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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第二章 加入編
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第十話『思いが交差するとき』2

「…………」

 溜め息をすることさえ許されない様なこの静寂。

誰ひとり口を開こうとしなかった。

 放課後、いつも通り練習する前に柊の部屋に集まったものだが今日は誰も行動を起こそうとしなかった。

柊は少し疲れた表情をし、七瀬は心配そうな表情を浮かべ、伊吹は状況が呑み込めず困惑している。あまり良いムードではない。

もちろん、俺も悪いムードを作っている原因になっている。俺も今朝の件の事が気になって仕方が無いのだ。

 自分では分からないが、恐らく相当慌てた表情をしているのはずだ。

 とにかく、このムードのまま訓練をするのは言語道断なのは言わなくても分かるだろう。

今も誰かが口を開く気配がない。

 仕方が無い、俺がこれを断ち切るしかないな……。

俺はそう思いつつ、柊達に呼び掛けた。

「あのさあ、今日はその……訓練は止めにしないか?」

 俺の提案に柊達が頷いた。

どうやら柊達も同じ気持ちだったようだ。

「私、今日あまり気持ちが乗らないし良い提案だと思うわよ」

「私も同感です」

「うん、僕も」

 柊がそう言うと、七瀬と伊吹が口を揃えて言った。

 とりあえず、今日はしょうがないな。

俺は心の中でそう呟いた。

「じゃあ、今日は解散だな……」

 俺はそう言い、席を立ちあがる。

 さて、俺はあいつらの襲撃を阻止しなければ……。

俺には重要な仕事があるのだ。柊や伊吹を巻き込まない為にも、これは必ず成功しなければいけない。

 俺は心の中で誓った。町の人達を守る、と。

「私、帰るわね」

「ああ、気をつけてな」

「言われなくても、大丈夫よ」

 俺より先、柊が部屋から出て行こうとする。

すると、ふいに部屋の扉が廊下側から開く。

「どうした、みんな? 今日はなんだか大変そうだな……」

 廊下から入って来たのは瀬那先輩だった。

珍しく今日は仕事がなかったのだろうか、少し嬉しそうな表情をしている。

 今朝の事で心配だったが、もう大丈夫そうだ。

とはいえ、俺たちの状況を見てとても喜べる状況ではないと気付き心配そうに俺達を見ている。

「今日は訓練に支障をきたすかもしれないので、訓練は中止にすることにしました」

 俺は一応瀬那先輩に説明をする。

瀬那先輩はそんな様子を聞いて、深く頷いていた。

「確かに今の状態では危険かもな。よし、私も許可するよ」

「ありがとうございます、瀬那先輩」

 瀬那先輩の許可必要だったんですね……。

俺は内心そう思いながら、瀬那先輩にねぎらいの言葉を伝えた。

「それでは、瀬那先輩。後で」

「ああ、後でな」

 俺は今朝の件の事を確認し、お辞儀をした。

そして、部屋から退室をしようとした。

 だが、今度は違う人物に止められる。

「司君!! お願いがあります」

 七瀬だ。

 俺は急に言われたので驚いたが冷静に対応する。

「ああ、何だ?」

 俺がそう聞くと七瀬はしおらしい態度を見せ、

「私と……その…………デート……してください……!!」

「「「「…………」」」」

 先ほど百八十度いや三百六十度違う静寂辺りを漂う。

えっ……今、なんて言ったんだこいつ?

 いや、聞いてはいるけどさ。

「すまん、もう一度言ってくれないか?」

「だから、私とデートしてください!!」

「「「「ええぇぇぇぇ!!!!」」」」

 七瀬を除いた全員が驚いた。

おいおい、本気ですか?

 俺は大混乱だ。伊吹も同じ様子だ。

「ちょっと七瀬!! あなた、どういうつもりなの!?」

 最初にこの沈黙を破ったのは意外にも柊だった。

顔を真っ赤にして七瀬に対して怒りぎみで言っている。

「どういうつもりってそのままの意味ですけど……もしかして、柊さん焼きもちやいているんですか?」

「ちっちっちっ違うわよ!!!! どっどっどうしてこんなくそ問題児に焼きもちやかなきゃいけないのよ!!」

「おい、いつもよりも悪口が酷いぞ」

「うっうるさい!! 事実でしょうが!! とにかく、勝手にそんな事しないで……!! だってあなたは……」

「ほら、やっぱり焼きもちやいてるじゃないですか」

 柊の最後の言葉を遮るように、七瀬が再びそう呟くと柊が悔しそうに黙り込んだ。

七瀬がその様子を確認すると俺の方を見る。

「どうですか? 今日とデートしてください!!」

「……とてもありがたい話だが、俺には用事がある。今日は勘弁してくれ」

 俺は勇気を振り絞って七瀬のデートを断った。

こんな可愛い女の子のお誘いを断るのは、男として情けないが今そんなことをしている場合じゃないのだ。

 だから、七瀬今日だけは……。

 俺の必死な表情が伝わったのか、少し考える素振りをした。

「別に近場でも構いませんよ。たとえば……神庭かみば町とかどうですか?」

「……!! 神庭町か……」

 七瀬の言葉に俺は動揺する。それは話を聞いていた瀬那先輩も同様だった。

 俺は深く考える。

これはある意味チャンスかもしれない。七瀬が何者なのかを確かめる絶好の機会かもしれない。

それに場所は神庭町だ。元々、俺が向かう場所だ。

 俺は瀬那先輩に視線で確認を取る。それを受け取った瀬那先輩は頷いた。

これならデートしてみるか……。

 まあ、そんな考え方も男としてどうかと思うが。

「どうですか? 駄目ですか、司君」

「分かった、七瀬。今すぐ行くぞ」

「本当ですか!? ありがとうございます……!!」

「ちょっと司!! 何をするつもりなのよ!!」

 七瀬は深々とお辞儀をする一方で、柊は何かにとりつかれたように俺を説得しようとしている。

まあ、確かに柊としては訳が分からない事だよな……。

「すまん、これは大事な事なんだ……」

「大事な事って……。そう、ならいいわ」

 柊は諦めたようにその場を去って行った。

「ちょっと待ってよ、柊さん!!」

 伊吹は柊を追って部屋を出て行った。

瀬那先輩もそれを見兼ねて俺に「頼んだぞ」と言い、廊下に移動していった。

 ついには残ったのは俺と七瀬だけになってしまった。

あの件がなければ幸せな事なんだが、今そういうわけにもいかない。

「じゃあ、行くか」

「はい、司君!!」

 俺と七瀬も部屋を後にした。

頼む……七瀬、勘違いであってくれよ。

 心の中でそう実現することををその時の俺は願っていた。

 大変投稿が遅れてしまいました……。本当にすいませんでした。

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