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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第四章 決断編
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第二十話『揺らぐ信頼』7

 モチベーションが……。

 電車に乗ってから、俺と千草には一切の会話が無かった。

 もちろん、話す内容が無かったわけではない。ただ、今の俺には千草に声を掛けられないのだ。

 理由は分からない。千草はまるでタイムリミットでも迫っているかのような焦った表情をしている。

 どうしても話さないといけない……。そんな思いが千草から伝わってくる。

「…………」

 俺は今もこうして黙っている。隣にいる千草が遠く感じられる。

 嫌な予感がする。

 これもまた理由は見当もつかない。少し気持ちが萎えてしまった。

 俺達の目的地である來住町の東エリアはもう少しだ。

 心配が募るとはいえ、今更引き返せない。きっと、大丈夫だろう。

「なぁ、千草?」

 そう思い、ようやく俺は千草に話しかける事が出来た。

 俺の声を聞いた千草は、いつもの表情に戻りこちらを向く。

「…………どうしたの?」

「えっ、いやそのだな……」

 こうしてただじっと、聞かれると話しづらい。

 参ったな、話す話題を考えていなかった……。さすがに、ここで千草の話を聞くわけにもいかない。

 どうする。

 俺は少し考える。何か聞きたいことは…………あっ、そうだ。

 考えている中で一つ気になっていた事を思い出す。それを聞くか。

「千草、お前どうやって七瀬の銃弾を弾いたんだ?」

「…………ああ、そんなこと」

 千草は少しがっかりしたように呟く。

 やはり、千草にとっては銃弾を弾くというのは当然なのだろうか。だとしたら、とんでもない実力者をチームに入れてしまったな。

 もちろん、俺としてはありがたい。

 とりあえず、今後の為にこれだけは聞いておきたかった。

「もし嫌じゃなければ、俺に教えてくれないか?」

「…………別にいい。けど、千草から学ぶ必要ないと思う」

「いや、そんな事ない。お前にしか分からないコツやテクニックがあるはずだ」

 普通、銃弾を弾くなんて出来ないからな。

「…………スズがそういうなら、分かった」

「ありがとうな、千草」

「…………大丈夫。…………理由は簡単。七瀬の癖を読んだからよ」

「癖を……?」

 七瀬は俺達の中で中々独特な戦い方をする。

 そんな七瀬からあっさりと癖が読めるのだろうか。

「…………うん。少し分かりにくいかもしれない。…………千草が読んだのは『心』の癖」

「心に癖なんかあるのか?」

「…………ある。もちろん、いつも現れるわけじゃない。…………それが分かるのは戦闘だけ。精神が変化しやすいから」

 確かに、人と対決する戦闘の時ほど精神が変わりやすいものはないだろう。

 状況が変化していくごとにそれがよく分かる。

 俺ももちろんいつも平然としているわけではない。当然、油断したり焦ったり色々とある。

 千草が言っているのはそのような局面で現れる動作や精神のことだ。恐らくだが。

「…………七瀬は、最初千草を見定めるような攻撃を仕掛けてきた。その後、牽制していた。…………そこで、思った。七瀬の動きは感情と似たような動きをする。

 だから、自信があった七瀬は千草に目掛けて真っすぐ撃ってきた。…………そこからは簡単。相手が狙う場所は決まっている。それをただ弾いただけ」

「なるほどな……だから、あの後とんでもない銃弾を放たれても弾けたのか」

「…………うん。結局、大事なのは分析。一回の攻撃でどれだけ読み取れるか、それが決め手」

 千草の言っている事は最もだ。

 だが、それを平然と成し遂げるのはやはり凄い。いったいどんな訓練をしていれば、そうなるのだろうか。

「やっぱり凄いんだな、千草」

「…………これぐらい普通」

「いや、それが凄いから」

 凄いからこそ、そんな千草が非常に焦ったようにしているのが気になる。

 気を使っているから、俺には一切心配させる言葉は口にしない。

 やはりとても重要そうだ。

「着いたな、降りるか」

 そうこうしている内に目的地の最寄り駅に到着したようだ。

 俺は声を掛け、千草と一緒に駅のホームに降りた。

「そういえば、千草の家ってどこなんだ?」

「…………この近く。後で案内する」

 そうなのか。

 少し意外だった。てっきり神庭町に住んでいると思っていたが。

 まあ、俺の考えは置いておこう。

 さっさと、俺達は駅を出る。

 平日という事もあってそこそこ人が來住町を歩いている。

 さて、研究所はどこだろうか。辺りを見渡す。

 すると、真っすぐ進んだ奥に研究所らしき大きな建物があった。結構大きいぞ、研究所。

 おかげで場所は分かった。

 後は、千草をどこで待たせるかだ。

「千草、ここの近くに喫茶店とかないか?」

「…………喫茶店ならここを進んで右にある」

 どうやら研究所と同じ進路にあるらしい。それなら、好都合だ。

「なら、まずはそこ行こう」

「…………案内する」

「ありがとう」

 千草は喫茶店がある方向へ歩き出す。

 俺もそれについて行く。

 ここも神庭町に負けず劣らずだな。学生より社会人に人気な町かもしれない。

 歩き始めてから五分。

 千草の案内のおかげで喫茶店まで着いた。

「…………ここ、喫茶店」

「おう、ありがとうな。それじゃあ、悪いんだがこの中で待っていてくれないか?」

「…………分かった。待ってるから」

「ああ、悪いな」

 少し心が痛いが、仕方がない。

 千草は気にしないでとでも言いたそうな表情をしながら、中に入っていった。

 さて、俺は移動しようか。

 本来の目的を果たすとしよう。そう思い、俺が歩き始めた瞬間。

「――――っ!!」

 また、謎の視線を感じた。

 一体何なんだ、これは。気のせいじゃなかったということか。

 とりあえず、攻撃をしてくる様子ではない。

 ただ不気味だ。

 遠くからそいつは笑っている気がする。

「…………」

 視線は感じるが、近くに人影はない。

 大丈夫だよな、きっと。

 そんな不安を持ちながら、俺は歩みを進めた。

 

 

 


 

 

 あまりにも長い話になりそうなので、話を分けます。投稿スペースは本当にすいません。変な怠慢期に入ったみたいです。頑張ります。

 追記

 諸事情で全く書く余裕がありませんでした、本当にすいません。明日こそ投稿する予定です。

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