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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第一章 結成編
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第三話『問題児の策略』3

 放課後、俺は昨日と同じように柊の訓練用部屋に向かった。

今日は、昨日のように質問攻めなどで他の生徒に捕まる事なく、早めに部屋の前に来れた。

 さすが、団体戦前の雰囲気だな。俺の事になんてまるで興味を持たない。そもそも、そこまで有名ではないが。

まあ、そんな事はいい。さっさと入ろう。

 俺は相変わらず今に壊れそうな木の扉を開ける。

「おっ。来たか、司」

「相変わらず、遅いわね」

「昨日よりは、早めに来たつもりなんだけどな~」

 その部屋の中には相変わらずこの雰囲気とは合わない女子二人、柊と瀬那先輩がいた。

柊と瀬那先輩はなぜこんなにも来るのが早いのだろうか。暇なのか?

 それはさておき、俺には聞きたい事がある。

「瀬那先輩!! 一回目の団体戦に出る事になったって本当ですか?」

「ああ、そうだ。それが、どうかしたか?」

 瀬那先輩はその質問を待っていたかのように答え、そして受け流す。

柊もその事については気になるようで、真剣な表情で瀬那先輩を見ている。

「それが、どうかしたかではありません!! そもそも俺と柊は昨日組んだばかりですよ!! それにチーム人数が足りてません!! その事に関してはどうするつもりですか?」

 俺は強く言い張った。

これで、瀬那先輩は考えを変えてくれるかもしれない。

 俺はそう思った。

「ほう? 司、お前は私に何かして欲しいと言う事か? 言ったはずだ、チームの事はお前たちで何とかしろと」

 だが、瀬那先輩は考えを変えるどころか、俺の意見を正面から否定してきた。

瀬那先輩の目は真剣そのものだった。

 俺はその態度を見て、黙ってしまう。

確かに、瀬那先輩は言っていた。チームは俺たちで何とかしろと。

 その時、俺と柊は聞き入れ、納得していたはずだ。

それを今更言っても遅いではないか。

 さすが、先輩だ。俺とは違いしっかりとした強い考えを持っている。

残念ながら、ここは認めるしかない。

「すいません。俺が――――」

「すまん、冗談だよ」

「「えっ?」」

 俺が謝罪をしようとすると、瀬那先輩がとんでもない事を言うので、柊も俺も口を揃えて聞き返した。

先ほどまでの真剣な表情が嘘みたいだ。

 冗談なの? 先ほどまで、俺が一生懸命考えていたのは何だったんだ?

急に馬鹿らしく思えてきた。

 じゃあ、意図を聞こう。

「チーム自体はお前たちで何とかしろと言うのは、本当だ。ただ、他の面では助けてやる」

「いったいどう助けてくれるのですか?」

 柊が瀬那先輩に尋ねる。

俺もそう思っていたところだ。

「一回目からの団体戦参加の件については悪いとは思ってるよ。だが、これも命令なんだ。それは分かってくれ」

 何でもかんでも命令ですか……。

学園長め、恨んでやる。

 俺が学園長に対して、敵対心を持ち始めていると瀬那先輩は話を続ける。

「だから、せめてと思ってお前たちが戦うのは団体戦一回戦最終日にした。これが、私の精一杯だ」

 俺は、鞄の中にある団体戦表を確認する。

「団体戦、最終日は……って!! 後、五日しかないじゃないですか!?」

 団体戦一回戦は明日から始まり、五日間に分けて行われる。

この女神コスモス学園の生徒はほぼ全員参加するので、このぐらい日数が必要になる。

 団体戦の期間中は授業が、午前中に終わり午後は全て団体戦に当てられる。

試合のない者は観戦したり、訓練したりなど自由時間が与えられる。

 今よりは確かに沢山の時間を訓練に費やす事が出来る。

だが、それ以前に俺たちのチームは人数が足りない。こんな短期間でどう人を集めればいいのか。

 俺に不安がのしかかってきた。

それは柊も同じようで、少し悩んでいるようだ。

「だから言っただろう? これが限界だ。一応、他のチームよりは訓練時間を増やしてもらったからそれで何とかするしかない」

 瀬那先輩でもこれが限界か……。

でも、だいぶ頑張ってくれたと思う。さすが、風紀委員長であり俺の先輩だ。

 ここまで、してもらって他に何がいるか。俺は気持ちを高ぶらせる。

気持ちを高ぶらせていると、ふと一つの方法を思い出す。

 頼る……。一番簡単そうで、難しい方法。

だが、これしかない。これ以外には方法はない。

「分かりました。色々とありがとうございます。瀬那先輩に一つ確認したいことが……」

「うん? 何だ、司?」

「チームの人数は最低三人ですよね?」

「ああ、そうだが。それを確認して、何がしたいんだ?」

 俺は不敵な笑みを浮かび、瀬那先輩にこう言った。

「もしかしたら、今日でチームの人員補充が出来るかもしれないという事ですよ」

「ふっ、なるほどな。どうやら、打開策があるみたいだな」

 瀬那先輩はもう気付いたようだ。柊は全然気付いていないが。

まあ、いずれ分かるからいいか。

「じゃあ、今から行ってきます」

「ああ、行って来い」

 そう瀬那先輩と挨拶を交わし、俺はこの部屋を出ようとする。

「待って」

「うん? 何だ、柊?」

 すると、柊は俺を引き留める。

前もあったな、こういうの。

 こういう時、柊が言うのは決まっている。

「私も連れて行きなさい」

「おう、じゃあ一緒に行こうぜ」

 俺は柊の願いを受け入れる。

柊は少し嬉しそうに俺の傍に来る。

 案外、柊の笑顔も可愛いかもしれないな。

瀬那先輩も笑顔は可愛い。怒ってるときは尋常じゃないくらい怖いけど。

「じゃあ、俺と柊は少し行ってきます」

「ああ、いってらっしゃい二人とも」

 最後に瀬那先輩の言葉を聞き、部屋を出た。

「それで、どうするの? 人員補充はそんなに簡単じゃないと思うわよ」

「心配するな。俺にはちゃんとした策がある」

「策って?」

「人を頼る事だ」

「はぁ?」

 柊は俺が言ったことを理解出来なかったらしい。

今もこいつ、何言ってんのという顔をしている。

「まあ、すぐに分かる」

「本当に? 少し不安なんだけど……」

 柊は不安そうな顔をし、俺にそう言う。

確かに賭けではあるけど。

 あいつなら……伊吹なら……!! 何とかなるはずだ。

伊吹、頼らせてもらうぞ。

 そんな思いを持ちつつ、俺は歩き出した。


 

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