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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第一章 結成編
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第三話『問題児の策略』5

「俺達のチームに入ってくれ」

「そっそっそれは、無理だよ!?」

 俺の頼みを聞いた伊吹は、全力で手を振りながら、そう言う。

確かに、急に言われたら困るか……。

「いや、だって伊吹自分を頼ってと言ってたじゃないか」

「それは……」

 今日の朝言ったことを伊吹は思い出し、困ったように返答する。

「まさか~あれは、嘘だったのか?」

「そういうわけではないよ!! でも、……」

「時と場合によるって事か?」

 伊吹は渋々頷く。

まあ、無茶ではあるけど……。

「ねぇ、一つ聞いていいかしら?」

「うん? 別にいいぞ」

「どうして伊吹が必要なの?」

 困った表情をしている伊吹に助け船を出すかのように、鶴川は俺に質問をする。

俺の隣にいる柊もそこは聞きたかったらしく、俺を真剣な眼差しで見ている。

 仕方が無いな……話すとしよう。

「一つは俺の友達だからだ」

「でも、友達だからってそんな頼みは……」

「まあまあ、話を聞いてくれ。みんな、知ってると思うが俺と柊のチームは最近結成されたばかりだ。俺と柊の団体戦は最終日、つまり五日後だ」

「……なるほど、そういう事ね」

 一つ目の理由は鶴川も共感しているようだ。

俺も淡々と話を続ける。

「午後からフリーだと言え、圧倒的に時間が足りない。それなのに、相手の事を知らない奴をチームに入れるか?」

「確かに……入れないと思うけど……」

 俺は問いを伊吹に振った。

伊吹は少し戸惑いながら、答える。

「つまり、そういう事だ。時間がないのなら、それは相手の事を知っていて、相手も自分の事を理解してくれる人しかいない」

「それは、分かったけど……それでも、僕じゃ……無理だよ」

 理由は理解してくれたが、伊吹には自信がないようだ。

まあ、もう一つ理由があるから、それで説得させるしかないか。

「確かに、伊吹には荷が重いかもしれないけど、それでも俺は伊吹に入ってほしい」

「そう言ってくれるのは、嬉しいけど……。それなら、尚更僕じゃ……」

「まあ、そう言うのはもう一つの理由を聞いてからにしろよ」

「もう一つの理由?」

 俺の言葉に伊吹は驚いている。鶴川や柊も気になっているようだ。

俺は話を再開する。

「ああ。もう一つの理由は伊吹自身を強くする為だ」

「僕を強く?」

「そうだ。俺は伊吹を強くしてやる」

「ちょっと待って!! 私と伊吹は合ってないって言いたいの?」

 鶴川が少し怒り気味で、俺に尋ねてくる。

どうやら、癇にさわったらしい。

「そう聞こえたなら、悪い。別に、鶴川と伊吹は合ってないわけじゃない。むしろ、良いチームと思うくらいだ」

 これは、鶴川と伊吹のタッグ練習を見ての率直な感想だ。

悪くはない。

 ただ、一つ気になっただけだ。

「なら、どうして?」

「まあ、それはだな……何となくだが、伊吹の技に頼ってる気がするからかな」

「伊吹の技に頼っている?」

「ああ。じゃあ、一つ聞くけど……タッグ練習の時は毎回伊吹はどうしている?」

「それは、技を高める為に息を合わせて、戦闘兵を倒しているわ」

「それだ」

「「「えっ?」」」

 先ほどまで静かに俺の話を聞いていた柊でさえ、俺の言葉に疑問を持つ。

「だから、技を高める為の練習をしているんだろう? それだと伊吹にとっては意味をなしていないんだよ」

「僕にとって意味がない?」

「言い方が悪いかもしれないが、あのままでは人、いや神人までを殺してしまう殺人用の技になってしまうはずだ」

 それを聞き、伊吹は顔を下に向ける。

悪い事言ってしまったな……。

 俺は後悔する。

「でも、事実だ。その技を本来の為の技に戻す、それが伊吹を強くする理由だ」

「なるほど……理由がよく分かったわ」

「うん、僕も……」

 どうやら、ようやく納得してくれたようだ。

これで、頼みは聞いてくれるだろう。

「まあ、今回だけ参加してくれればいいさ」

 俺は最後にそう言う。

それを聞き、伊吹は決心したようだ。

「うん!! それなら、僕は入るよ!!」

 俺に笑顔を向け、伊吹は答えた。

 良かった~……。

俺は心の中でほっとする。

「私もそれなら、許可してもいいわ」

「ありがとうな、伊吹も鶴川も。感謝している」

「これで、話が付いたみたいね」

 柊が久しぶりに口を開く。

「まあな」

「やばっ、もうこんな時間……!? 早く練習を再開させないと!!」

 鶴川は訓練場の時計を見て、慌てた様子を見せる。

「悪いな、時間取ってしまって。じゃあ、俺と柊はこれで帰るから。伊吹、明日からよろしくな」

「うん!! 明日から頑張ろうね!!」

 今の笑顔もとても輝いていた。

やはり可愛いな、伊吹。

「帰るぞ、柊」

「ええ」

 俺と柊は第四訓練場を後にした。



「あなた、よくあんな事出来るよね……」

「うん? 何が?」

 下校中、柊がそう呟いた。

何だよ、急に。

「何って、今日の人員補充についてよ。まさか、あそこまであなたが考えていたとは思ってなかったわ」

「ふっ。俺を誰だと思ってる? 俺は最強だからな」

「それが、あなたの口癖なのね……」

 俺の理由を聞き、呆れながら柊はそう言った。

長かったような一日が終わり、明日から団体戦が始まる。

 


 さて、これで第三話も終了です。いかがでしたか。次回からは、第四話。いよいよ一章の終盤に近づいてきました……。これからも、よろしくお願いします!!

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