第十三話『問題児の苦悩』2
「ふわぁ~眠みぃ……」
登校途中の俺は昨日の疲れがあり、欠伸を掻いていた。
祝勝会が終わった後、近くにある河川敷で夜遅くまで特訓をするのはさすがにまずかったか……。
俺は今更ながら後悔する。
なぜ昨日は夜遅くまで特訓した理由は特にない。
ただ、衝動的に特訓したいと思っただけだ。まあ、もちろん技の確認もしっかりと行ったけどな。
まあ、単純に言うと昨日のようなことが出来て嬉しかったのだ。
今すぐに特訓したいと思う気持ちはそれの表れかもしれない。
つまり、今の俺は生活に満足しているわけだ。
とは言っても、次このようなことをするのはだいぶ先になると思うが。
とりあえず、今は次の団体戦について考える事にする。
さて、もうすぐで学園だな。
最近はいつも通っているはずの通学路も少しずつ姿を変わってきている気がする。
まだ、五月というのに植物達は夏に突入にしようとしているらしい。
俺もさっさと夏休みを迎えたいものだが……まあ、仕方がない。
俺があれこれどうでもいいことを考えていると、
「……ん? 学園がやけに騒がしいな」
学園の門前で沢山の生徒達が集まっていることに気が付いた。
いつもなら門の前は閑散としているはずだが、いったいどうしたのだろうか……?
俺は様子が気になり、集まっている生徒達にぶつからない程度に近付いた。
すると、俺が近付いたそばに伊吹が立っていた。
「おはよう、伊吹」
「あっ、司。うん、おはよう」
俺の声に気が付いた伊吹はいつもの天使スマイルで俺を迎える。
「何でこんなに生徒がここに集まっているんだ?」
「えっ、司? 昨日、司が言っていたじゃん。今日は団体戦三回戦の対戦相手の発表があるって」
伊吹は俺のことを呆れたような表情でわけを話す。
そうか。そういえば、俺がそう言っていたな……。
まったく、自分で伝えておいてまさか忘れていたとは。やはり寝不足が原因か……?
まあ、いい。
でも、それにしては人が集まり過ぎている。
「なぁ、伊吹? 普通、団体戦の為にこんなに集まるものなのか?」
「う~ん……。確かに、そう言われればそうかもね」
「そうかもって……。もしかして伊吹が来た時にはすでに……」
「うん。この状況だったよ」
本気で言ってるのかよ……。
これじゃあ、学園内に入れないぞ。
それぐらいな程の異常な混み具合だ。
どうしようかな……まったく。
俺としてもこの状況は正直言って勘弁してほしい。
誰か状況を打開出来る奴はいないものだろうか。
そんな切なる願いを抱いていると、
「やあやあ、お二人とも。いったいどうしたのかな?」
「うわぁ~……。一番期待していない人が来たよ」
「僕も今は同感」
「ちょっと、さすがにそれは酷くない!? 今日はいつもと口調を変えてみたのに……」
俺達の前に現れた少女は皐月美花だ。
まあ、さすがに最低かもしれないがとても面倒くさい人だ。
今回は結構言い過ぎたか……。
おかげで皐月は俺達の言葉を聞いて少し不機嫌になっている。
とはいえ、謝罪して調子に乗られるのも癪なのでこのままいくとしよう。
「それは悪い悪い」
「まったく、相変わらずヒールっぷりね……。問題児は伊達じゃないわ」
「だから、問題児は関係ないって言ってるだろう。それで? 俺達に声を掛けたということは何かあるんだろう?」
「はいはい、話しますよ。少しくらい相手してくれたっていいのに……。えっと……まず今日は団体戦三回戦の対戦相手の発表日だということは分かってるわよね?」
俺と伊吹は当然だというくらい強く頷く。
「でも、団体戦だけでこんなに生徒が集まるのはおかしい……そして、このままで学園内には入れないんじゃないかと心配して悩んでいる……そういうことかしら?」
「ああ、そうだ。というか、よく分かったな」
「まあ、ね。話は続けるわ。実はというより司達なら知っていると思うけれど……この時期って神人のトーナメント戦があるわよね?」
そういえば、確かにこの時期は学園内の神人の中でトーナメント戦を開いていたな。
何となく、状況が少し理解出来た。
「じゃあ、もしかして……」
「もしかしてじゃなくてそうなんだけどね……。今日は団体戦三回戦と神人のトーナメント戦の組み合わせの発表があるのよ。たぶん、それでみんなここに集まっているんだと思う」
まあ、それはそうだよな。
団体戦じゃなければ、神人のトーナメント戦しかない。
こんな簡単なことに気が付かないなんてな。今日はやはり寝不足のせいで支障をきたしているかもしれない。
もちろん、全て自業自得なんだが。
「そうか、よく分かった。なぜ混んでいるのかは理解した。けれど、それより大事なことがある」
「そうだよ、僕らは対戦相手を確認したらすぐに教室に向かわないと……!!」
「あ~あ、それなら心配ないよ」
本当かよ。
俺が心の中で突っ込んでいると、
「お~い貴様ら!!」
「ああ、そういうことですか……」
皐月が言ったことは本当だったようだ。
そして校舎の奥から風紀委員長である瀬那先輩とその他風紀委員が歩いてくる。
「うん? これが原因か……まったく、姉さんめ。こんなところに掲示したらこんな風になるってことぐらい分かってるはずなんだが……。はぁ……」
掲示されたものを見た瀬那先輩は脱力したようにため息を吐いた。
今日もご苦労様です、瀬那先輩。
恐らく見えてないだろうがいつものお詫びついでに頭を下げておく。
「さっさと、校舎に入れ。もう、HR始まるぞ!!」
その言葉を聞いた生徒達は『嘘っ!? もう、そんな時間!?』『やべぇ……急いで移動しないと』などとぶつくさ言いながら颯爽のごとくそれぞれの教室に向かって走り始めた。
生徒達が入っていく様子を確認した瀬那先輩も校舎に戻っていった。
「さて、これで通れるようになったわね」
「瀬那先輩、凄いね……」
「そうだな」
「そうだ。今のうちに司達の対戦相手、見ておけば?」
皐月は校舎の方向へと向かおうとしながら、そう言う。
それもそうか。
俺は皐月の意見に乗っかることにした。
「じゃあ、時間もないが確認だけはしとくか……」
「うん、僕も知りたかったしね……」
俺と伊吹は対戦相手が書かれた掲示板を見つめる。
「「……!!」」
掲示板を見た瞬間、俺と伊吹は固まる。
その様子を見ていた皐月が、
「大丈夫? 急にどうしたの?」
「いや、ちょっとな。なっなっなぁ、伊吹?」
「うっうっうん!! そうだね、司」
「なんか、二人とも変だよ?」
「いや、全然そんな事ないから!! なぁ、伊吹?」
「そっそっそっそう!! 僕達、何もないから!!」
まずいまずい……これは本当にまずい!!
「怪しいな~……」
「さっさっさて、伊吹。さっさと教室行こうぜ?」
「うん!! そうしよう、司!!」
「あっ、ちょっと!!」
俺と伊吹は物凄い勢いでその場から退散した。
そういえば、そうだったよ……。
いつかは当たるとは分かっていた。
まさか……まさか、今回の対戦相手が伊吹が兼部している鶴川のチームだとはな……。
勘弁してくれ、本当に。




