第二十一話『得られた答え』1
ようやく投稿できました……。
これは凄いな……。
外からでも相当な施設だと思っていたが、まさかここまでとは。これには息を飲むしかない。
暁教官が来いと言った研究施設は一つの大企業と化していた。今も驚いている。
こんな部外者が立ち寄っていいのだろうか。何だか不安になる。
俺が今いるのは、一階のフロントだ。暁教官とはここで待ち合わせることになっている。
一階の天井にシャンデリアとか、どんな研究施設だ、ここは。
そろそろ、移動したい。このいかにも出来そうな雰囲気は俺には合わないかもしれない。
「やあ、待たせたね。来てくれて嬉しいよ、司君」
そんな気分になっていると、スーツ姿の暁教官の声がした。
「どうだ、私の研究施設は」
「とりあえず、ここの雰囲気に圧倒されました……」
「確かに、高校生にとっては居づらいだろうな」
俺の気持ちを察してくれたのか、暁教官は少し苦笑いをしている。
その通りです、暁教官。とりあえず、移動したい。
「そろそろ移動しようか、司君」
「はい、お願いします」
「ああ。ついてきてくれ」
暁教官はそう呟いた後、歩き始めた。
俺もその後ろを歩いていく。
「あの、暁教官の研究室は一階ではないんですか?」
「それはそうだろう、司君。私の研究室は四階にある。何もここの研究施設の全部が私のものではないさ。
様々な人達が共有しあって使っているのだ」
確かに、考えてみればそうか。
暁教官の言うようにここはある一つの集団ではなく、沢山の人達と共有して成り立っているようだ。
そうでなければ、ここまで豪華な研究施設はないだろう。
「色々な意味でここは勉強になりそうですね」
「ああ、そうだな。私も最初訪れたときは驚いた。これなら神人に負けていないのではないかとまで思った。充実しているよ、ここは。おかげで司君をこうして招待出来たことだ」
暁教官は嬉しそうにそう言った。自分の生きがいを見つけたのかもしれない。
そういえば、俺の指導が終わった後、暁教官は生きがいを見つけたいと言っていた気がする。それが今叶っているのだと俺は感じた。
暁教官には色々と感謝している。だから、こうして満足げに仕事をこなしている姿を見れて嬉しい。
「それは良かったですね、暁教官。ますます期待が持てます」
「よせよせ、照れるじゃないか。とはいえ、今回は結構自信がある。早く見せたい」
もしかして俺より楽しんでいるんじゃないか、暁教官。
まあ、悪い事ではない。
暁教官と会話をしながら、エレベーターに乗る。エレベーターもやけに豪華だった。
赤いカーペットとシャンデリアとか、どこの高級ホテルだ。変なところに費用を掛け過ぎだ、ここは。
いや、気分は最高だけど。
「そういえば、司君に会わせたい、いや司君に会いたい人が私の研究室にいる。少し忘れていた」
「俺に会いたい人ですか?」
まったく想像がつかない。いったい誰だろうか。
残念ながら、今の所ここでの知り合いは暁教官だけだ。
「君の事を下の名前で呼んでいたから、恐らく知っているはずだよ。まあ、会えば分かる」
「それもそうですね」
今も全然見当がつかないが、きっと分かるはずだ。
そうこうしている内に、エレベーターは四階に到着していた。
さっさと、俺と暁教官は四階のフロアに入る。
暁教官の研究室がある四階は無駄に華やかだった一階とは異なり、色彩は少なく至ってシンプルな構造だった。これが俺の想像していた研究施設だ。
まあ、強いて言うのなら俺にはまだ理解出来ない機械や技術がここに沢山あることだ。
「どうだ、私の研究室は?」
「はい、凄いです。一番驚いたのは、研究員一人ひとりの手際の良さですかね。暁教官と共に研究している者達は全員優秀だという事が良く伝わってきます」
「…………まさか、そこまでの高評価を得られるとは嬉しいよ。そう言った言葉があれば、私達も頑張りがいがあるものだ」
真剣に作業をしている研究員の横を通り過ぎながら、そんな会話をする。
ここは別の意味で素晴らしい。新しい武器には期待大だ。楽しみで仕方がない。
「さて、ここだ」
エレベーターから少し歩いたある部屋に暁教官は立ち止まった。
どうやらここが目的の場所のようだ。
暁教官は所持していた鞄からカードキーを取り出す。厳重あってこその研究室なのだろう。
カードキーを通し、指紋認証、パスワード入力を行った後、スッと厳重な扉が開く。
「さあ、入るぞ」
俺は軽く頷き、暁教官の後に続いて中へと入った。
中に入ると俺には理解出来そうにない多様な機械が並んでいた。ここで開発が行われていたのだろう。って、そんな事より俺には気になることが一つ。
「…………彩那さん?」
「はい!! 私は柊彩那ですよ、司さん」
彩那さんはにっこりと微笑む。
なぜ。どうして、彩那さんがこの研究室にいるんだ。
もしかして、ここの一員なのだろうか。前会った時は私服だったが、今日は暁教官と同じくスーツ姿だしな。
「どうして、彩那さんがここに?」
「やはり、知り合いだったんだな。彼女には情報提供と開発の手伝いをしてもらっていた」
「暁さんの言う通りで、私はここの研究員たちの協力者です。だから、あまり変な誤解はしないでくださいね」
「そういう事でしたか……」
とりあえず、事情は飲み込めた。
それにしても、本当にこの人何者だ。ますます柊に似てないぞ。親子なのか、本当に。俺の脳裏にそんな疑問がよぎる。
まあ、卓越した才女なのだろう。
「またお会いできて、本当に良かったです。どうですか、成実とは?」
「…………まあ、仲良くさせていただいてます」
当たり障りのない返答をする。こういう質問は返答に困るから、勘弁してほしい。
とりあえず、無難に答えはずだ。
「そう、なら良かったです。これからも成実と親密な関係を築いて下さいね」
「…………はい、分かり――――ってえ? 彩那さん、何か勘違いしてませんか?」
「あら、そんなことないですよ。成実は司さんにとって大切な恋人ですよね」
いや、これ絶対勘違いしているぞ。
まさか勘違いも一級品なのか、彩那さん。そろそろ鑑定を始めたらどうですかね。
まあ、楽しそうなので深くは追及しない。
「確かに、俺にとって柊は仲間です。しかし、決して恋人とかそういうのではないので」
「……それは残念です。人生の半分は損していますがまあ、この話は今度にしましょうか」
えっ、そんなに大事な話だったのか。
色々と驚きである。というより、俺と柊は合わないと思うが。
「さて、話を変えますね。暁さんから例の話は聞いていますね?」
「もちろん、確か能力略奪剣という武器が完成されたのですよね」
「いいえ、まだ完成したわけではありません。一応、現段階では能力消滅剣の上を行く武器だと私達は自負しています」
彩那さんは自信ありげに話す。相当の成果が出たのだろう。
でなければ、まず俺にこんな話は来ないはずだ。
隣にいる暁教官も強く頷いている。
「スキルディスピアはほとんど完成間近です。残りは最終テストを行うのみです。そのテストを司さんにしてもらいます」
「その為に今日は俺を?」
「最後は持ち主になる人物にテストしてもらわなければ意味がありませんから」
「ちなみにその内容はどのようなものでしょうか?」
「内容はそんなに難しい事ではないです。固有スキルを持った神人と軽く決闘するだけです。そこで、スキルディスピアが作動するかどうか確かめます」
神人との決闘か……。
テストしては申し分ないか。でも、いったい誰と決闘するのだろうか。
さすがにここの研究員とではなさそうだ。
そんな風に思っていると、彩那さんから耳を疑う言葉が飛んでくる。
「ちなみに、司さんと決闘するのは私です」
「はい?」
「ええっと……聞こえませんでしたか、決闘相手は私――柊彩那です」
「それ、本当に言ってますか?」
つい何度も尋ねてしまう。
幾らなんでもそれは無理があるような気がする。
だが、彩那さんの表情を見ると嘘ではないようだ。
「む。もしかして相手が女性だからってバカにしてるんですか? こう見えて、昔は相当の実力者だったんですよ」
「いや、そういうわけでは……」
「確かに昔比べれば実力は落ちていますが、それなりには戦えますよ」
これはまずい。
彩那さんが柊の母親でなければ望むところだが、このまま決闘すると良心が痛む。
それにそんな拗ねた表情されると、答えが出しにくい。参った、どうする。
「とにかく、これは決定したことですから変更できませんよ」
「え、そもそも拒否権なかったんですね……」
なんて理不尽。
「だから、ここは従ってください。お願いしますね、司さん」
今、初めて柊と似ているところを見つけた。
うん、凄く強引だ。
「それでは、早速始めましょうか」
「はい、分かりました……」
追記
明日、投稿予定です。