第六話『最強と最凶』4
「あなた……どうして、ここに?」
柊は目に涙を浮かべながら、俺に聞いてくる。
普通ならあり得ない状況での救い。まさに、奇跡というやつだ。
それが今起きて柊は困惑でもしているのだろう。もしかして、あの時状況になっているかもしれない。
まあ、そんな事考えてる場合じゃないな。
「そんなの決まってるだろう……お前を助けるためだ」
俺は当然のように答えた。
くっ。やっぱり荒井先輩の力、尋常じゃない。この剣で支えるのが精いっぱいだ。
青葉の言っていた通り、いつもの荒井先輩じゃない。
力の限りを尽くして、俺はようやく荒井先輩の攻撃を弾く。
「さすがは……涼風君だね……良い実験が出来そうだ」
これぐらいじゃ動揺はしないか……。
荒井先輩は俺に攻撃を弾かれても、涼しい表情をしている。
まだ、余裕があるのだろう。
「あなた、血出てるじゃない……」
「ちょっとかすっただけだ。これぐらい大した事ない」
確かに、少し俺の右手の手首近くが傷が付き、血が流れている。
これは、まずいな。一回、引いた方が良いかもしれない。
でも、柊も怪我をしているようだ。どうする……?
「どうしたんだい? 仕掛け来ないのか、涼風君? なら、こちらから行くよ!!」
当然、荒井先輩が待ってくれるはずもなく、俺に再び攻撃を仕掛けてきた。
ぐっ。さっきの響いているのか……力が出ない。
まずい、押される……。柊を庇いきれない……。
そう思った瞬間、
「聖なる安らぎ――キュア!!」
柊が回復魔法を発動させる。
力が元に戻ってる。俺の回復魔法よりも回復量が多い。
さすが、神人だな。
「おりゃぁぁ!!!!」
俺は再び荒井先輩の攻撃を弾き返す。
これなら、何とかなるな……。
「くっ。やるね……さすがだ。面白くなってきた……これだ!! 僕はこれを求めていたのだ!!」
まるで何か支配されたかのように、そう言い笑い出す。
俺と柊はその間に立ち上がる。
「ありがとうな、柊」
「別に、これぐらい気にしないで」
俺は柊に礼を言い、辺りを見渡す。
でも、ここでは戦うの厳しいだろう。
戦うのには狭すぎる。俺たちも荒井先輩もここから出る方法が何かないか……。
うん? あれは何の粉だ……。まさか、小麦粉か……?
そういえば、今回勝利したチームは何か貰えると聞いていたが、小麦粉だったとは……。
まあ、今はそんな事言ってる場合じゃない。
あれを使うしかない……。
「さあ、実験を続けよう!!」
「残念ですが、一度実験を中止させてもらいますよ!!」
俺はそう言い、小麦粉を上に投げそして剣で切った。
その瞬間、小麦粉が宙を舞う。
「ん? いったい、何をした?」
「あれ、荒井先輩? 知らないんですか、この粉が宙を舞っている時何が起こるか……」
「……!! まさか!!」
「そう、そういう事ですよ」
荒井先輩は、俺の言葉を理解し初めての動揺を見せる。
普通なら、あり得ない現象を今起こすのだから……。
俺は不敵に笑う。柊は全く理解していないようだが。
「柊、悪い」
「えっえっ? 何、してるの? どっどっどうしてお姫様だっこなの?」
俺は柊をお姫様だっこする。とても恥ずかしい事ではあるが、止むを得ない。
これなら、柊は巻き込まれない。
柊は今の状況に対応できていないらしいが。まあ、恥ずかしいからだよな。顔が赤いな……。
そんなに赤くなる必要あるか、普通。
とにかく、もう仕掛ける。
「悪い、お前の部屋無くなるかもしれない……」
「……!! それはどういう」
俺は一応柊に謝り、魔法の準備をする。
柊に教えてもらった魔法、ここで使わせて貰うぞ。
心の中でそう言う。
「さあ、先輩行きますよ。粉塵爆発という現象をね!!」
「……!! くそっ」
「炎の霧――ファイアミスト!!」
俺は火系魔法を発動させ、そして粉塵爆発を起こす。
俺は柊を担ぎ、急いでその部屋から逃げる。そして、一瞬にして大きな爆発が起こった。
× × ×
「さて、ここまで来れば大丈夫か……」
「いっいっいいから!! 私を下しなさい!!」
「おっ。すまん」
何とか、あの爆発から逃げ出した俺は真っ赤に顔を染めた柊を下した。
場所は学園の保健室まで移動出来た。
とりあえず、大丈夫そうだな。
途中、柊が落ちそうになって焦ったが。
「どっどっどうして、お姫様だっこなのよ!!!!」
「そんな、怒らないでもいいだろう……。それは持ちやすかったからだ」
「そういう問題じゃないわよ!! …………もういいわ。それより、助けてくれてありがとう」
少し申し訳なそうに、柊は俺に言う。
そうか、こいつお礼言うの苦手だったな。
まあ、でもまだその言葉は言われるべきではない。
「おいおい、まだ終わってないぞ。そういうのは全てが終わってからにしろよ」
「……!! わっわっ分かってるわよ!! そんな事は!!」
「大丈夫か? まだ、落ち着かないか?」
「別に……大丈夫よ」
そう言いながら、柊はそっぽを向く。
全然大丈夫じゃないだろう……。俺は少し心配になる。
まあ、柊も女の子だからしょうがないか。
「それで、これからどうするの?」
「その事だが、俺はもう一度荒井先輩を会ってくる」
「……!! 本気なの……!?」
俺は頷く。
確かに、今の荒井先輩は未知数だ。あれだけ余裕だ、まだ何か能力があるだろう。
「それに、荒井先輩はもう……」
「そんなわけあるか。荒井先輩は生きてるよ。今の先輩は瞬間移動が使えるはずだろう」
「どうして、あなたが知ってるの?」
「ちょっとな……」
俺は誤魔化すように頭を掻いた。
あまりこれも他の人に知られたくないからな。
「深くは聞かないわ。あなたの言う通りだとしたら、どこかにまだいるはずだわ」
柊は俺に深追いせず、流してくれた。
さて、考えると恐らくそんな遠くに移動したわけではないだろう。
あの、粉塵爆発で少しは動揺したはずだ。
まだ、学園内にいる。荒井先輩は外には逃げていない。
「そうだな……。なあ、柊? 荒井先輩がどこにいるか分からないか? 確か、瞬間移動した場所には必ず魔力が残るはずだったよな」
俺は知識を総動員して、柊に尋ねる。
それを聞いた柊は口をぽかんと開いている。
「まさか……そこまで知ってるなんて……。あなたいったい何者?」
柊は言葉を失いそうになるほど、驚いていた。
「そんな事、今はいいだろう。それよりも、分かるか?」
「不可能ではないわ」
「なら、頼む」
「分かったわ」
俺の頼みを聞き入れ、柊は目を閉じる。
それが、魔力検査というやつか。実際に見るのはこれが初めてだな。
数十秒後、柊が目を開ける。
「どうだ? 分かったか?」
「ええ、場所は闘技場よ……」
やっぱりそこになるか……。
俺自身、予想していたがまさか当たるとはな。
まあ、これで場所は分かったから一安心だ。
「ありがとうな、柊」
「……いいわよ、これぐらい」
「さて、じゃあ俺は行くわ」
「えっ? 行くってまさか本当に!?」
「当たり前だ」
俺はそう言いながら、立ち上がる。
これは俺の役目でもあるしな。
次で終止符を打つ、必ず。
「だったら、私も……!!」
「駄目だ」
「……!!」
「お前は、ここにいろ。俺が片づけてくる」
ここなら、負傷した柊も少しは回復するだろう。
それに、柊は巻き込みたくない。
柊は行きたそうにしている。
だけど、柊を行かせるわけにいかない……。
「悪いな、これは俺の問題でもあるんだ」
「あなたの問題?」
「ああ。だから、俺は行く」
俺は最後にそう言い、歩き出す。
すると、俺の裾を柊は引っ張る。
「何だよ? まだ、何かあるのか?」
「ちゃんと無事に帰ってきなさいよ……」
「ふっ、愚問だぞ。俺は最強だから、そんな事心配すんな。でも、ありがとうな」
俺は柊の言葉を聞き、礼を言った。
何か柊に色々と助けて貰ってるな、俺。
そう思いながら、闘技場へと歩き出した。
後で大分修正するかもしれません。
追記
もう修正しました。大分修正と書いた割には意外と修正してません。




