第一話『最強と最弱』5
いよいよ初の戦闘です。まあ、上手に書けてるかどうか不安ですが……。
放課後、第一訓練場にて。
俺は瀬那先輩が用意した場所に移動していた。
まあ、瀬那先輩が生徒会長等にお願いして使用できるようになったんだけどな。
ちなみに、俺は空腹の中、ここに立っている。
「なあ、柊? やっぱり止めないか?」
正直、早く食事をしたい。
俺の頭の中はほとんどそれで埋まっていた。
もちろん、柊が分かってくれるはずはないが。
「何よ、今更!! ここまで来たら、勝負するに決まってるでしょ!!」
「まあ、柊ならそう言うと思ったが。本当にいいのか?」
俺は本当に最後の忠告をする。
今なら、まだ引き返せるしな。
それに早く食事にありつけるし。
「いいわよ。私が勝つから」
「そうか……。なら、しょうがないな」
どうやら、柊は揺らがないみたいだな。
「お前たち、準備は整ったか?」
何やら、色々と手続をして疲れている瀬那先輩が俺たちに確認する。
確か、今日は……神人のクラスの奴らがここで練習する予定だった。
別の場所は今日は使えないらしくここ、第一訓練場しかなかったのだ。
それを、瀬那先輩何とか神人達を説得し、ようやく使えるようになったらしい。
お疲れ様です、瀬那先輩。
「俺は大丈夫ですよ。まあ、自分の剣を使えないのは正直残念ですけど……」
「贅沢を言うな……。この剣でも相当扱いやすいものだと思うのだが」
それはあながち間違っていない。
いつもの訓練用に支給される銅剣に比べたら、桁違いだ。
この剣は模擬戦用の剣だし、まあ悪くない。
俺は一度剣を振ってみる。
自分の剣には到底及ばないが、そこそこ力が発揮出来そうだ。
でも、今回はすぐに終わらせるつもりでいるけどな。
柊も模擬戦用の細剣を振っている。
「私も大丈夫です。これなら全然問題ないです」
どうやら、柊も準備万端みたいだ。
「準備は整ったみたいだな。じゃあ、ルールを説明する。いつもなら、三試合して先に二回勝利した方が勝ちなんだが……今回はどちらが一回勝利した時点でそこで模擬戦を終了する」
実技試験の模擬戦も三試合制で二回勝利した方の、勝ちになっている。
まあ、今回は時間がないのも理由だろう。
ただでさえ、無理を押し切って模擬戦をしようとしているのだから。
瀬那先輩の説明はまだ続く。
「技に関してだが、相手を殺すような技、物質を壊すような技は禁止だ。ただし、打撲程度の技なら許可する。勝敗は……どちらかが技を使えなくなるか、戦えなくなるかで決める。とまあ……こんな感じだが、二人とも大丈夫か?」
俺と柊は頷く。
さて、始めますか……。
「では、二人とも配置につけ」
俺と柊は所定の位置につく。
普段なら、こういう模擬戦は盛り上がるものだ。
だが、今ここいるのは俺と柊、そして瀬那先輩の三人だ。
当然、歓声が上がる事はない。
まあ、俺は別に構わないが。取り敢えず、勝つしかないしな。
俺は剣を構える。
それを見かねて、柊も細剣を構える。
「それでは、始め!!」
瀬那先輩の宣言により、模擬戦の開始だ。
とはいえ、すぐに終わるがな。
「ほら、来いよ」
俺は挑発ついでにそう言う。
柊はそう挑発されて、動かないわけがない。
「人間が……よくも私を!!」
まあ、当然そうなるよな。
柊は猛スピードで、俺に襲い掛かってくる。
さすが、神人。
普通の人間なら、到底追い付けないな。
でもな……。
「えっ。消えた……?」
柊は辺りを見渡す。
俺に気付く頃にはもう模擬戦は終わっている。
人間を舐めるなよ……。
「嘘……まさか、後ろ!!」
そう気づいた時にはもう遅い。
キィィィン……。
剣の鈍い音が辺りに鳴り響く。
俺は柊の細剣をはじき、柊の首に衝撃を与え、
「悪いな。これで、終わりだ」
俺は最後に強くそう言う。
「そ……ん……な」
柊は最後に悔しそうな表情を見せながら、地面に倒れて行った。
この模擬戦の時間はわずか、一分ちょっとで決着がついた。
「まったく……。勝者、涼風司」
少し呆れながらも、瀬那先輩は模擬戦終了の合図をする。
「さすが、自称最強と言うだけはあるな……」
「先輩、もう俺帰っていいですか?」
正直、もう何か食べないと本当に死ぬ。
俺は瀬那先輩にお願いをする。
「ああ、構わない」
「ありがとうございます」
俺は第一訓練場を去ろうとする。
「待ちなさい……」
俺の事を睨みながら、柊は俺に声を掛ける。
はぁ~……。面倒くさいな、まったく。
「何だよ?」
「どうして、人間であるあなたが、神人である私に勝てるの?」
何だよ、そんな事か。まあ、いいか。
「言っただろ、俺は最強だって」
俺は捨て台詞を言い、その場を去っていく。
「ちょっと!! まだ……」
柊はまだ話があったみたいだが、俺は無視しその場を立ち去った。
ああ~。お腹が空いたな……。
これで、第一話は終了ですが、いかがでしたか? 大体、一話五つから七つぐらいでこれからも出したいと思います。ここまで読んで下さった方々、本当に感謝しています。次回からは第二話です。