第六話『最強と最凶』6
「…………う~ん……」
少しずつ視界が開いてくる。
白い天井、そして純白のカーテンが見える。
そうか、ここかは保健室か。
でも、どうして俺が保健室にいるんだ。
「うわ、眩しい」
少し疑問に思っていると、眩しい程の太陽の光が入ってくる。
どうやら、俺は朝までぐっすりと寝ていたようだ。
視界がはっきりとしてくる。すると、
「えっ、柊?」
俺の視界に疲れて椅子で寝ている柊を映る。
ちょうど、光が当たり柊が輝いて見えた。
まさか、柊が俺を運んできたのか。俺の為にか……。
俺はベッドから起き上がる。さて、どうするかな。
柊が起きるまで待つしかないな……。
俺がそんな風に悩んでいると、柊が目を覚ます。
「……ふあぁ~……良く寝たわ。…………ひゃっ!!」
俺の姿が視界に入ると、柊は飛び上がるように立ち上がる。
驚き過ぎだろう、こいつ。
「おい、驚き過ぎだ。それに、よだれ出てるぞ」
「……!! よっよっ余計なお世話よ、問題児!!」
「問題児は関係ないだろうが」
「うるさい!! それより、私の寝顔を見た?」
柊は俺に少し不機嫌気味に聞いてくる。
そんな事、言われてもな……返答に困るな。
正直に言うか。
「すまん、五秒程見てた」
「ごっごっ五秒も!? ……問題児」
「だから、問題児は関係ないだろう」
「問題児なのは変わりないでしょ!! ……まあ、いいわ。とにかく、目が覚めて良かった」
俺に大振りなツッコミをかましながら、柊はほっとした表情を見せる。
そして、柊は笑顔を俺に向ける。
こういう時の柊はとても輝いて見えるな。
俺はそう思いつつ、柊に尋ねる。
「まさか、柊がここまで連れて来てくれたのか?」
「そんなわけないじゃない。瀬那先輩や風紀委員にも手伝ってもらったわよ」
「そうか……。でも、俺の看病してくれたのはお前だろう?」
「わざわざ私に言わせるの!? …………そっそっそうよ!! 何か、悪いかしら!!」
顔を熟したリンゴ以上に真っ赤にしながら、柊は答えた。
やっぱり柊は優しいんだな。改めて分かった気がする。
なら、俺は感謝を言うまでだ。
「ありがとうな、柊」
「……!! どっどっどっどうして、あなたがお礼を言うのよ!?」
「……? そんなの、決まってるだろう。俺はお前に感謝してるからだ」
俺がありのままの気持ちを伝えると、柊は顔を手で隠す。
本当に柊は感謝されるのが、苦手なんだな。
いつもは堅苦しい所があるが、こういう所はしっかり少女のようだ。
神人も悪くないもの、持ってるじゃないか……。
それにしても、いつまで顔を隠してるんだ。
「柊、大丈夫か?」
「ひゃい!! だっ大丈夫よ!! 全然、何とも思ってないから!!」
「はいはい、分かったよ。でも、本当にありがとうな」
「……何度も言わないでよ……まったく。私こそ、助けてくれてありがとう」
「ああ、どういたしまして」
俺と柊は、感謝の言葉をそれぞれ言った。
これで、もう今回は終わりと言う事だ。
「ねぇ、司?」
「何だ、柊?」
柊は俺に何か聞きたい事があるようだ。
そういえば、今日いや昨日話があるって言ってたな。
俺も少し気を引き締める。
「三年前、私を助けてくれたの……あなたでしょ?」
唐突に柊は俺にそんな事をぶつけてきた。
何だ、それか……。やっと気が付いたのか……。
そんな過去の事なんて気にする必要はないと思うが。
まあ、いい。
「……もし、そうだとしたらどうするんだ?」
「それはもちろん、お礼をしっかりと言うわよ」
「お礼はさっき言ったからいいだろう」
「でも、それとこれは……」
「あのな、柊。今更、過去の事を聞いてどうする? それに、お前だから別に救ったわけじゃないぞ。お前みたいな、か弱い女の子がほっとけなかっただけだ」
「かっかっか弱い!? ……さすが、問題児の言う事は違うわね」
そんなに問題児問題児って連呼するなよ。
俺も少し気にしてるんだからさ。
まあ、でもこれでいいか。
過去は過去。今は今だ。そんなものを背負っていては戦闘は出来ない。
今が一番大事だ。俺はそう思う。
「もし、どうしても俺にお礼したかったら…………俺へのお礼は俺に勝つという事で」
俺がそうきっぱり言うと、柊は口をぽかんと開けている。
そんなに変な事、言ったか?
柊はため息を吐き、口を開く。
「何だか、真面目に聞いてるこっちが馬鹿馬鹿しく思えてきたわ。ええ、分かったわ。あなたなんて、すぐにコテンパンにしてやるわ!!」
「おう、待ってるぞ!!」
俺と柊はどちらも宣戦布告をし、そして笑った。
だいぶ柊とは仲良くなれた気がする。柊も人間を見直したかもしれない。
人間と神人でも似ているところはある。
それを考えれば、チームで一緒に戦うのも案外悪くないかもしれない。
「さて、俺も立つか」
そう言い、俺はベッドから立ち上がる。
長い時間寝たから、少し身体がなまった気がする。
でも、すぐに直るだろう。
瀬那先輩や伊吹たちに会わないとな。
俺がそう思っていると、コンコンと扉をノックした音が聞こえた。
「私だ。柊、入るぞ」
「ええ、どうぞ」
どうやら、瀬那先輩のようだ。
柊がそう答えると、すぐに扉が開く。
「やっと、起きたか……この問題児め」
元気な俺を見つけると、お馴染みのフレーズを瀬那先輩は言った。
隣には伊吹がいるみたいだ。
「どうも、瀬那先輩。それにいぶ」
「司!!!! うぅぅ……心配したよ……本当に……」
「おいおい、泣くなよ」
俺が瀬那先輩に挨拶し、伊吹にも挨拶をしようとすると、伊吹が泣きながら俺に飛びついて来た。
泣いている顔もやっぱり可愛いな。
本当に惚れそうになる。まさか、ここまで心配していたとは。
俺も感激だ。本当に嬉しい。
「だってだって本当に心配だったんだもん!! もし、司がこのまま目覚めなかったと思うと…………ぐすん」
「ありがとうな、伊吹。こんなに心配してくれて。だが、もう大丈夫だ。この通り、ピンピンしてるから」
「うん!! そうだね!!」
伊吹は涙を拭い、天使いや女神のような笑顔をした。
俺も伊吹に笑顔で返す。
「とりあえず、これで本当に終わりだな……。よし、司」
伊吹が俺から離れた後、瀬那先輩は俺に銃口を向ける。
えっ? 何で?
まさか……。
「私の言いたい事、分かるか? なあ、司?」
「さっさっさあ? いったい何の事でしょうね?」
俺は何とか誤魔化そうとする。
しかし……カチャ。
まずい、また撃たれる。
「ほう……。準備はいいか、司?」
「いっいっいやいや!! 俺、怪我人ですよ!? ……ちょっ勘弁……」
「問答無用、この問題児が!!」
「ぎゃあぁぁぁ!!!!」
また今日も朝から最悪な一日が始まった。
はぁ……理不尽だ……。
いよいよ次回が第一章最終話です!! 後、ブックマークをして下さった方々本当にありがとうございます!!




