第七話『問題児好きの少女』5
また二日置きになってしまいました……。何度もすいません。
「はぁはぁ……」
「さすがに、今日のは応えたわ……」
「僕、もう限界だよ……」
「みなさん、大丈夫ですか?」
俺たちは以前訓練の内容をもう少しハードなものにした訓練をし、疲れ果てていた。
さすがに、あれ以上お掃除ロボットの速度を上げるべきではなかったか。
最近の課題はとにかく基礎体力だ。体力が戦闘でもやはり重要視される。柊や伊吹には長時間の戦いになった時の為に、体力作りをしてもらっている。
だが、最近少し飽きつつあったので、そのカンフル剤としてこれをしたのだが……。
「さすがに、これは無理があったな」
「そうよ、やり過ぎよ……」
俺の意見を聞きながら、柊は俺に対して少し怒り気味で言う。
伊吹は言葉を発する余裕もないようだ。
俺も伊吹と同じように、言葉を失いかけていた。
「本当に大丈夫ですか?」
俺たちが疲れて果てている中、一人だけ平然と立っている七瀬は俺たちに水を差し出す。
水を受け取ると、俺たちはすぐに飲み干した。
少し気が楽になった。水のありがたさが改めて分かった気がする。
「それにしても、七瀬は凄いわね……」
「そうですか? 私にとっては普通ですが」
柊が七瀬に感嘆の言葉を発すると、七瀬は淡々と答えた。
それを聞いた柊は呆気にとられている。
「私にとって意外だと思ったのは、神人なのに体力無い事ですね」
「ぐっ……それは事実だから否定出来ないわ……」
七瀬に痛い所を突かれて、柊は渋い顔をしている。
確かに、柊は神人の割には体力が劣っている。
それも最弱と呼ばれている理由の一つかもしれない。
それに比べ、七瀬はとんでもない程の体力だ。
限界が無いんじゃないかと思う位一切疲れた様子を見せない。
敵だったら、絶対に戦いたくない相手だ。
「まあ、気にするな。柊は、神人の中で最弱だから」
「なっ……!! なんで、その事言うのよ!!」
「なるほど!! 納得しました」
「七瀬も勝手に納得しないで!! と言うか、少しぐらい否定しなさいよ!!」
「でも、事実ですよね?」
「それは……そうだけど」
七瀬に再び痛い所を突かれ、柊は黙り込む。
そして、俺を強く睨んだ。
俺は一応頭を下げておく。
すると、少し顔を染めて柊はそっぽを向いた。
案外、純粋だな。俺はそう思った。
とりあえず、少しは七瀬も柊たちと馴染めたっぽいな。
じゃあ、そろそろ終わりにするか。
そう思いながら、訓練場に掛かっている時計を見ると下校時間を過ぎていた。
「やばっ!! 早く、帰ろう!!」
「えっ!? もう、こんな時間なの!?」
「早く帰ろう……」
俺と柊はほとんど同時に驚いていた。
伊吹は今にも倒れそうな声でそう言った。
帰りは一緒に帰った方が良いかもな。
今日使ったものを片付けなければ……。
「皆さん、もう帰っていいですよ」
俺が色々と考えていると、七瀬がそう言った。
「いいのか、七瀬?」
「はい、今日はありがとうございました。後は、私でやっておきますから」
そこまで言うのなら仕方がない。
あまり良い気持ちはしないが、ここは七瀬に任せよう。
「じゃあ、悪いな。片付け、よろしくな。柊、伊吹行くぞ」
「分かったわ。ありがとうね、七瀬」
「別に構いませんよ」
柊と伊吹は軽く頭を下げ、俺と共に訓練場を去った。
最初は少し不安だったが、とてもいい奴だな。
その時の俺はそう思った。
× × ×
「これで、最後ですね」
私――七瀬唄は司君たちの片付けをしていた。
今日使ったものをまとめた箱を上に乗せる。
少し重いけど、これぐらいなら大丈夫そうだ。
「よいしょっと……。ようやくですね……」
自分でやると言ったものの、結構時間が掛かってしまった。
早く帰らないと、さすがにまずいですね……。
下校時間はとっくに過ぎている。
私は鞄を持ち、倉庫から出る。
誰もいないようだ。さっさと、帰ろう。
私がそこを去ろうすると、
「何をしてるんだい?」
後ろから声がした。
私は恐る恐る後ろを振り向くと、優しそうな顔をした食堂のおばさんがいた。
確か、蒼さんと呼ばれていた気がする。
見た感じだと、怒っている様子はなくむしろ私を心配している様子だ。
「すいません。片付けをしていたら、こんな時間になっちゃいました」
「いいんだよ、謝らなくて。とりあえず、校門まで送るからついてきな」
「あっ、はい」
私は言われるがままに、蒼さんについていく。
見上げると、もう日が沈んでいた。
待たせてるかな……お父様。
私は少し心配になる。
「そういえば、あんたは昨日来たばかりの転校生の一人でしょ?」
「はい、そうです」
蒼さんの質問に私は答えた。
すると、私に白い歯を見せて笑った。
「そうかい。見たよ、転校生実力披露会。凄い射撃よね、本当に」
「ありがとうございます」
私はお礼を蒼さんに言った。
何やら私の事を知りたいようだ。
「ご存じだとは思いますが、私は七瀬唄と申します」
「七瀬唄……うん、覚えたわ」
蒼さんはまた私にとびっきりの笑顔を見せる。
今は日が沈んでいるせいで少ししか見えないが、それでもその笑顔は輝いていた。
少し蒼さんが人気な理由が分かった。
「なら、唄ちゃんって呼んでいいかしら?」
「唄ちゃんですか……?」
嬉しそうに蒼さんは頷く。
唄ちゃんなんて呼ばれた事がなかったから、何だか新鮮な気分だ。
特に嫌な所は見つからない。
「別に構いませんよ」
「そう、ありがとうね。私は気に入った女の子にはちゃん付けで呼ぶの」
「そうなんですね……」
「さて、楽しい話も終わりみたいね」
前を見ると校門前で来ていた。
私としても結構楽しい一時を過ごせた。
「じゃあ、私は……おや?」
蒼さんは校門前に誰かがいるのに気付いたみたいだ。
そこに居る人はこちらに近付いてくる。
蒼さんは少し警戒する。
私を守っている。だが、それは杞憂に終わる。
その人の顔をはっきりと見える。
「心配したよ、唄」
「お父様!!」
「何だい、お迎えかい?」
「はい、ここまでありがとうございました」
お父様も私に合わせてお辞儀をする。
私よりも数十センチ高いお父様は私の横で笑みを見せた。
「すいません、うちの娘がご迷惑をお掛けしました」
「礼なんて要らないさ。とても楽しい話が出来たからね」
そう言って、私に向けて微笑む。
私もそれに笑顔で返す。
「それでは、私はこれで。じゃあね、唄ちゃん」
「はい、さよなら」
蒼さんは私に挨拶をしてその場から去って行く。
「さて、私たちも帰ろうか」
「はい、お父様」
私はお父様と一緒に銀色の車に乗る。
運転席には執事さんがいた。
「待たせたな、出発してくれ」
「かしこまりました」
お父様の指示を聞いた執事さんは車を発車させる。
走っている途中で見える並木道が少し感慨深い。
「それにしても、お父様」
「ん? どうした、唄?」
「お父様はもう少し普通の気配が出せないのですか。あの人も少し警戒してましたよ」
私は顔を少し膨らませながら、そう口にした。
すると、お父様は笑い私の頭を撫でた。
「すまんな。次から気を付けるよ」
「はい、そうしてください」
お父様は手を頭から離した。
すると、少し真剣な表情をする。
「どうだ、この学園は?」
私はその一言で例の計画を差している事が分かった。
そう、私はその計画の為にこの学園に転校してきたのだ。
今までもそうして転校してきた。
けれど、それは今回で終わりそうだ。
「はい、丁度良い適任者を見つけました」
「そうか。ついに見つけたんだな」
そう言い、再びお父様は私の頭を撫でる。
「偉いぞ、唄」
「ありがとうございます、お父様」
「ようやく計画を実行する事が出来る。必ず神人に復讐するぞ」
「はい、お父様」
全ては私たちを傷付けた神人に仕返しをするため。
その為に利用させてもらいますよ…………涼風司君。
私はそっと微笑んだ。
これにて、第七話終了です。次回は第八話です。これからもよろしくお願いします!!




