第十三話『問題児の苦悩』4
まさかこんな展開になろうとは……。
伊吹の案内の元、俺達は鶴川さんが使用しているチーム部屋の前まで足を運んでいた。
「ここだよ、司」
「へぇ~……ここが鶴川のチーム部屋か。やっぱり、どこかの誰かさんの部屋とは大違いだな」
「悪かったわね、大違いで!!」
俺の感想を聞いた柊が少し怒り気味に抗議の声を上げた。
そんなことで、拗ねられてもな……。
実際、柊の部屋と鶴川の部屋は月とスッポン並だ。柊の部屋は木製出来ているのに、鶴川の部屋は時代にあった素材を利用している。
見た感じ、しっかりとした自動ドアのようだ。普通ならそれが当たり前だとは思うが。
まあ、今はそんな事どうでもいい話だ。
今日は別に部屋の品定めをしに来たわけではない。鶴川に話があって来た。
つまり、こんな所で茶番をしている暇などないわけだ。
ただ、少し部屋の格差に驚きを覚えてしまった。
いや、だって柊の部屋工事したとはいえ相変わらずボロボロ何だぞ。
少し羨ましいと思うのは当然な事だろう……。って俺は誰に言い訳をしているんだ。
まだ、動揺しているのか、俺は。
まったく、俺は。調子に乗ってはいけないぞ、俺。
俺は再び心を引き締めると中に入る決心をする。
「じゃあ、俺から入るぞ。伊吹、いいよな?」
「うん、いいよ。でも、ノッ――――」
俺は許可をもらった瞬間、素早く自動ドアに触れて開放した。
ただ、伊吹の忠告を聞かないで。
「へっ?」
「えっ?」
俺は硬直した。もちろん、鶴川もだ。
これはまさか……俺は……。
こんな展開は予想だにしていなかった。
様々な漫画や小説だったらよくある展開だが、現実に存在していたのか……これは?
まあ、つまり結論を言うと……俺はどうやら鶴川の着替えを覗いてしまったらしい。
ようやく俺と鶴川は現実世界に戻ってくる。
そして、鶴川の顔を真っ赤に染め、
「このド変態問題児!!!!」
「ぐはっ!!」
俺は鶴川の渾身の蹴りを腹部に食らった。
その蹴りの痛みと衝撃で近くの壁まで吹き飛んだ。
そんな様子を見ていた伊吹達は急いで部屋の中を覗く。
「「「……!?」」」
伊吹は顔を隠しながら俺と同じように硬直し、柊と七瀬は顔を沸騰させるが如く真っ赤な表情になった。
そして、俺も伊吹達がそんな反応している理由を理解した。
先ほどの蹴りで着替え途中だった服が着崩れ、鶴川の体がありのままの体が出現しようとしていたからだ。
何だよ、これ。
俺はさすがに嫌気がさしてしまった。
もちろん、俺よりも一番最悪な気分になっているのは鶴川だが。
「ふっふっ……。あなたたち、覚悟出来ているわよね?」
怖い怖い……。本当に恐ろしいです、鶴川さん。
鶴川さんは盛大に右手を挙げた。そして、
「このド変態チーム!!!!」
この部屋に隣接している中庭には、盛大に叩かれる音が四、五回聞こえたらしい。
× × ×
「本当にすいませんでした!!」
鶴川が着替えが終わると、俺は速攻で土下座をした。
一応、俺の責任であるからこうするのは当たり前だ。
柊達も俺の様子見て覗いてしまったとはいえ、罪悪感を覚えているらしく本当に申し訳なそうな顔をしている。
まあ、それだけで許されるわけがないだろうけど。
その証拠に俺の前にいる少女、鶴川亜里沙は俺を全力で睨み付けている。
「俺が伊吹の忠告を聞かずに勝手に扉を開けたのは本当に悪いと思っている。だから、その後事故も全部俺の責任だ。責めるなら俺だけにしてくれ」
「意外と潔いのね……あなた」
俺の言葉に少し心を開いてくれたみたいだな。
よし、この調子でいけば俺も解放されるはずだ。
「まあ、俺は最強だからな」
「それは関係ないと思うけれど……そう。そこまで言うなら伊吹達は許す。だけど、あなたは許さない」
そう言って、笑顔で俺に特徴のある短剣を向ける。
確かこれは人に合わせて力を調節出来る優れものだったな……って冷静に解説している場合じゃない!!
「えっと……ここは俺も許す流れだろう? ここで、俺の潔さに感服して全て水に流すんじゃないのかよ!!」
「そんなわけないでしょ。私の着替えを覗いておいてよくもそんな事言えるわね……覚悟にしなさい。死なない程度に罰を与えるわ」
「ちょっちょっちょっと待て!! いやいやおかしい!! どうしてそうなる!?」
「うるさい、私の罰を黙って受け――――」
「鶴川さん!!」
俺の罰が確定しようとした瞬間、意外な人物によってそれは止められた。
「伊吹……でも」
「ごめんね、鶴川さん。確かに僕達は鶴川さんが傷付く行為をした。でも、これは司も言っていたけど一種の事故だよ。
お願いだから、許してほしい。この通りだよ」
「……!!」
伊吹は俺と同じように鶴川に土下座の体制に入った。
その驚きに鶴川の手から短剣が落ちる。
「もし、それでも駄目なら司の罰は僕が受ける」
最後に伊吹はそう言い、力強く土下座をした。
それを見た鶴川は驚きのあまり後退する。
「伊吹、本気なの?」
「うん、本気だよ」
「……」
その言葉を聞いた鶴川を少しの間口を閉ざした。
恐らく、鶴川の中で考え直しているのだろう。
すると、先ほどの気迫はどこかに消え入った声で、
「だって……私そういうのはいぶ……き……が最初……だって……決めて……いたから……」
「つっつっ鶴川さん!? いったい、今なんて!?」
今の言葉の意味を少し理解してしまった伊吹はつい聞き返してしまった。
そんな様子を見た鶴川は今自分が何を言ったのか理解するとより顔を真っ赤にして、
「ちっちっちっ違うのよ!! 今のはその……違うのよ」
「鶴川さん、その……」
「とにかく!! 全て許すから、今のは忘れて!!!!」
部屋に鳴り響く大きな声で鶴川はそう叫んだ。
少しの間の後、ようやく俺と柊と七瀬をそっと胸をなで下ろした。
そして、ようやく伊吹と鶴川もいつもの調子に戻り、
「えっと、なんかごめんね、鶴川さん」
「こちらこそ、ごめん。もう落ち着いたから大丈夫よ」
「もう一度、謝る。本当にすいませんでした」
「もう、いいわ。私も少しやり過ぎたわ」
俺の謝罪も鶴川は受け入れてくれた。
はぁ~……やっとだな。
まったく現実は上手くいかないものだな。まあ、全ては自業自得だが。
次から本当に気を付けよう。
俺は男として肝に免じたのだった。
漫画やライトノベル等でよくある展開を入れてしまって、何となく申し訳ないです。つい、勢いに任せて書いてしまいました。もし今度入れるとしたらもう少し上手に導入出来るように頑張ります。とりあえず、気を付けます……。




