第三話『問題児の策略』2
気付けば、1000PVを超えていました……。ありがとうございます!!
「ああ~だるいな、今日」
HR終了後。
俺は柊との訓練で疲れてしまい、机に突っ伏していた。
まさか、あそこまで生真面目だったとは正直意外だった。
まあ、育てがいがあるから別にいいけどな。
とはいえ、やはり柊は常識にとらわれ過ぎている。
少しくらい肩の力を抜いてもいいと思うくらいだ。ここの所はすぐに改善出来そうにないな……。
はぁ~……骨が折れるな、これは。
「どうしたの、司? 今日はやけに疲れているね」
俺の前の席に座っている伊吹が声を掛けてくる。
伊吹は俺の事をいつも心配してくれて、本当に良い友達だ。
今もとても心配そうな顔をしている。
恐らく、伊吹が女子だったら一瞬で恋に落ちているだろう。
今日の伊吹も天使だった。そして俺の心は今日も和んでいる。
「まあ、ちょっとな。気にする必要はない」
「そう? なら、いいけどたまには僕にも頼ってよね」
少し顔を膨らませながら、伊吹は俺に言う。
頼るか……。
その考えも悪くないな。一つの方法としておこう。
「そうか。ありがとうな、伊吹」
「うん、どういたしまして」
こんな風に会話出来るのは伊吹ぐらいか。
俺は伊吹の笑顔を見て、そう思った。
「おっ。今日も二人は仲良しだね~」
「面倒くさい奴が来たな……」
「ちょっと、聞こえてるわよ」
俺と伊吹の会話に水を差してきたのは、赤い色のポニーテールが特徴の女子皐月美花だ。
皐月は実力だけ見れば、俺や伊吹に劣らないくらいある。
ただ、後先を考えないで行動するのが皐月の欠点だ。
まあ、つまり柊とは正反対のタイプだな。
「な~にそんなに私の事を見つめて? もしかして、惚れちゃった?」
「そんなわけあるか。皐月に惚れるぐらいなら、まだ伊吹に惚れる方がマシだ」
今、結構問題発言したな。
俺は心の中で後悔する。
伊吹も皐月も俺の発言で固まっている。
そして、皐月が先に動き出す。
「だってさ、良かったね雫ちゃん」
「全然良くないよ!! それに僕は男子だよ!!」
「でも、可愛いよ~」
「もうっ!! からかわないでよ!! 僕はそう言う趣味はないからね」
「いや、俺もないぞ」
俺も一応訂正をしておく。
さすがに可愛いからって伊吹にそういう気持ちはない。
まあ、今顔を膨らませて拗ねている伊吹は可愛いが。
それにしても皐月は人によくちょっかい出してくるな。
話題を変えないと堂々巡りだな。
「皐月、お前は俺たちに何か用があって来たんだろう? それとも本当にちょっかいしに来ただけか?」
「うんうん。しっかりとした要件があるに決まってるじゃない」
「なら、さっさと話してくれ」
「相変わらず、冷たいな~司は。まあ、いいや。今日のHRで聞いたでしょ?」
HRで何か聞いたか? 確かやけに今日は長かった記憶がある。
俺は疲れていてあまり聞いていなかったので、ほとんど覚えていない。
「確か、団体戦の事だよね」
伊吹がそう言う。
ああ、団体戦の事か。
「そうそう、団体戦の組み合わせが発表されたでしょ。その件でね……」
そっかもう団体戦の時期か。
四月終盤から七月中盤にかけて団体戦のトーナメントがあり、今日がその組み合わせの発表日だったらしい。
ちなみに、団体戦は一年二回あり、二回目は九月中盤から二月終盤にある。
二回目の方が色々と盛り上がっており、一回目はその前座みたいなものだ。
その為、色々とルールも異なる。
俺もチームを組んだが、人数も足りないし二回目からの参加だろう。
俺にとっては別に関係ないので、適当に頷いておく。
「それでね、今回面白いチームがいてさ」
「何、面白いチームって?」
伊吹が皐月にそう尋ねる。
これも適当に聞いて流すか。
そう思っていた。
皐月の言葉を聞くまでは……。
「そのチームね、人間と神人が組んだチームらしいよ」
「えっ!? すまん、もう一度言ってくれ」
俺はつい聞き返してしまった。
「だから、そのチームは人間と神人が組んでいるんだって」
「そっそっそうか……」
「どうしたの、司? やけに焦っているみたいだけど?」
「ぜっぜっ全然大丈夫だ!! たったっ楽しみだな~そのチーム」
まずいな、動揺し過ぎだ。
とはいえ、これは動揺せざるを得ない。
唐突過ぎるぞ、それは。
まさか、瀬那先輩はこれを了承したのか。
チームも揃っていないのにか?
「「……?」」
俺の方を見て、二人は首をかしげている。
追及されたら、困るぞ。
俺がその心配していると、チャイムが鳴り、
『まもなく、一限目を始めます。生徒の皆さんはお座りください』
一限目の始まりのアナウンスが流れる。ナイスだ、アナウンス。
「うわっ。もうか~。この話はまた後でね」
そう言い残し、皐月は自分の席に戻っていく。
「ふぅ~……」
「? どうして、ほっとしてるの?」
「なっなっ何でもない!! 気にするな」
アナウンスのおかげで、何とか質問攻めにならずに済んだ。
さて、今日も忙しくなりそうだな……。
俺はそれを強く予感するのだった。