第十二話『笑顔をみるために』6
私は間違っていない……私は間違っていない……。
何も間違っていないんだ……!! 神人に復讐するためには私は全てを犠牲にした。
だから私は正しい。
それなのになぜ私はこんなに動揺して怯えているんだ……?
たかが少年の言葉ごときで何を迷っている……。今までこうして過ごしてきたのだ。
誰も私を恨まないはずだ。そうだ、きっとそうだ。
「……私は間違っていない!!!!」
間違っていない。何度でも連呼してやる。
私は間違っていない間違っていない間違っていない間違っていない……。
その言葉の重みを今ここで証明してやろうじゃないか。ここの実験室で――。
「これが私の――――」
私は言葉を言い終わる前に驚愕の事実を知る。
「なぜだ? どうして実験室が壊されている?」
いや、落ち着くのだ。まだ実験室はほかにも……。
そう、この隣も――。
「……!? ここも……」
いや、まだだ。ほかにも私が正しいと示せる場所がある。
あるはず……だ。
私は全ての実験室を回った。
「私は……何も……間違っていない……はずだ……それなのに……なんだ……このありさまは……」
全ての実験室を何者かによって跡形もなく破壊されていた。
そんな……。なぜだなぜだなぜだなぜだ……どうしてだ……!!
やはり私は間違っていたのか……?
私はその場に頭を抱えてしまう。
「気が済んだかしら?」
「ひぃっ!!」
突如、恐ろしいほどに殺気に満ちた声が聞こえた。
私は恐る恐る後ろを振り返る。
「きっきっ貴様は何者だ!! 貴様が全て破壊したのか……!!」
「あら、当然でしょ? あなたはそれほどの罪を犯したのだから」
汗が尋常じゃないほど流れ、足がひどいほどに震える。
私は罪を犯した……? そんなそんな……嘘だ。
「そういえば、名前を言ってなかったわ。私は瀬那麻里。近くの学園の生徒会長をしてるの。まあ、そんなことはどうでもいいわ。
それよりも……私の妹をよくかわいがってくれたわね」
殺気に満ちた瀬那麻里という少女は私の顔に銃を向ける。
「なっなっ何のことだ、いったい……!?」
「そっか……。あなたは知らないのね……まあ、いいわ。どちらにせよ私の妹を傷付けたのには変わりがないからね。
さて、と。どこがいい?」
まさか、私はここで殺されるのか……。
「まっまっ待て!! 君は正気なのか!?」
「どこから撃たれたいかしら? 手かしら、それとも足かしら……」
「やっやっやっ止めてくれ!! 降参だ、もう君達に危害は加えない。だから――」
早く逃げなければ私は殺される……。
だがその場から立ち去ろうと思っても、足がすくんで動けない。
「私は別に謝ってほしいわけじゃないの、死んでほしいの。私の妹が傷付いた以上の苦しみと痛みを与えてあげる」
「くっくっ狂ってるぞ、そんなの!! お願いだから……勘弁……してくれ……」
銃弾がセットされる音がする。
「さあ、答えて。どこからいい?」
「……許して……くれ……一切関わらないから……命……だけは……」
「命だけ……? その言葉、私の妹の前で言えるのかしら!!」
「言う……謝罪する……しっかりと……頭を……下げる……だから……もう……止めてくれ」
「私ね、罪知らずの男が一番嫌いなの……だから私は許さない」
「本当に……勘弁……してくれ……してください……どうか……お助けを!!!!」
一瞬、銃が下がる。
だが、その少女の目は笑っていなかった。
「それがあなたの遺言ね……。娘さんには可哀想だけど、仕方がないわね。私を怒らせたのだから。死ぬ覚悟は出来た?」
「やめて……本当に……止めて……やめてくれれれぇぇぇ!!!!」
今までしてきたことがフラッシュバックする。
沢山の時間を要して、いつしかは人を神人をそして唄を傷付けるようになっていた。
やはりやはり、私は間違っていたんだ……。
でも、死にたくない……死にたくない。
私はまだ唄に謝ってないんだ。それなのにここで私は……。
情けない……涙が……。
「じゃあ、さよなら。死を償いなさい!!!!」
「いやだぁぁぁぁぁあぁああぁぁぁ!!!!」
「そこまでです、瀬那生徒会長!!」
すると、私が走ってきた通路から一人の少年と少女、そして唄が歩いてきた。
その少年の言葉で私の前にいた少女は今度こそ銃を下した。
「もう十分です」
「も~う、ギリギリで止めるつもりだったのに……」
「さすがにやり過ぎです。本当に殺すつもりかと思って焦りました」
「確かにやり過ぎたわ。ごめんね、司君」
「いえ、大丈夫です。とりあえず、そこをどいてもらいますか?」
「分かったわ」
私は気が動転していた。
その少年の指示で私の前にいた少女は移動する。
そして、少年が私に近付く。
「この施設は俺達が包囲した。だが、お前達を決して殺したりはしない。だからこれで終わりだ」
「少年よ……。私は間違っていたのか……?」
「ああ、お前は間違っていた」
「そうか……私はなぜ早く気が付かなかったのだろうか……まったく……」
私は大人でありながら大号泣してしまった。
涙は溢れんばかりに出てきた。
しばらくは止まらないかもしれない。
「本当に……すまない……唄……本当に……ごめんね……私は……」
「お父様……」
大切な娘を初めて失ってようやく気が付いた。
本当に私は駄目な父親だ。
「こんな……私を……許して……おくれ……」
「お父様、大好きです……」
「ありがとう、唄。私もだ……」
それなのに唄は笑ってくれた。
もうこんなことは二度としない……。
だから、しっかりと罪を償おう。
「私は罪を犯した。だから、それ相応の覚悟はもう出来ている」
「お父様、しっかりと罪を償って帰ってきてくださいね」
「ああ、分かってる」
唄と会話をした後、私に手錠が掛けられる。
私の計画、いや間違いはここでようやく無くなりそして解放感に包まれた。




