第七話『問題児好きの少女』2
「大丈夫、司?」
瀬那先輩に朝から銃でぼこぼこにされた俺はHR後、疲れた果てていた。
俺の前にいる伊吹雫は俺の事を今日も心配している。そして、今日も女神のような笑顔は健在だ。
「ありがとうな、伊吹。お前のおかげで、何とか頑張れそうだ」
「うんうん、いつもの事だから別にいいよ。それにしても、今日は散々だったね……」
伊吹は少し俺を哀れな目でそう言った。
まあ、それも仕方がない。
俺が教室に入った時、俺がボロボロな姿をみんな見て驚いてたからな。
日に日に、瀬那先輩の罰が酷くなっているような気がする。もう、出来れば受けたくない。
「瀬那先輩、容赦ないからな。まったく、俺の身が持たないよ」
また後で、風紀委員室に来いって言われてしまったから本当に最悪だ。
「まあ、瀬那先輩も転校生の件で忙しいからしょうがないよ」
そういえば、もうそんな時期か。
今年の転校生はいったいどんな奴か、楽しみだ。
今までと違い、今年は二人らしい。それほど、今回は力を入れているのだろう。
風紀委員や生徒会は大忙しだろうな。まあだからって、俺に八つ当たりするのをいかがなものだが。
「はぁ……最悪だ」
「まあまあ、そう言わずに」
「そうだよ、問題児君。元気に行きましょうよ」
気付けば、隣に皐月美花がいた。
「今日はいったい何の用だ?」
俺は少し面倒くさそうに聞いた。
すると、皐月は少しため息を吐き、質問に答える。
「相変わらずつれない奴だね、君は。次の時間、何があるか分かってる?」
「転入生による実力披露会だろう? それがどうしたんだ?」
今日は転入生による実力を披露するものが開かれる。
あくまで、これからの参考にする為らしい。
俺も少し参考にするつもりだ。特に今年はな。
俺が色々と考えながら、皐月に答えると皐月が目を見開いている。
「うん? どうした?」
「いや、いつもは興味なさそうに答えるから。少し意外だなと思って」
「そうか? 俺はいつも通りだが」
「じゃあ、どうして私が来た理由分かるよね?」
皐月が俺に顔を近づけながら、答えを要求してくる。
どこかに答えがあったか……。
俺には残念ながら、答えが思い浮かばない。
俺は視線で伊吹に尋ねるが、伊吹も首を横に振った。
その様子を見た皐月は少し頬を膨らませる。
「もう、私を誰だと思ってるの?」
「あっ。もしかして、今日もVIPルームに行っていいのか?」
「ええ。私の特別な部屋にね」
皐月は少し威張りながらそう言った。
そういえば、皐月は相当なお金持ちだったな。
お金の面で考えれば、友達になって良かったかもしれない。まあ、成り行きでなったって言ってもおかしくない。
「でも、僕たちばかりいいの?」
伊吹は申し訳なそうに尋ねる。
結構控えめな伊吹にとってはそう尋ねるのも無理ない。
だが、そんな心配を吹き飛ばすかのように皐月は笑顔で答えた。
「別に大丈夫よ、雫ちゃん。あなたたちだから招待するの、私は」
「そっか。ありがとう、皐月さん」
伊吹は今日も眩しい笑顔を皐月に向けた。
やっぱり伊吹は可愛いな。
皐月も少しうっとりしている。
『もうすぐ、転入生による実力披露会が始まります。生徒は速やかに闘技場に移動してください』
俺たちが話をしていると、アナウンスが聞こえた。
「さて、そろそろ行きましょうか」
「ああ、そうだな」
「うん、行こう」
俺と伊吹は席を立ち、皐月と一緒にVIPルームへと移動した。
× × ×
「相変わらず凄いね……ここ」
「ああ、そうだな」
これで、VIPルームに来るのは三回目になるのだがまだこの豪華な雰囲気に慣れない。
伊吹も同じようで二回も来ているのに、まるで初めてこの部屋に来たように辺りを見渡している。
「お二人とも、早く座りなさいよ」
皐月はいつものように素早く座りながら、俺と伊吹に呼びかけた。
まあ、いつまでもこれじゃいけないよな。
俺と伊吹は席に座った。
今日もここからの眺めは最高だ。闘技場の様子が良く見える。
闘技場を見ると、俺達とは異なる制服を着た人たちがいる。
ちょうど、女子一人と男子一人に分かれている。
どうやら、そろそろ始まるようだ。
「今回はどちらも銃使いか」
俺は闘技場を見ながら、そう呟く。
見た様子だと、どちらも銃使いだ。
女子の方は二丁拳銃、男子の方は狙撃銃のようだ。
俺たちのチームには銃使いがいないから、よく見ておかないとな……。
俺はそう思いつつ、開始を待った。
「始まるわよ」
皐月がそう言うと、闘技場の空中に的が沢山出現する。さらに的が動き始める。
狙撃銃使いの方が狙撃を始める。
フォームが綺麗だな、よく訓練している。
「男子から先みたいだね」
伊吹の呟きに頷きながら、その男子を見る。
彼の銃弾はきれいに的の中央に当たる。
一つではない、ほとんどの的が真ん中を射る。
とても正確な射撃だ。あそこまで狙撃を見たのは初めてだ。
ふっ、今年は面白そうだな。
俺がそんな感想を抱いている内に、全ての的が粉々になる。
「今年はレベルが高いわね」
「ああ、そうだな」
「僕、驚いたよ」
その男子は闘技場に居る生徒たちにお辞儀をし、闘技場から退散していく。
さて、次は二丁拳銃使いの方か。
再び、沢山の的が出現する。
二丁拳銃は比較的扱いにくい銃の一つだ。
それをどう活用するか、楽しみだ。
「始まったわよ……? えっ?」
再び皐月がそう言おうとした瞬間、とんでもない事が起きる。
銃を手にした女子が少し動いて撃っただけで、全ての的がボロボロになった。
その時間は一秒にも満たないだろうか。
あんな短時間でか……? 俺には何とか見えたが、銃を何回も回転させていた。だが、凄い使い手だな……。
俺だけでなく、伊吹や皐月また他の生徒たちも言葉を失っていた。
その女子は男子と同じようにお辞儀をした。
そして、去ろうとした瞬間。
えっ? 俺を見ている……?
その女子は去り際に俺の方向を見て、笑顔を向けた。
まさか、俺が見えるのか。だいぶ距離が離れているはずなのに。
笑顔を向けた後、銃をしまい去って行った。
「どうしたの、司?」
俺がだいぶ唖然としていたのか、伊吹が心配そうに聞いてくる。
「ああ、大丈夫だ。何でもない」
それにしても、あんな事は初めてだ。
だが、その驚きが徐々に興奮に変わる。
面白い、ぜひ戦ってみたいものだ。
「今年は楽しくなりそうだ……」
俺は未だに唖然とした生徒たちがいる闘技場を見ながら、そう呟いた。




