第七話『問題児好きの少女』4
放課後。俺は七瀬と一緒に今日の訓練場所である第七訓練場に向かっていた。
柊と伊吹もそこにいるだろう。瀬那先輩は転校生の件で精一杯らしいので、今日は来ない。
本当なら、瀬那先輩がいる状態で七瀬を紹介したかったが仕方がない。まあ、瀬那先輩とは顔を会わせているからいいか。
「あの、司君?」
「ん? どうした、七瀬」
俺と一緒に歩いている七瀬は何か聞きたい事があるらしい。
「司君のチームってどんな感じですか?」
「どんな感じか……そうだな……」
俺は少し言葉に詰まってしまう。
俺たちのチームは結成してからまだ一か月しか経っていない。柊ともだいぶ打ち解けたが、それでもまだ分からない事が多い。
だから、完全に理解しているわけではない。
七瀬が聞きたいのも分かるが、ここはあえて見てもらった方が良いだろう。
「それは見たら、分かるさ」
「見たらわかるですか……なら、早く見たいです!! どんな問題児がいるのか、楽しみです!!」
「いやいや、誰もいないし俺が問題児みたいな言い方をするなよ」
「そうですか?」
「そうだ。俺は問題児ではない」
そんな表情で尋ねられても困るな。
少し不安になってしまう。
二人で会話しながら歩いていると、目的の場所に到着する。
ここの第七訓練場は他の場所と比べて遠い場所にあるため、少し時間がかかる。
少し柊と伊吹を待たせているかもしれない。
「あっ、ここですね!!」
「ああ。じゃあ、入るぞ」
俺は淡々と答えた後、第七訓練場の扉を開ける。
中には既に訓練を始めている柊と伊吹がいた。
「司、遅いよ!!」
「すまん、伊吹」
俺の姿に気付いた伊吹が俺に声を掛ける。
それに俺も答える。
俺の声が聞こえたのに気付き、柊は伊吹と一緒に近付いてくる。
「相変わらず、遅いわね。まあ、いいけど。それより、隣にいるのは誰なの?」
柊は隣にいる七瀬を見ながら、俺に尋ねる。
七瀬も柊をじっと見つめている。
だが、その目は俺を見ていた目をとは違っていた。
「ああ、こいつはこの学園に転校してきた七瀬唄だ。今日から俺たちのチームに入る事になった」
俺は七瀬を柊と伊吹に紹介する。
それを聞いた二人は、少し笑顔になる。やはり、自分のチームに加入してくれるのは誰でも嬉しい事か。
これで、四人だからな。だいぶ試合が楽になるだろう。
「そうなんだ。よろしくね、七瀬」
柊が七瀬に握手を求める。
恐らく、良い友達になるはずだ。
俺はそう思っていたのだが……。
バチン!!
「なっ……!!」
「気安く握手なんて求めないで下さい、神人」
七瀬は柊の握手を強く払い、そして先ほどまでの様子とは違い憎しみがこもった言葉を口にした。
もしかしてたら、七瀬は神人の事が嫌いなのかもしれない。
先ほど、柊をじっと見ていたのはそういう理由か。
七瀬は柊とは反対なのかもしれない。
それにしても、急に敵対心をむき出しにするとは思っていなかった。
柊も何をされたのか一瞬戸惑っていた。
柊の隣にいる伊吹も相当驚いている。
「急に何するのよ!!」
当然、柊は怒り出す。
その様子を見て、七瀬はさらに睨み付ける。
それを見た柊がここで収まるわけがない。
柊が拳を握ろうとしている。
「おい、柊落ち着け」
「でも!!」
「お願いだから、落ち着いてくれ」
「…………分かったわ」
俺の必死の願いで、何とか柊は落ち着く。
それにしても、七瀬はどういうつもりなのだろうか。
わざわざこんな事して、いったい何になるんだ。
「七瀬、お前が神人にどのような恨みがあるかは知らないが、柊は神人でもいい奴で、悪い奴じゃない。だから、謝ってくれ」
俺は七瀬にそう言う。
それを聞いた七瀬は少し表情が元に戻る。
「司君が言うなら、謝ります。ごめんなさい、取り乱しました」
七瀬は柊に頭を下げる。
そして、笑顔を向ける。どうやら、何とかなったようだ。
「今は柊さんの事を信じます」
今はか……。
その言葉は柊にとっては痛いものだろう。
柊も同じような気持ちを俺に持っていた時期があったしな。
「そう……でも、私はあなたに何もしないから」
柊は真剣な表情で、七瀬に思いを伝えた。
七瀬はそれに頷く。
俺はそっと胸を撫で下ろした。
「そうですか。一応もう一度自己紹介しますね。私は七瀬唄。武器は銃を使っています」
「銃使いなら、大歓迎だわ。私は柊成実。細剣が私の武器よ」
「えっと……僕は伊吹雫。槍使いだよ」
「じゃあ、改めて二人ともお願いしますね柊さんと伊吹さん」
一通り無事に自己紹介を終える。
とりあえず、先ほどの七瀬に戻っているので安心している。
柊としっかり打ち解けてくれればいいのだが……。
まあ、今はどうしようない。
「これで、自己紹介は終わりだな。これからよろしくな、七瀬」
「はい!!」
俺の挨拶に、七瀬は笑顔で答える。
何か七瀬には裏があるかもしれないな。
でも、七瀬が俺のチームに加入してきたくれたのは大収穫だ。
嬉しいのには変わりがない。ただ、変な違和感があるのを除いて。
今は考えても仕方が無いな。
俺はみんなに声を掛ける。
「じゃあ、今日の訓練始めるか!!」
「そうね、いい加減再開したいわ」
「僕も」
「それでは、頑張りましょう!!」
みんなで気合いを入れ、今日の訓練を開始した。




