第十二話『笑顔をみるために』1
「さて、これからどうするの?」
柊は細剣を手入れしながら口を開いた。
俺達は闘技場の床に座りながら、これからの事を考えていた。
「そうですね……」
七瀬は柊の質問に困った表情を見せる。
これからどうしようか……。
とりあえず、七瀬は俺達のことを信用してくれた。それだけでも嬉しい限りだ。
だが、問題は終わったわけじゃない。
今回の事件に七瀬は関わっていた。でも、七瀬は関わっていたが主犯ではないはずだ。
なぜなら七瀬には動揺や迷いがあったからだ。自分の行いに罪悪感を感じていたからと言えばそれまでだが、もしそうだとしても一人で計画を動かしていた可能性は低い。
そう考えるなら犯人は他にいるという事になる。
「ねぇ、司? …………司!!」
「うおっ!? 何だ、柊」
どうやら俺は深く考えすぎていたようだ。
「何だじゃないわよ、まったく。それでこれからどうするの?」
「そうだな……まずは七瀬に確認したい事がある」
「……? 私にですか?」
七瀬は少し驚いたように俺を見る。
「ああ。確認したい事はこの学園の神人が襲われたこと、神庭町にある店の爆発のことだ。七瀬、これはお前一人で行ったことか?」
「それはその……」
七瀬は口ごもる。まあ、言いたくない気持ちも分からなくはないけどな。
「頼む、七瀬。これは重要な事なんだ」
「そこまで言うならお話しします。司君の言っていた二つの事件は私一人では行っていません。私は主に監視が仕事でしたから」
「どうして七瀬が監視をしたの?」
「それはもちろん計画を予定通り行うためです。監視はもし計画が崩れないようにの保険ようなものです」
「そうか。話を少し戻すがこの二つの事件は七瀬だけで行ったものではないんだよな。じゃあ、七瀬のほかにいったい誰が計画に加担していたんだ?」
まあ、これはあらかた予想は付いているが。
「恐らく気付いていたと思いますが、神の作り手です。といっても主に私達のグループですが」
「まあ、確かに柊から聞いていたけどな。念の為だ」
「話を続けますね。私達、第四支部七瀬グループの目的は神人の復讐です。その為の実験を今まで数々の場所で行ってきました。そしてようやく神人に復讐できる日がやってきました。けれどもそれは私にとって予想だにしてなかったことでした」
「予想していなかった……?」
「はい。私達いえ私はこの目的の本性を知りませんでした。私だけが気付いていなかったのです。本当の目的は神人を復讐するのではありません。神人のクローンを作り出すことです」
「クローン!? どうしてそんなものを作るのよ……」
「決まっているじゃないですか。もちろん、力を得る為ですよ。結局私達のグループも利用されているだけの存在なのです。でも、七瀬グループはそれを承知で実験を行っていたのですから何も言えません……」
「なるほどな……。でも、一つ分からないことがある」
「分からないことですか?」
「どうして七瀬は知らなかったのか、いや知ることが出来なかったんだ?」
その点は俺の中で話を聞きながらずっと引っ掛かっていた。
七瀬の話を聞く限りでは七瀬以外は本当の目的、計画を知っていた。それも一切抵抗することなく。
では、どうして七瀬だけが……?
理由は簡単だ。誰かが七瀬に情報が流れないように口止めしていたか、または七瀬だけには嘘の情報を流したかだ。
この答えが今回の事件の鍵だろう。
「なあ、七瀬。この質問に答えてくれ、頼む」
「……お父様です」
「お父様……?」
「お父様はなるべく私を巻き込まないように取り組んでくれました。このことを打ち明けたのもお父様です。そして、今回の主犯者が私の父七瀬博です」
七瀬は辛そうな表情で言った。
「悪いな、七瀬。お前にとって心苦しいことなのにわざわざ説明させてしまって」
「いいんです。私はもう決めましたから。一人の娘としてお父様を救おうと」
「七瀬……」
「私は司君と柊さんを信じていますから!!」
俺と柊に向かって七瀬は笑った。
「そうとなればやる事は決まりね!!」
柊はやる気に満ちた表情で立ち上がる。
俺と七瀬も決意したように力強く立ち上がった。
「ああ!! そうと決まれば……七瀬、案内頼めるな?」
「構いませんけど……歩きだと大分時間を掛かりますよ」
「そのことについては問題ない。そうですよね、瀬那生徒会長!!」
俺は闘技場の入り口に向かって大声で生徒会長を呼んだ。
すると、闘技場の扉が大きく開かれた。
「ええ。サポートなら私達、生徒会と風紀委員に任せなさい!!」
扉の外には瀬那生徒会長だけではなく、他の生徒会のメンバーと風紀委員がいた。
全員、俺達に喜んで協力してくれた者だ。
「なあ、問題ないだろう?」
「はい!!」
七瀬は安堵の表情を浮かべる。
「さあ、待ってろ。必ずそんなくだらない計画、ぶっ壊してやるからな!!」
俺は空に向かってそう誓った。




