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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第一章 結成編
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第六話『最強と最凶』1

 団体戦一回戦最終日。無事、俺たちは荒井先輩のチームに勝利し二回戦へと駒を進める事が出来た。

そして、ようやく一息入れられる。俺のいつもの日常が帰ってくるのだ。

 俺にとってそれはどれだけ嬉しい事か……。

「俺は自由を手にしたんだ!!」

「きっきっ急に何なのよ……」

 どうやら嬉しさのあまり口に出てしまったようだ。

隣にいた柊たちが少し引いている。

「悪い、ついな」

「確かに、司にとっては辛い一週間だったよね」

 やっぱり伊吹は分かってくれるか。

俺も感激しそうだ。そして伊吹は今も可愛い。

「さて、瀬那先輩。俺、もうチー」

「駄目に決まっているだろう、問題児」

 当然のように俺の提案は途中で瀬那先輩に遮られた。

やっぱり駄目か……。少しくらい休憩が欲しいものだ。

 まあ、しょうがないか。俺はすぐにその提案を諦めた。

「まあ、今日は早めに帰れ。みんな、疲れただろう?」

「それはもちろんです」

「僕もです」

「私も同じです」

「お前たちは……少しくらい先輩に気を使えよ……まったく。まあ、それがお前たちが」

 俺たちの意見に瀬那先輩は呆れながら、答える。

いや、疲れているのは本当だからな。それぐらい良いかと俺は思うのだが。

「さて、柊の部屋に着いたな」

 気付けば、柊の部屋に俺たちは到着していた。

瀬那先輩は扉の前で立ち、こんな事を言う。

「とりあえず、柊はここにいろ。司と伊吹は私について来い」

「なぜですか?」

「司と伊吹には話がある。だから、来い」

 話があるなんて、大抵嫌な話しか聞いたことがないんだが。

まあ、それは俺が問題児だからという理由も含まれているだろうな。

 とにかく、こういう時の瀬那先輩の言う事は聞かなけばならない。

俺は幼馴染だから、それを知っている。そうしないと、後が怖い。

「分かりましたよ。じゃあ、柊はここで待っててくれ」

「ええ、分かったわ」

 そう言い、柊は部屋の中に入っていく。

いつもなら、柊は一人で勝手に帰ってしまうのだが、今日は俺に話があるらしい。

 先ほど、歩いている途中で話したい事があるとこっそりと言われた。

柊が何を話したいのか気になるが、今は瀬那先輩について行こう。

「じゃあ、行くぞ」

 瀬那先輩は柊が入ったのを確認すると、歩き出した。

恐らく、あそこしかないと思うけどな……



 × × ×



「やっぱりここですか……」

「私はここの方が落ち着くからな」

 瀬那先輩に案内されたのは毎度お世話になっている風紀委員室だった。

 伊吹は少し緊張しているみたいだ。

まあ、確かに中々入れる場所ではない。問題を起こしていなければ。

「さて、入るぞ」

 瀬那先輩は扉に自分専用のカード―キーを使い、鍵を開け部屋の中に入る。

俺たちも瀬那先輩と一緒に中へと足を踏み入れる。

 前より少し綺麗になっているな……。

前回ここに呼び出されたときは色々な書類等が沢山机に置いてあった。

 もしかして、今回の団体戦の物だったかもしれないな。

「わぁ……風紀委員室ってこんな所なんだ……」

 伊吹は風紀委員室を見て、少し感動している。

俺にとっては最悪の場所なのだが、伊吹にとっては憧れの場所なのだろう。

「お前たち、扉の前で突っ立ってないでさっさと座れ」

 瀬那先輩がソファーに座りながら、俺たちに呼びかける。 

俺たちは言われるがままにソファーに腰を掛ける。

「座り方は女の子何ですね……」

「そっそっそうか!?」

 俺に座り方を指摘され、瀬那先輩は座り方を変える。 

なぜ、変える必要があるんだ……。

 俺は少々疑問に思ったが、そこはあえて聞かないでおく。

「それで、話なんだが……まあ、ほとんど伊吹についての話だ」

「僕の、ですか?」

 瀬那先輩にそう言われ、伊吹は少し真剣な表情になる。

そんなに固い話なのか、これ。

「単刀直入に言う。伊吹、私たちのチームにこれからもいてくれ」

「えっ? そんな事ですか? もちろん、いいですよ。最初からそのつもりでしたし……」

「本当か? 良かった……」

 どうやら、瀬那先輩も伊吹が必要だと思ったらしい。

無事、伊吹がいると答え瀬那先輩は安堵の表情を浮かべている。

 瀬那先輩って確か人に頼むのが苦手だったけ……。

俺たち以上に瀬那先輩は緊張していたみたいだ。

「でも、鶴川さんのチームと兼ねてで良いですか?」

「ああ、構わない」

 それもそうだな。

鶴川さんのチームがあるのに、今回一緒に出ていたわけだ。しかもこれからも俺たちのチームとしても出てくれるらしい。

 感謝してもしきれないな。

俺は強くそう思った。

「伊吹、色々とありがとうな」

「うんうん、困った事があったらいつでも言ってね」

 伊吹はとても優しそうな笑顔を俺に見せた。

もし、伊吹が女子だったら一発で恋に落ちていただろう。

 今の笑顔は本当に天使だった。

「とりあえず、一件落着で良かった良かった」

 瀬那先輩も嬉しそうに答える。

確かに、これで一段落付いたわけだ。

 俺も安心する。

「さて、話を終わりだ」

「えっ? これだけですか?」

「そうだが、何か問題か?」

「いえ、大丈夫ですけど……」

 瀬那先輩、緊張し過ぎだな。

まさか、これだけとは予想外過ぎる。

 伊吹も今では緊張などの嘘のように平然としていると言うより、とてもリラックスしていた。

「なら、俺たちは行きますね」

「ああ、お疲れさん」

「さて、伊吹部屋に行こうぜ」

「うん」

 そう言って、俺と伊吹が部屋を出ようとした瞬間だった。

『緊急事態発生!! 三階西エリアにて異常が発生しました。学園内に居る者はただちに避難を開始してください』

 突如、サイレンと共に緊急時のアナウンスが流れる。

「いったいどういう事なの……?」

 伊吹が少し泣きそうになりながら、俺に尋ねてくる。

あまりこのサイレンは気持ちの良いものではないだろう。

「大丈夫だ、心配しなくていい。そうですよね、先輩? ……先輩?」

 俺は伊吹を宥めながら、瀬那先輩に尋ねようとしたが、先輩の様子がおかしい。

酷く辛そうな表情を浮かべている。

「三階の西エリア……そんな……まさかそこにいるのはあいつらじゃ……」

「瀬那先輩!!」

「……!! すまん、司。とにかく、急いで三階の西エリアに向かわなければ」

 瀬那先輩は明らかに焦っていた。

いつものように冷静ではない。瀬那先輩もこのような経験は初めてなのだろう。

 だったら、しょうがない。

「瀬那先輩はここにいてください。もちろん、伊吹もだ」

 伊吹は、あまり顔色が良くない。

ここで、連れていくのはあまりに厳しいだろう。

 瀬那先輩も今の心理状態では危険だ。

 伊吹はこくっと頷く。どうやら俺の思いが伝わったらしい。

だが、瀬那先輩は風紀委員長と言うだけあって責任感を感じているらしく首を横に振る。

「私は風紀委員長だ。こういうのは、私の仕事だ」

 冷静にそう喋っているみたいだが、表情は青ざめていた。

連れていくのはあまりに無理そうだ。

「駄目です、瀬那先輩。先輩はここに居て下さい」

「だが……!!」

「今の先輩を連れて行くのは危険です」

「それでも、私は……!!」

「分かりました。通信機を貸して下さい」

 ここには様々な警備用の機械がある。もちろん、通信機もあるだろう。

 俺がお願いすると、瀬那先輩はすぐに持ってきてくれた。

「これでいいか?」

「ええ、大丈夫です。先輩にはこれで情報を伝えます。これで我慢してください」

「分かった、それでいい」

「後、あれの使用許可を」

「まさか…………あれをか!? ……やむ得ないな。良かろう、許可する」

「ありがとうございます」

 俺はいつも制服に入れているある球体を取り出す。

そして、それに触れる。

 すると、球体が剣の形に変形する。

これが、俺の本当の武器だ。

 こういう非常時の為に持っていたものだ。

「では、行ってきます」

「ああ、気を付けろよ……」

 俺は瀬那先輩の言葉を聞き、急いで部屋を飛び出した。

 頼む、何事もなく終わってくれ……。

そう願いながら、俺は必死で走った。

 




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