第十二話『笑顔をみるために』3
開発施設の門を過ぎても人の気配は全く感じられなかった。
一応俺達は周りを警戒しながら第一号車を降りた。他の第二号車、第三号車の人達もそれにつられて少しずつ降りていく。
「ここが……」
「はい、第四支部七瀬グループの開発施設です」
俺が少し呆気に取られていると七瀬が説明するように答えた。
もう一度辺りを見渡す。だが、やはり誰かがいる気配がない。
中にいるということか……? それにしても無防備だな。まあ、防御プログラムはあったが。
まるで俺達を招いているようだ。
「暁教官、どうしますか?」
「うむ……。あいつらは恐らく中にいるか裏から逃げているかだ。後者の方が可能性が高いと思うが中に居る事も考慮するべきだな。
となると……。全員、聞いてくれ!!」
暁教官は少しの間考えた後、俺達に呼び掛ける。
「第二号車と第三号車に乗っていた者はこの施設の裏に回って逃亡者の確保を。そして、第一号車に乗っていた我々はこのまま正面から入るぞ。……構わないな、司君?」
「はい、構いませんよ」
「他の者も構わないか?」
暁教官のお尋ねに柊達は頷く。
みんなの意思は変わらないようだ。
その様子を確認した暁教官はより真剣な表情になる。
「全員が私の案を呑んでくれることを感謝する。これだけは伝えておく。決して自分の命を投げ入れるような無理はしないでほしい。
それだけは肝に免じておいてくれ。では、作戦開始だ!!」
暁教官の指示されると全員動き始めた。
第二号車と第三号車の者は再び軍事用自動車に乗り、この開発施設の裏へと出発した。
残ったのは俺、柊、七瀬、瀬那生徒会長、暁教官だ。
「さて、我々も動くとしよう」
そう言い、暁教官は先頭を切って開発施設の中へと入る。
俺達も暁教官の背中を追った。
開発施設の中に入ると、沢山の機械とクローンの媒体で囲まれていた。
「まさかここまでとはね……」
柊は俺の隣でそんな感想を漏らした。
まあ、確かにこの監視用のモニターや開発用のマシンなど様々な機械でこの施設は成り立っているようだしな。
それにしても中々の内装だな……。
「詳しい事は分かりませんけど、クローンを作るためにはこれだけの機械が必要だったんでしょうね……」
柊の言葉を聞いていた七瀬は少し悲しそうに話した。
「ん? 分かれ道か?」
先頭を切っていた暁教官が歩みを止める。
奥を見ると確かに分かれ道だ。この施設は相当入り組んだ造りになっているらしい。
「これは二手に分かれた方がいいですね、暁教官」
「そうだな、私は左を行く。司君達は右をあたってくれ」
俺は暁教官の提案に少し驚く。
暁教官が一人で行くことを考えるなんてそれほど今回は重要なのだろう。
とはいえ、一人では危険だ。せめて二人だ。誰かが暁教官とご一緒しないと大変だろう。
そう思っていると、瀬那生徒会長が、
「待ってください。一人でさすがに危険です。私もお供します」
「瀬那君、いいのか? 私はこれでも幾多の戦場を歩いた身だ。一人でも別に構わんぞ」
「私が決めたことですので、変えるつもりありません。それにさすがのあなたでも一人で行くのは危険です」
「……そうか。そこまで言うのなら私が断る理由もないだろう。では、私についてきてくれ」
「はい、もちろんです」
「司君達は右を頼む」
俺達は強く頷いた。
「では、無事を祈るよ」
「はい、暁教官達も」
そんな会話を最後に交わし、俺達と暁教官達は目指す道へと進む。
今の所何も妨害されてはいない。
このまま本当に何もしてこないのだろうか。相手は諦めたのか……?
いや、それにしてはここの施設は稼働している。もし諦めているのなら情報を残すはずはない。
やはりどこかに罠が……。
そう思っていると、
「司、前!!」
「……!! ついに来たか……」
俺は能力粉砕剣を構える。
俺達の前には人型のロボットが立っていた。
まさかクローンだけでなくロボットまでも開発していたなんてな。
予想外だが、今はそんなことを呟いている暇はなさそうだ。
「来た……!!」
柊が俺達に呼び掛けるとロボットが俺達に向かって襲い掛かってきた。
「ここは私に任せて下さい!!」
七瀬がそう言うと、ロボット目掛けて銃弾を放った。
放たれた銃弾は瞬く間にロボットを貫きそして破壊した。
「さすが七瀬だな……」
「私だって伊達に二丁拳銃を使ってるわけじゃないですよ」
「ああ、そうだったな」
俺は七瀬の実力を再確認した後、ロボットの残骸を眺める。
これか。どうやらこのロボットも防御用プログラムが組み込まれていたようだ。
まだ、俺達に姿を見せないつもりか。
「先に進もう」
「ええ」
「はい」
俺達は再び走り出す。
辺りを見渡ししながら移動しているが怪しい場所はない。部屋もなく一方通行だ。
ここまで罠や仕掛けがないのどういうことだ……?
俺は前に進みながら考えているが答えは見つかりそうもない。
この施設の中については七瀬も知らない。いや七瀬に知らせていないのだろう。
だから今こうして疑心暗鬼になっている。
どうしたらいい、俺は……?
「くそっ……」
俺はついそう呟いてしまった。
「あの、あれは扉のようです」
「本当ね。確かに扉らしきものがあるわ」
今まで一本通路だった所にようやく部屋が現れる。
それにしてもこれだけの為にこんな通路を作ったのか。
余計に分からないな。
それだけの用途があるのかここは。
だとするなら……。
「入るぞ、いいな?」
俺は柊と七瀬に確認を取る。
二人は決心したように力強く頷く。
俺は疑問を持ちつつも扉を開ける。
扉の向こうには異常なまでも大規模な部屋が広がっていた。
「ここは……まさか実験室……」
「実験室ってことはまさか……」
いち早く気付いた七瀬が警戒しようとした瞬間。
俺達が入って来た通路が閉鎖される。
「しまった!!」
俺は急いで閉鎖を止めようとするが間に合わなかった。
これが目的か……。ようやく分かった。
すると奥の方から一人の男性が歩いてくる。
「お父様……」
「やぁ、唄。まさか私の計画を邪魔しようと思っていなかったよ……」
「七瀬は正しい選択したんだ。七瀬は間違っていない」
「ほう? 中々面白いことを言うね。まあ、そんなことをいい。それよりも理解はしているか? ここが実験室だということを……」
「ああ、元々ここに誘導するつもりだったんだろう? だから今までの通路に人を置かなかった、そうだろう?」
「まあ、そんなことだ。もちろん、一種の賭けではあったがね。だがその賭けには成功したようだ」
七瀬博は俺達を眺めると、指を鳴らす。
指の音によって彼の後ろからぞろぞろ人間いやクローンがやってきた。
「さあ、神人を復讐するための糧になってもらうよ」




