第十五話『決意と奮闘の中で……』5
「ねぇ、あそぼ?」
私に手を差し伸べる優しい女の子がいる。
茉依なの……?
でも、それにしては幼いような気がする。
とはいえ、茉依の面影があるし……いや絶対茉依だ。
その姿を私は知っている。
だから、きっとこれは私の夢なのだろう。
辺りを見渡すと、茉依だけでなく五歳ぐらいの私がいる。
「あなたはだれ? 私になんのよう?」
小さかった私は暗そうな表情で茉依に尋ねた。
「私は天道茉依!! 茉依って呼んで」
幼き茉依は私に笑顔で自己紹介をした。
そして、
「私とトモダチになろう!!」
「トモダチ……?」
「うん、トモダチ!!」
暗がりにいる私に明るい言葉と笑顔で迎えてくれた。
本当に優しい女の子、茉依。
その時の私はきっとそう思ったに違いない。
でも、だからこそその時の私は友達になる事を躊躇した。
「私は……いい……。私は……一人でかまわないから……」
そんな私の言葉を受けても茉依は、
「よくない!!」
「えっ……?」
「そんなの楽しくないよ……。私は一緒にあそんだ方が楽しいと思う。
だから、私とあそぼうよ」
私に温かい言葉をかけてくれた。
「でも……あなたに……めいわくかけちゃうよ……」
「そんな事ないよ!! 私は全然迷惑じゃない。それに私の事は茉依だよ」
「茉依、ホントにいいの?」
「うん、いいよ」
「ホントにホント?」
「ホントにホント」
「ホントにホントにホントに?」
「ホントにホントにホントだよ」
私がこんなに引っ込み思案だったのに茉依は一切表情を変えず、優しく話しかけてくれた。
「じゃあ、私とトモダチになって?」
「うん、もちろんだよ!!」
私は茉依の手に手を置いた。
そして、私は立ち上がった。
「私は柊成実。成実って呼んでね!!」
「うん、成実。よろしくね!!」
二人で手をつなぎ、狭い所から出た。
そう、これはかけがえのない思い出。
家族以外とは誰とも話せずにいた私に声をかけてくれた。
そして、友達になった。
今でも心の中で強く覚えている。忘れるはずがない。
私を変えてくれたのだから。忘れていいわけがない。
それくらい大事な思い出だ。
その日から私と茉依は親友とも呼べるくらい一緒に遊んだ。
もちろん、晴れの日も雨の日も嵐の日もずっと一緒だった。
私が困っていたら茉依はいつでも助けてくれた。
茉依が悩んでいたら私が助けていた。
「私、成実が困っていたらいつでも助けるよ」
「じゃあ、茉依が悩んでいたら私が助けるね」
「約束だよ、成実」
「うん、約束」
そんな強い関係だった。
町の人からは姉妹みたいとまで言われた。
本当に切っても切れない関係だった。
私、いや私達にとって幸せな毎日が続くはずだった。そう、あの日までは。
私が十三歳になったころ、それは突然起きた。
私の住んでいる町が突如何者かに襲撃されたのだ。
家は壊され、沢山の者達が傷付いた。
私も殺されそうになった。
けれど、その時はアイツに助けられた。
だから、私は無事だった。
そこまでは別に良かった。けれど、私が住んでいた町の者達が隣の町に住んでいる茉依達のせいにしたのだ。
つまりは勘違い、とばっちりだ。
そのせいで事情を知らない茉依達は攻撃され、沢山の者達が死んだ。
その中には茉依のお母さんやお父さんもいた。
戦いに参加しなかった私や他の者達は心配になって向かったころには手遅れだった。
取り返しのつかない事になっていた。
生き残った者達のほとんどが涙を流していた。
私も泣きそうになってしまった。でも、それよりも茉依が心配で茉依のもとへ行った。
でも、再会した時にはもう私の知っている茉依はいなかった。
私に対しての憎悪。復讐の濁った黒い目。
私は必死で事情を話そうとした。けれど、もう茉依に私の言葉なんて届かなかった。
そして、私に
「一生近寄るな、裏切り者」
憎しみのこもった声で言い放った。
私はショックだった。あんなに優しかった茉依がこんなに変わってしまったのだ。
初めての友達だった茉依を失った。
その後、茉依とは一切話すことは無くなった。
いつしか茉依はどこかに行ってしまった。
その時、私は一日中涙を流していたかもしれない。
あまり記憶に残っていない。
初めて会った時、心までもが離れてしまったあの日だけは鮮明に覚えている。
そんな悲しい思いを持ちつつも今まで必死で頑張ってきた。
そして、再会する事が出来た。
まさか、女神学園の生徒だとは知らなかったけれど。
でも、おかげで私に目標が出来た。
もう一度茉依と友達になること。
それだけで本当に充分だ。
だけど、今の状況を考えると笑ってしまう。
たかが訓練兵に負けてしまうなんて。
きっと私はまだ傷付く事を怖がっていたのかもしれない。
本当に情けない。
今だって泣きたい。きっと司や七瀬達に迷惑をかけているはずだから。
私が何とかするなんて無理なのかも……。
今までだって司達に助けてもらってばかりで、結局私は何もしていない。
だから、私は最弱なんて呼ばれるのかもしれない。
私は自分で思っている以上にわがままで傷付く事が怖い。
情けない、情けない、本当に情けない……。
それでも、私はきっと願いを叶えたい。
それもあったから司達に頼ることをしなかった。
これだけは自分でやり遂げたい。
そんな一心で頑張ってきた、今まで。
だから……私は……強くなる……!!
目が覚めたら、今まで以上に頑張って自分を超えて見せる。
そして、いつか……。
私の中で強い意思が生まれた。




