第九話『信頼と迷い』4
「ふぅ……お腹いっぱい」
「伊織、さすがに食べ過ぎよ……」
満足そうに伊織は自分の椅子に座り込む。
どれだけ食事を抜いてたのよ……。
私はもう呆れるしかない。食堂から帰って来た途端これだもんね。
まあ、伊織だから仕方が無い。多少の苦労は我慢しよう。
「まあ、一日料理を口にしてなかったからね……」
「一日!? 少し自分の事を心配しなさい」
「次から気を付けるよ……」
そう答えると、伊織は近くに置いてあった水を飲む。
私も気分を落ち着かせる為に、水を飲んだ。
うん。透き通っていて綺麗な水はやっぱり違うわね。ってそんな事より……。
「ねぇ、伊織? 今度こそ頼みたい事が……」
「ああ、さっき言ってたやつね。いいよ、聞く」
たらふく食べたからか、先ほどより口調が元気そうね。
伊織は私に優しい笑みを向ける。
これなら、頼めそうね……。
「あの、これなんだけど……」
私は手の中にあった欠片を伊織を見せた。
伊織が興味深そうに欠片を眺めている。そして、真剣な眼差しで私を見た。
「これ、どこで見つけたの?」
「えっ? 女神学園だけど……」
「成実が通っている学園でね……。どうしてこんなものが……」
伊織は先ほどよりも強く欠片を凝視している。
そんなに大事な物なの、これは?
もし、そうだとしたらどうしてそれを七瀬が持ってるのよ……。
私には想像がつかなかった。
しばらく伊織が私の欠片を見た後、パソコンに視線を移した。
何やら、調べているみたいだ。
「もしかして、これを知ってるの?」
「分からない……けど、心当たりはある」
私の質問に伊織は答えながら、検索を続ける。
それから数秒後。
「あったわ……」
「見つかったの!?」
「ええ、これを見て」
伊織は私にパソコンの画面を見せた。
何やら七瀬が持っていた円盤の説明が書かれていた。
「浮遊型訓練機……浮遊円盤。制作会社は神の作り手……」
私は気になり口に出して読んでいた。
「神の作り手……名前くらいは知ってるよね?」
「ええ。確か最先端医療や最先端の施設など生み出している会社よね……」
「表向きは、だけどね」
「えっ!? 表向きなの……?」
伊織は強く頷いた。
まさか、この会社と七瀬が関係しているっていうの……?
私の驚いた様子を見た伊織は再びパソコンに視線を落とした。
「あんまり、ここには侵入したくないけど……仕方が無いわ。成実に真実を教えてあげる」
そう言うと、伊織はキーボードを素早く打ち始めた。
私は気になり、伊織のパソコンを覗いた。
「……!! あなた、何をしてるのよ!?」
「言ったでしょ、侵入って。……前より侵入が難しくなっているわね……」
伊織は少し難しいそうな顔をする。
天才プログラマーである伊織でさえ、侵入が難しいなんて……。いったい、何を隠しているの……?
私は伊織が神の作り手のサイトに侵入する瞬間まで固唾をのんで見守った。
「……よし、これで最後ね!!」
伊織は大きくエンターキーに向かって指で押した。
すると、プロテクターがあったサイトが開く。
私はパソコンの画面に表示されたものに目を見開いた。
「……何なのよ、これ」
最先端医療や最先端の施設の開発なんて嘘じゃない……。
そこに書いてあったのは、神人を超える力の開発……そして神人を虐殺するための兵器開発だった。
私は落ち着いていられなかった。
「今すぐ、中止させないと!!」
「待って!! 落ち着いて、成実一人じゃ無理よ……」
伊織に止められ、私は少し冷静になる。
「そうね、一人では無理ね……」
これが真実なんて私は認めたくなかった。そんな感情が私を死に走らせようとしたのだろう。
伊織がいて良かったと今強く思った。
「これで、分かった? 神の作り手は一種のテロリスト集団なの。既に私達の学園がサイバー攻撃で襲われているわ……」
「……!! そんな事があったなんて……。でも、どうして公表されないのよ」
「それは権力よ」
「権力……!!」
伊織は悲しそうにそう語った。
権力や武力を神人を超える為に利用しているのね……。
くっ。どうして私は何も出来ないの……?
私は今の自分の不甲斐なさに嘆いた。
「私たちの学園は攻撃されただけで済んだけど……成実の学園はもしかしたら……いえ、今は変な事を考えるのは止めるわ。とにかく、成実が持っているその欠片は一種の爆弾よ」
「これはそんなに危険な物なの……?」
「ええ。ちょっと待って……」
私の質問を答えた後、伊織はとある支部のページをクリックした。
「あったわ。これは……成実?」
私は言葉を失った。
……嘘よ……どうして……七瀬がそこに映ってるのよ……。
神の作り手第四支部……七瀬グループ。そう書かれていた。
そして、七瀬の顔がそこに映っていた。




