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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第一章 結成編
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第四話『問題児と神人少女は勝利を目指す……』7

 毎回毎回、説明回になってるような気がします……。

「う~ん、どうしても止まらないよ……」

 訓練を一通り終えた俺たちは休憩していた。

そんな中、伊吹が悔しそうにそう呟いた。

 しばらくあの技の練習をしたが、今の所失敗ばかりだ。

悔しいのも仕方がない。俺も一緒に練習していたので、その気持ちは分かる。

 戦闘兵では改善は見られないな。

どうしようかな……。

「そこは練習あるのみだからね。はい、水」

「ありがとう、柊さん」

 柊は伊吹を励ましながら、水を渡す。

伊吹とは反対に柊は何か掴んだ様子だ。少し表情が明るい。

 最初は一人で訓練しろと言われて不満だったと思うが、今はそうでもないらしい。

誰かに指導された後に一人で訓練してみると、今まで気付かなかった事が見えてくるだろう。

 訓練とはそういうものだ。俺は柊にそれが分かってほしかった。

 さて、後は伊吹だけだな。

俺は立ち上がる。ここからが、俺の真骨頂だ。

 まあ、とんでもない策だが。

「どうしたの、司?」

「また、とんでもない事を言うつもりでしょうね~」

「ああ。伊吹、疾風突きゲイルショットのターゲットだが戦闘兵じゃなくて俺だ」

「「……」」

 俺の提案に二人は唖然としている。

そして、ようやく意味を理解する。

 それは、怒りと恐れだ。

「むっむっ無理だよ!! そんな事!!」

「そうよ!! 正気の沙汰と思えないわ!! 本気で言ってるの!!」

「当然だ。俺が今まで嘘を言ったことがあるか?」

 柊と伊吹は黙り込む。

二人は気付いているはずだ。これが本気である事を。恐らく気付いていないふりをしていただけだろう。

 確かにこれは危ない賭けだ。失敗すれば、俺はもしかしなくても死ぬだろう。

そんな事がしたくないのは、伊吹が一番分かっている。

 もちろん、柊もだ。口にはしないものの、俺の事を心配してくれている。

俺はそれだけで、このチームで良かったと思った。

「俺は柊、伊吹を信じてる。だから、二人は俺を信じてくれ!!」

「信じてるよ……信じてるから、嫌なの!!」

「私もそうよ!!」

 二人は必死の思いで俺に訴えかける。

そこまで心配してくれるのか……。

 俺は嬉しく思う。

「頼む。これは必要な事なんだ」

 俺も自分自身の思いを二人にぶつける。

「「……」」

 再び、静寂に包まれるこの訓練場。

少し時間が経過した後、伊吹が柊より早く口を開いた。

「……わ……分かった。それなら、僕やってみるよ」

「ほっほっほっ本気なの、伊吹!?」

「うん。司がここまで本気なんだから、僕はその気持ちに答えてあげないと」

「ありがとうな、伊吹」

 俺は伊吹の覚悟を見て、感心しながらお礼を言う。

伊吹はそれを聞いて笑った。

 そして、真剣な表情になる。

「絶対成功させるから」

「ああ、頼むぞ」

「ちょっと……」

 柊は俺たちの事を最後の最後まで止めようとしていたが、俺と伊吹は止まらなかった。

元々、止める気はないが。

 俺と伊吹は距離を取る。

「そこら辺でいいぞ、伊吹」

「うん」

 俺が場所を指示し、伊吹はそこに移動する。

伊吹は槍を構える。

「じゃあ、行くよ」

「ああ、いいぜ」

 伊吹は技の態勢を取り、そして突撃する。

――――疾風突きゲイルショット

 それは勢いよく、発動された。

伊吹の槍は俺を目掛けて、向かってくる。

 来るな、槍が。

頼むぞ、伊吹……。ギリギリまで、俺は避けないからな。そう思ってるうちに、槍は迫ってくる。

 こんな短い時間なのに、とても長く感じる。

それは気のせいではないだろう。

 シュッ。

今までの聞こえたことのない音が微かに聞こえる。

 ふっ。そうこないとな、伊吹。

「えっ? 嘘でしょ……」

 遠目から見ていた柊はこんな事信じられない様な表情をしている。

まあ、それもそうか。

「伊吹、やったな」

 伊吹の槍は俺を貫かなかった。

槍は俺の腹部の三センチ手前で止まったのだ。

 伊吹自身も信じられない顔をしている。

今まで成功しなかった静止。それが今出来ている。

「うっうん。でも、どうして?」

 伊吹は俺に尋ねてくる。

「理由は簡単だ。恐怖心だ」

「恐怖心?」

「だって、伊吹さ俺を貫くのを怖いと思っただろう?」

「そりゃあ……怖くて怖くて仕方がなかったよ」

 伊吹は少し悲しそうに答える。

まあ、心が痛いのも当たり前か。下手をすれば、俺はもうここにいなかったかもしれないからな。

「人ってさ。気持ちで色々と左右されるだろう? それを利用した」

「でも、普通恐怖心は邪魔よね?」

 俺の話に疑問を持った柊も聞いてくる。

それもそうか。これは逆転の発想ってやつだからな。

 恐怖心が技を制御する。これが、今回の答えでもある。

「まあ、普通だったらな。でも、今回は違う。団体戦のルールを思い出せ」

「確か、人を殺めるような技や行為は禁止……あっ。そういう事ね」

 柊はルールを確認し、俺の話を理解する。

 そう、これは団体戦だから出来たものだ。

本当の戦闘だったら、こんな訓練は意味をなさないだろう。

 だが、俺たちは団体戦に向けて訓練している。

まあ、いつかはそれが戦闘に繋がるわけだが。

 とにかく、伊吹にはこの技の違う姿を見てもらいたかった。

「分かったみたいだな。恐怖心が伊吹にあったからこそ、この技の別の姿が見れたんだ」

「そうだね、確かにいつもとは違っていたよ」

「これなら、危険な技とは言われないわね」

 ようやく、伊吹も掴めたようだ。

伊吹は満足した面持ちで俺を見ている。

「これで、試合でも使えるな」

「そうだね!! でも……もうこんな事はしないでね……」

「私もそうしてほしいわ……」

 まあ、そうだな。

俺自身、凄い危なっかしい所あったもんな。

 二人は少し泣きそうになっている。

心配し過ぎもするが、それでもこの気持ちは嘘ではないだろう。

「ああ、もうしない。本当に悪かった」

「そう……なら、よし!! 今日も疲れたわ~」

「うん、僕も」

 いつもの二人に戻る。

「そうだな、俺も疲れたな」

 俺も同じように言う。

「「……」」

「ん? どうした、二人とも?」

「「誰のせいだと思ってるの!!!!」」

 俺は盛大に二人に怒られた。

えっ。さっき、許してくれたんじゃ……。

「私、もう帰るわ!!」

「僕も帰る!!」

「じゃあ、俺も」

「「一人で反省してなさい!!!!」」

 そう口を揃えて言い、柊と伊吹は去って行った。

そこまで、怒ってたのかよ……。

「はぁ…………悪かったよ、二人とも」

 俺は色んな意味で、柊と伊吹に申し訳ないと思った。



 

 これで、ようやく第四話は終わりです。いかかでしたか? 今回は随分堅苦しくなってしまいました……。次回はいよいよ一章も終盤、第五話です。まだまだ続くので、よろしくお願いします!!

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