第四話『問題児と神人少女は勝利を目指す……』7
毎回毎回、説明回になってるような気がします……。
「う~ん、どうしても止まらないよ……」
訓練を一通り終えた俺たちは休憩していた。
そんな中、伊吹が悔しそうにそう呟いた。
しばらくあの技の練習をしたが、今の所失敗ばかりだ。
悔しいのも仕方がない。俺も一緒に練習していたので、その気持ちは分かる。
戦闘兵では改善は見られないな。
どうしようかな……。
「そこは練習あるのみだからね。はい、水」
「ありがとう、柊さん」
柊は伊吹を励ましながら、水を渡す。
伊吹とは反対に柊は何か掴んだ様子だ。少し表情が明るい。
最初は一人で訓練しろと言われて不満だったと思うが、今はそうでもないらしい。
誰かに指導された後に一人で訓練してみると、今まで気付かなかった事が見えてくるだろう。
訓練とはそういうものだ。俺は柊にそれが分かってほしかった。
さて、後は伊吹だけだな。
俺は立ち上がる。ここからが、俺の真骨頂だ。
まあ、とんでもない策だが。
「どうしたの、司?」
「また、とんでもない事を言うつもりでしょうね~」
「ああ。伊吹、疾風突きのターゲットだが戦闘兵じゃなくて俺だ」
「「……」」
俺の提案に二人は唖然としている。
そして、ようやく意味を理解する。
それは、怒りと恐れだ。
「むっむっ無理だよ!! そんな事!!」
「そうよ!! 正気の沙汰と思えないわ!! 本気で言ってるの!!」
「当然だ。俺が今まで嘘を言ったことがあるか?」
柊と伊吹は黙り込む。
二人は気付いているはずだ。これが本気である事を。恐らく気付いていないふりをしていただけだろう。
確かにこれは危ない賭けだ。失敗すれば、俺はもしかしなくても死ぬだろう。
そんな事がしたくないのは、伊吹が一番分かっている。
もちろん、柊もだ。口にはしないものの、俺の事を心配してくれている。
俺はそれだけで、このチームで良かったと思った。
「俺は柊、伊吹を信じてる。だから、二人は俺を信じてくれ!!」
「信じてるよ……信じてるから、嫌なの!!」
「私もそうよ!!」
二人は必死の思いで俺に訴えかける。
そこまで心配してくれるのか……。
俺は嬉しく思う。
「頼む。これは必要な事なんだ」
俺も自分自身の思いを二人にぶつける。
「「……」」
再び、静寂に包まれるこの訓練場。
少し時間が経過した後、伊吹が柊より早く口を開いた。
「……わ……分かった。それなら、僕やってみるよ」
「ほっほっほっ本気なの、伊吹!?」
「うん。司がここまで本気なんだから、僕はその気持ちに答えてあげないと」
「ありがとうな、伊吹」
俺は伊吹の覚悟を見て、感心しながらお礼を言う。
伊吹はそれを聞いて笑った。
そして、真剣な表情になる。
「絶対成功させるから」
「ああ、頼むぞ」
「ちょっと……」
柊は俺たちの事を最後の最後まで止めようとしていたが、俺と伊吹は止まらなかった。
元々、止める気はないが。
俺と伊吹は距離を取る。
「そこら辺でいいぞ、伊吹」
「うん」
俺が場所を指示し、伊吹はそこに移動する。
伊吹は槍を構える。
「じゃあ、行くよ」
「ああ、いいぜ」
伊吹は技の態勢を取り、そして突撃する。
――――疾風突き。
それは勢いよく、発動された。
伊吹の槍は俺を目掛けて、向かってくる。
来るな、槍が。
頼むぞ、伊吹……。ギリギリまで、俺は避けないからな。そう思ってるうちに、槍は迫ってくる。
こんな短い時間なのに、とても長く感じる。
それは気のせいではないだろう。
シュッ。
今までの聞こえたことのない音が微かに聞こえる。
ふっ。そうこないとな、伊吹。
「えっ? 嘘でしょ……」
遠目から見ていた柊はこんな事信じられない様な表情をしている。
まあ、それもそうか。
「伊吹、やったな」
伊吹の槍は俺を貫かなかった。
槍は俺の腹部の三センチ手前で止まったのだ。
伊吹自身も信じられない顔をしている。
今まで成功しなかった静止。それが今出来ている。
「うっうん。でも、どうして?」
伊吹は俺に尋ねてくる。
「理由は簡単だ。恐怖心だ」
「恐怖心?」
「だって、伊吹さ俺を貫くのを怖いと思っただろう?」
「そりゃあ……怖くて怖くて仕方がなかったよ」
伊吹は少し悲しそうに答える。
まあ、心が痛いのも当たり前か。下手をすれば、俺はもうここにいなかったかもしれないからな。
「人ってさ。気持ちで色々と左右されるだろう? それを利用した」
「でも、普通恐怖心は邪魔よね?」
俺の話に疑問を持った柊も聞いてくる。
それもそうか。これは逆転の発想ってやつだからな。
恐怖心が技を制御する。これが、今回の答えでもある。
「まあ、普通だったらな。でも、今回は違う。団体戦のルールを思い出せ」
「確か、人を殺めるような技や行為は禁止……あっ。そういう事ね」
柊はルールを確認し、俺の話を理解する。
そう、これは団体戦だから出来たものだ。
本当の戦闘だったら、こんな訓練は意味をなさないだろう。
だが、俺たちは団体戦に向けて訓練している。
まあ、いつかはそれが戦闘に繋がるわけだが。
とにかく、伊吹にはこの技の違う姿を見てもらいたかった。
「分かったみたいだな。恐怖心が伊吹にあったからこそ、この技の別の姿が見れたんだ」
「そうだね、確かにいつもとは違っていたよ」
「これなら、危険な技とは言われないわね」
ようやく、伊吹も掴めたようだ。
伊吹は満足した面持ちで俺を見ている。
「これで、試合でも使えるな」
「そうだね!! でも……もうこんな事はしないでね……」
「私もそうしてほしいわ……」
まあ、そうだな。
俺自身、凄い危なっかしい所あったもんな。
二人は少し泣きそうになっている。
心配し過ぎもするが、それでもこの気持ちは嘘ではないだろう。
「ああ、もうしない。本当に悪かった」
「そう……なら、よし!! 今日も疲れたわ~」
「うん、僕も」
いつもの二人に戻る。
「そうだな、俺も疲れたな」
俺も同じように言う。
「「……」」
「ん? どうした、二人とも?」
「「誰のせいだと思ってるの!!!!」」
俺は盛大に二人に怒られた。
えっ。さっき、許してくれたんじゃ……。
「私、もう帰るわ!!」
「僕も帰る!!」
「じゃあ、俺も」
「「一人で反省してなさい!!!!」」
そう口を揃えて言い、柊と伊吹は去って行った。
そこまで、怒ってたのかよ……。
「はぁ…………悪かったよ、二人とも」
俺は色んな意味で、柊と伊吹に申し訳ないと思った。
これで、ようやく第四話は終わりです。いかかでしたか? 今回は随分堅苦しくなってしまいました……。次回はいよいよ一章も終盤、第五話です。まだまだ続くので、よろしくお願いします!!




