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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第一章 結成編
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第三話『問題児の策略』4

「ねぇ……どうしてここなの?」

 第四訓練場の前で、柊は俺に尋ねる。

何やら、不満や疑問があるみたいだな。

「どうして、そりゃあ俺たちのチームに参加してもらうためだ」

 俺は淡々と答える。

だが、まだ疑問があるらしい。柊の表情はまだ納得していない面持ちだ。

「もしかして、教室に行って、俺が頭を下げて人員を確保しようと思っていたのか?」

「だって、人を頼るんでしょ? だったら、こんな所にいるよりは……」

「アホか、お前。俺が人望あるように見えるか?」

 俺がそう聞くと、すぐに柊は首を横に振る。

少しくらい否定して欲しかったが、まあしょうがない。事実だからな。

「ここには、俺の友達がいる」

「友達……そういう事ね……」

 ただでさえ、時間がない。それなのに、全く知らない相手をチームに入れるのは無理がある。

なら、相手を知っている人をチームに入れたらいい。

 それをようやく柊は理解してくれたようだ。

「でも、あなたの友達って強いの?」

 そんな事を聞くのかよ。

正直俺ですら呆れてしまう。

「愚問だな。俺の友達が弱いわけないだろう?」

「まあ、そうよね……」

 あの時の事を思い出し、柊は少し暗い声でそう言う。

「安心しろ、俺の友達は悪い奴じゃないから。凄く優しい人だよ」

 俺は伊吹の良い所を思い出しながら呟いた。おまけに伊吹は可愛いしな。

「さて、中に入ろうぜ」

「そうね」

 俺と柊は第四訓練場の中に入る。

俺たちが入ると、中はもちろん訓練をしている人達がいる。

「伊吹!! 後ろ、お願い!!」

「うん!! 鶴川さん、任せて!!」

 どうやら、タッグでの練習のようだ。

戦闘兵は戦えるよう設定にしてあり、戦闘兵も二体だ。

 とはいえ、相手を殺すような事はない。

ただ、ある程度動くようになっただけだ。

「伊吹!! 今よ!!」

「うん!!」

 伊吹のペアである女子生徒が、伊吹に止めの合図をする。

それを聞き、伊吹は自分の武器である、槍衾ファランクスを使い、そして戦闘兵に突撃する。

 伊吹の突撃の速さは尋常ではない。

その突撃は戦闘兵の中央に直撃し、戦闘兵は倒れていく。

「何よ……あれ……。速すぎる……」

 俺の隣で、柊はあまりの速さに驚きを隠せないでいる。

まあ、それもそうか。 

 恐らく、伊吹の今の動作は一秒を満たないだろう。

それぐらい早い。

 疾風突きゲイルショット――――。

伊吹の得意技だ。疾風のように突き、弾丸のように貫く事からそう呼ばれているらしい。

 この技は速さが重要視される。

今の動作がその基本と言える。

 技だけなら、伊吹の方が俺より速いだろう。

だがこの技には……大きな欠点がある。

「ちょっと!! 伊吹、危ない!!」

「えっ!? うわぁぁぁ!!」

 伊吹は技の勢いで、訓練場の壁に突っ込んでしまう。

訓練場の壁には大きな穴が開いていた。

 この技は発動したのは良いのだが、その後をどうにかしなければ使い物にはならない。

下手すると、骨折等もあり得る。

『訓練場の壁で異常が発生しました。修復、開始します』

 そのアナウンスで壁が修復される。

「伊吹!! 大丈夫?」

「えへへ……何とか」

 どうやら、何事もなかったようだ。

その女子生徒は安心する。

「ねぇ、まさかあの技って……?」

 どうやら、伊吹がやった技の欠点を理解したようだ。

柊が俺に尋ねてくる。

「そうだ。自分では速さを制御出来ない」

「そんなの……使い物にならないじゃない!?」

「おい、声が大きいぞ」

 すると、伊吹とその女子生徒は俺たちの姿に気付いたらしい。

まあ、別に隠れてたわけじゃないけどな。

「やぁ、伊吹。相変わらず、速いなその技」

「えっ!? 見てたの、司?」

 それを聞き、伊吹は少し恥ずかしがる。

 うん。いつ見ても、天使だな。

俺は改めてそう思った。

「まあな。悪かったか?」

「うんうん、全然そんな事ないよ。むしろ、見てくれてありがとう」

 伊吹は俺たちに可愛いらしい笑顔を向ける。和むな……伊吹は。

隣にいる柊も少し和んでいる。

 恐らく、伊吹が男子だという事を分かってないだろう。

「ねぇ、伊吹? この人達は?」

 伊吹の隣にいた女子生徒が、伊吹に尋ねる。

「えっと……この人は涼風司。昔から友達だよ。それで、この人は……」

 俺の隣にいる柊を見て、伊吹は困った顔をする。

それもそうか。伊吹も初対面だしな。

 俺は視線で自己紹介しろと、柊に伝えた。

「私は柊成実。神人で、こいつと同じチームよ」

「「えっ!?」」

 その柊の言葉を聞き、伊吹とその女子生徒は驚いた表情を見せる。

「もしかして、司? 司と隣にいる柊さんがその今日、噂になっていたチームなの?」

「まぁ、そうなるな」

 俺は渋々答える。

 それはそうとして、そこまで、噂になっていたとは知らなかった。

「そういう事だったんだ……。道理で、司が動揺していて変だと思ったんだ」

「まあ、そうだな」

「あっ。ついでに言うと、俺が倒した神人はこいつだ」

「「えっ!?」」

 再び驚く。

まあ、それもそうか。

 俺がそう言った事で、少し柊は不機嫌になっている。

ここは我慢してくれと視線で謝っておく。

「あっ!! そういえば、僕が自己紹介してなかったね。僕は伊吹雫、司の友達だよ」

「あの、伊吹さんは女子ですか?」

 どうやら、その疑問だけは柊は聞きたいようだ。

聞きたくなるのもしょうがないと思うが。

「やっぱりそう見えるんだね……僕はその……男子だよ」

「…………!!」

 それを聞いて、柊は絶句していた。

俺も初めて会ったときはそんな感じだったかな。

 その反応を見て、伊吹は顔を赤らめる。

その様子を見て、柊は伊吹に近付く。

 こいつ、何してんだ?

「おい、柊?」

「ひゃあ!? なっなっ何?」

「そこまでにしろ。伊吹がもう……」

「そっそっそうね!!」

 ようやく柊は我に返る。

こんな柊でさえ、見とれてしまうのだからやっぱり伊吹は天使なのだろう。

「とりあえず、私も自己紹介しておくね。私は鶴川亜里沙つるかわありさ。あなたと同じ一年生で、このチームのリーダーよ。よろしくね」

「こちらこそ、よろしく」

 俺は鶴川に挨拶を返す。

どうやら、相手は俺と同じ一年生みたいなのでほっとした。

「そういえば、あなたたちは私と伊吹に何か用?」

「あっ、忘れてた」

「ちょっと、忘れないでよ!!」

 今の出来事で、すっかりここに来た理由を忘れていた。

ありがとうな、柊。

 心の中でお礼を言っておく。

じゃあ、お願いしますか……。

「伊吹、お前に頼みがある」

「えっ? 僕に?」


 

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