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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第三章 奮闘編
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第十六話『動き出す絆』3

 クリスマスですね……。みなさんは、サンタはいると思いますか? どうでもいい質問をすいません。

 翌日。

時間は過ぎるのは早いもので、もう柊の神人のトーナメント戦だ。

 いよいよ柊の実力が試される時か……。

 正直に言って俺は期待で胸が一杯だ。

最弱と言われた神人少女が今日その殻を突き破る。そんな大きな期待が俺にはある。

 まあ、そんな思いもあって俺は何となく試合が始まる一時間前に来てしまったわけだが。

 今日から一週間はトーナメント戦もあって人間も神人のエリアに入ることが許される。

団体戦がない生徒達はこぞってトーナメント戦を見学しに来るらしい。

 それほどトーナメント戦は重要かつ大切な行事というわけだ。それに神人のトーナメント戦はいつもは使えない特別闘技場で開かれる。

いかに学園が重要視しているかが分かるだろう。

 とはいえ、生徒達で辺りがごった返すのはせいぜい三十分前になる。

要するに、

「気が早過ぎるだろう、俺」

 ということだ。

 ちなみに大会出場者はすでに控え室で最終調整に入っている。

俺もさすがに最終調整に立ち寄れない。

 いかに指導すると言ったところで、それは言語道断なのは言うまでもない。

 つまり、俺は今絶賛暇を持て余しているのだ。

 まあ、そんな時間が俺にとっては幸せだから別にいいけどな。

後、今日から団体戦三回戦も始まるので授業はない。

 べ、べ、別にサボってないぞ!!

 俺は問題児じゃないからな。そう問題児じゃない。

 それはさておき、これからどうしようか……。

自業自得ではあるが、暇を潰せるものがない。

 荷物は持ってきている。

だが、あるのは訓練用の木刀、飲み物、タオルと言った訓練の為の物しか持って来ていない。

 まったく、情けない話だ。

 そんな事を思いながら、トーナメント戦のタイムテーブルに視線を落とした。

 柊の対戦時間は……九時か。

今は八時十五分。まだまだ開始までには余裕がある。

 柊の事だから、控え室で訓練をしているのだろう。

 俺も何かするか。

とりあえず、鞄を近くのベンチに置く。

 鞄の中から球体を取り出す。

じゃあ、肩慣らし程度に始めるか。

 球体にいつも通り触れ、能力消滅剣スキルキラーを出現させる。

「はああぁぁぁ!!!!」

 力強くスキルキラーを大きく振り下ろす。

振り下ろしたことにより微かに風が生まれる。

 今日も万全だな。最近、よくスキルキラーを使うようになったが特に異常は起きていない。

相手も中々手強くなってきているしな。

 俺だってこのままの強さではいけない。

平穏な日常を過ごすために、もっともっと強くならないといけないんだ。

 だから、日々訓練だけは欠かさず行っている。

 気を取り直して、再びスキルキラーを何度も何度も振り下ろす。

その間何回も風が微小ではあるが起こった。

 風が一切入らないこの場所でも力があれば風を起こせるのだ。

 さて、まだまだ続けるぞ……。

そう思っていると、ふと声が掛かる。

「あの……?」

声からして女性だと分かるが、一体誰だろうか。

 聞き覚えない声だった。まあ、それはすぐに理解出来るだろう。

俺は声がする方へ振り返る。

 すると、そこには誰が見ても美人と言える赤い色の長い髪をたなびかせた女性が立っていた。

少し目を見開いてしまった。とはいえ、やはり知らない人物だ。

「あの、もしかして問題児の涼風司すずかぜつかさですか?」

 その言葉が少し心に突き刺さった。

それは置いておくとして、どうやら俺の事を知っているらしい。

 怪しい人物ではなさそうだ。

「問題児ではないですけど、確かに俺は涼風司です」

 一応俺より年上っぽいから丁寧な言葉遣いで返した。

 俺の言葉を聞いたその女性は少し嬉しそうな表情をし、

「良かった……!! 私、司さんに会いたかったんですよ」

「それはありがとうございます。それで、どうして俺に?」

「あっ、すいません。先に名前を述べるのが礼儀だって言うのに……。

 初めまして私は柊彩那ひいらぎさいなです。柊成実ひいらぎなみの母です」

 なるほど、柊彩那さんか……ってえ?

 いや、今柊の母って言ったか。

聞いてはいたが、まったく信じられない。

「あの、柊さん?」

「あっ、私の事は彩那さんでいいですよ」

「で、では、彩那さん。一つ聞きたい事があるのですか?」

「はい、何でしょうか」

「あいつ……いえ柊の母というのは本当ですか?」

 それだけはどうしても聞いておきたかった。

いや、だって今目の前に立っているのはあいつと正反対の女性だ。

 つい疑いたくなるのも仕方がないだろう。

「はい、そうですよ。いつも成実がお世話になっています」

「それはどうも……」

 やはり似てないぞ、柊と。

負けず嫌いなあいつとこの清楚で優しそうな彩那さんが親子……!?

 それに彩那さんって本当に母親か……?

 どちらも何とも信じがたい事だ。

「俺のことは司でいいですよ」

「分かりました、司さん」

 早速無視されているんだが。

まあ、彩那さんは年下の人にもさんをつけるのだろう。

 七瀬だって男子に君だけど、女子にさんってつけているしな。

「それで、彩那さんも柊の試合を見に来たんですか?」

「も、というと司さんもやはりそうなんですね」

 先ほどよりも表情が柔らかくなる。

娘が活躍しているところを見たいのは当然だろうな。

「とはいえ、まだ時間がありますよ。

 彩那さんも早めに来てしまった感じですか?」

「いえ、違いますけれど」

「えっ、今まだ八時半も過ぎていないはずでは」

「そんな事ないですよ、司さん。ほら」

 そう言って彩那さんは時計を指差す。

俺は気になり時計を眺める。すると、

 もう五分前じゃないか!!

「大丈夫ですか? 顔色が悪いですけど」

 俺ってやつは……本当にバカだ。

深い後悔に陥る。

「今の時間帯では闘技場にはもう……」

「心配はご無用です」

「えっ……?」

 俺はつい呆けた声を出してしまう。

何とも恥ずかしい気分だ。

 驚いた顔をしている俺を見た彩那さんはある物を俺に見せた。

「『特別優先席』……?」

「はい。私、一応ここの学園の卒業生ですから。

 まあ、これは一枚余ったのでどうぞ」

 意外に凄い人なのか……。

 頼もしい彩那さんを見ながら感心した。

「ありがとうございます」

「いえ、礼には及びません。

 では、行きましょうか」

「はい、そうですね」

 俺はそう答え、彩那さんと共に特別闘技場へと向かった。

途中、俺になぜか生徒達に冷たい視線が浴びせられたがそれは関係のない話だ。


 


 

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