第十五話『決意と奮闘の中で……』2
俺は七瀬の案内を受けながら、柊のいる第五訓練場に向かった。
「ここです……」
七瀬が立ち止まり、第五訓練場の扉を指差した。
ここか……。
頼む、どうか無事でいてくれ……。
そう懇願しながら、俺は扉に触れた。
俺の手に反応した扉はシュッと横にスライドする。
俺と七瀬はただ静かに中へと入った。
「……!! 柊!!」
「大丈夫ですか、柊さん!!」
中にいた柊は全身がボロボロで今にも倒れそうな状態だった。
柊は何とか細剣を使って立つことが出来ている。
それに比べ柊の前方にいる戦闘兵は平然と動いている。
やっぱり、訓練兵か……!!
俺の予想は当たっていたみたいだ。
それよりも早く助けないといけないな。
それにどうやら俺達の声が届いていない。
まさか、まだ戦うつもりなのか……?
明らかに無理だ。
俺は心配になり、柊の傍に駆け寄ろうとした。
だが、
「邪魔しないで!!」
そう力強く言い張り、柊は目の前にいる訓練兵を睨み付ける。
俺は立ち止まってしまう。
どうして、逃げようとしないんだ。
俺には理解出来ない。
柊も何か様子がおかしい。
「柊さん、止めてください!! このままではあなたの身体は……」
「大丈夫よ……!! 私は絶対勝つから……!!」
七瀬が心配そうに声を掛けたが、柊はそれを受け入れなかった。
そして、柊は細剣を構えた。
まずい、止めないと……。
だが、それ以外に俺はある言葉に違和感を覚えていた。
柊は絶対と言ったか……?
柊から絶対という言葉は今まで一度も聞いた事がない。
俺が知らなかっただけかもしれないが、それでもやっぱり何か変だ。
俺は柊の表情を見る。
焦っている……?
何かに心を奪われた感じと言ってもいい。
柊の中に決意があるのは分かる。
だが、今の決意ではない単なる焦りだ。
自分の弱さを自覚し、必死に強くなろうとしている。
それ自体は間違っていない。けれど……。
いや、そんな事を考えている暇はない。
そうこうしていると、
「さあ、行くわよ。覚悟しなさい……!!」
柊が訓練兵に攻撃を仕掛けた。
しかし、その攻撃は不発に終わる。
途中で柊が床に倒れたからだ。
「柊さん!! 司君、早くしないと……」
「ああ、分かってる」
俺は今度こそ柊に近寄ろうとする。
だが、また……。
「邪魔しないで、言ってるでしょ!!!!」
「……っ!! 柊……」
柊はふらふらになりながらも、立ち上がる。
また、細剣を構えなおす。
もう根気だけで戦っている状態だ。
これは訓練だ。
なのに、どうして柊は止めようとしない……?
『どうしても勝たないといけないの』
ふと、今日の朝言っていた言葉を思い出す。
詳しい事情は知らない。
だけど、柊には大きな目的があることに気が付いた。
それが柊として達成しなければいけないのだろう。
だから、今こうしてこんなにボロボロになってまで戦っているのか。
「柊さん!! もう止めてください!!」
「大丈夫……大丈夫だから」
柊は一歩ずつ訓練兵に近付き、そして細剣で攻撃を加えようとした。
だが、それより先に訓練兵が動いた。
「柊さん!!!!」
「……!!」
その瞬間、俺は柊の方へと走っていた。
柊が何をしようとしていたのか分かった。邪魔をしてほしくない気持ちも。
でも、俺は……。
柊を助けたい!!
「柊!!!!」
俺は瞬時に能力消滅剣を出し、訓練兵が柊に襲い掛かる前に訓練兵を貫いた。
何とか間に合った。
訓練兵の剣は柊の肌に触れる寸前だった。
俺の剣に貫かれた訓練兵はすぐに消え去った。
「司……」
気が抜けたのかそのまま柊は倒れてしまった。
「柊……無理するなよ」
俺は柊を支えながらそう言った。
それを見た七瀬は少し泣きそうになりながら近付いてきた。
七瀬も柊の事を本当に心配していたようだ。
「柊さんは……大丈夫なんですか……?」
「ああ。今は気を失っているだけだ。とにかく保健室に連れて行こう」
「そうですね……。行きましょうか」
七瀬は第五訓練場の扉を開ける。
俺は柊を背負いながら訓練場の外に出た。
そして、保健室へと向かった。
追記
明日こそ投稿します……。




