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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第二章 加入編
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第八話『思惑の中で』3

「イテテテ……。ちょっとやり過ぎたわ」

 あれから模擬戦を四、五回したけれど戦闘兵に全てコテンパンにやられてしまった。

自分でも情けない話だと思う。しかも怪我をしてしまうなんて……。

「はぁ……ついてないわね……」

 私は怪我した場所を治療しながら、独りで呟いていた。

まさか、ここまで戦闘プログラムがしっかりとしていたとは思わなかった。

 完全に油断していた。あいつが私には二体で充分だと言った理由が分かった。

一対一はまだしも、二対一の状況に追い込まれたとき今の私では対処出来ないかもしれない。

 あいつはそれさえも見越して私に教えていたと言う事なの……。

本当に私は驚きっぱなしだ。

「さて、そろそろ大丈夫ね」

 怪我をした場所が完全に回復したのを確認し、立ち上がる。

あのプログラムも容赦ない。自分の利き手の感覚が無くなる程、私に攻撃してきたのだから。

今では全然大丈夫だけど、少し危険な気がする。

 まあ、ある程度は調節出来ると思うけど。

 とにかく、せめて後一回は模擬戦をしたいわね。

私は細剣レイピアを構え直す。

「今度こそは……」

 一言ぼそっと口にし、戦闘プログラムを作動させようと瞬間。不意に第一訓練場の扉が開く。

「ひゃいい!! 急いで片付けます!!」

 まずい、鬼教官が来てしまったかも……。

 たまに時間を過ぎると、鬼教官が来て罰を与えられる。その罰が過酷過酷でしょうがない。

私はそれを免れようと、言葉を口にしたが噛んでしまう。片付けの動作もめちゃくちゃだ。

 もう、これじゃあ罰が……。

そんな風に心配していたが、すぐにそんな心配は吹き飛ぶ。

「あら、柊さん。おはようございます」

「……って。あれ?」

 第一訓練場に入って来たのは昨日私たちのチームに加入した七瀬だった。

 私は力が抜けたように安心する。

もう、変な心配させないでよ……。今度からしっかり周りを見よう。

 それにしても、七瀬も私よりは遅いとしても普通の生徒よりは大分お早い登校ね。

 今日は何やら随分な荷物を抱えている。

大分重そうに見えるが、七瀬は平然と抱えている。ああ見えて結構鍛えるのかもしれない。

「どうしたんですか? 私の顔をそんなまじまじと見つめて」

「えっ? あ、ごめん」

 どうやらあまりの荷物に視線が七瀬の方にガッツリ行っていたらしい。

七瀬は少し困った表情をしている。

 そういえば、神人の事を恨んでいるんだっけ……。

昔何があったかは知らないけど、迷惑になるんだったら私は去った方が良いかもしれない。

 基本、訓練場は次の人が来たら交代しなければいけないしね。

「私、もう訓練を終えるからどうぞ使っていいわよ」

「そうですか、ありがとうございます」

 私は七瀬に声を掛け、片付けを始める。

七瀬はそれと反対に訓練を準備する。

 荷物の中身は何だろう……?

私は片付けをしながら、荷物の方へ視線を向ける。七瀬が荷物から取り出したのは数十枚の円盤状の形をしたものだ。

「それ、いったい何に使うの?」

 私はその円盤の様なものが気になり、つい七瀬に尋ねてしまった。

「これは射撃用の的です」

 七瀬は私の方は見ないものの、答えてくれた。

てっきり私の事なんて無視するかと思ったけれど、どうやらそうではないらしい。

「そう、的なんだね」

「はい。良かったら、見ていきます?」

 今度は私の方を見て、七瀬は聞いて来た。

今日は機嫌でもいいのだろうか。気になるしせっかくだから、見る事にする。

 私は頷いた。

 それを見た七瀬は数十枚の円盤状を上へ向かって投げる。

投げられたものは本当に円盤の様な動きをする。

 なるほど、これでいつも訓練してるのね。中々面白い訓練道具だと思った。

「じゃあ、行きますね」

 七瀬はそう呟き、二丁拳銃ツインライフルを構える。

そしてその拳銃から銃弾が放たれる。

「……!! 凄い……」

 一瞬で全ての的を撃ち抜いてしまった。

 あいつが七瀬は凄いって言っていたが、まさかここまでとは。

私は感嘆の声を漏らしていた。

 今回の転校生は今までとは一味いや二味も違う。

 でも、撃ち抜いてしまった的はどうなるんだろう……?

そう思っていたが、それは杞憂だった。

 木端微塵に撃ち抜かれたはずの的が全て何事もなかったように修復したのだ。

「あなた、中々凄い訓練してるのね……」

「そうですか? 私にとってはこれが普通ですが……?」

「そっそうなんだ……」

 今の言葉は結構心に来たわね。私も負けてられないわ。

「ちょっと一枚借りていい?」

「えっ? どうしてですか?」

「いいから、お願いよ」

「何がしたいのかは分かりませんが、そこまで言うのなら……どうぞ」

 七瀬は渋々私に貸してくれた。

「ありがとう、七瀬」

 私はお礼を言い、円盤状の的を受け取る。

そして、七瀬と同じように上へと投げた。

「あの、これ射撃用ですからね……」

「うん、分かってる」

 一つだけ試したい事がある。

私はそれをしたいだけだ。精神を集中させる。

 よし、やってみよう。

「おりゃあぁぁぁぁ!!!!」

 私は的目掛けて、技――星光斬りホーリースラッシュを放った。

空中に居る相手でもこの技が通用するかどうかを確かめる為だ。

 七瀬は私の方を見ている。少しは私に興味を持ってくれたらしい。

後は当たってくれれば……。

「あれ……避けた?」

 私の技が当たり前のように円盤状の的に避けられた。

まさかこれ避けるの……?

 それを見ていた七瀬は呆れたような表情している。

「だから、言ったじゃないですか。これは射撃用だって」

「うん、ごめん」

 少し気分が落ちてしまった。

 的にまで避けられるのだから、戦闘の時には使い物にはならないだろう。

私は本当にまだまだなんだな……。

「とりあえず、返すわ」

 私は七瀬に返した。

 はぁ……。

何だろう、この気分。そう感じていると、聞き覚えのあるアナウンスが流れる。

『まもなくHRホームルームの時間です。生徒の皆さんは各教室に移動してください』

 どうやら、終わりのようだ。

「もう、全然練習出来ませんでした……誰かさんのせいで」

「悪かったわね!! 私のせいで」

 嫌味っぽく七瀬が言ってきたので、つい言い返してしまった。

私はそれっきり七瀬を無視して、片付けに入った。

 七瀬も片付けを始める。

本当に何だろう……この気分。変な予感がしたのだ。

 まあ、今はそんな事気にしている場合じゃないけど。

私は何となくやるせない気分になりながら、片付けを終わらせ訓練場を去った。



 

 

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