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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第四章 決断編
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第二十話『揺らぐ信頼』3

 次の日。

 今日も代表メンバー達は訓練に励み、他の生徒達は準備に取り掛かっている。気合が入っているせいか、時々風紀委員に捕まっている生徒もしばしば。

 まあ、それも仕方がない事だ。

 そんな話はさておき、昨日と変わった点といえばやはり代表メンバーの件である。

 今朝、俺達の学年の教室に瀬那生徒会長、瀬那先輩、若月先輩などの風紀委員と生徒会が訪れてきた。事情を知らない者達は困惑していた。

 瀬那先輩達は淡々と内容を述べていたが、ほとんどの生徒が身震いなどをしており、代表メンバーになろうという者は誰一人いなかった。普通ならそうだよな。

 俺だって本音を言えば、参加したくなかったわけだがもう後の祭りだ。

 ここでぐだぐだとしているのは男として情けないだろう。とりあえず、俺達のチームが代表になるのは確定に近いというわけである。きっと柊はこんな展開を待っていたのだろう。

 昼休みの途中で柊に会った時は、俺でも引くぐらい嬉しそうな笑顔を浮かべていた。あれは喜び過ぎだ。まったく、誰のおかげで選ばれたのか分かっているだろう、あいつ。

 さて、俺の愚痴を含んだ話はここまでにしよう。

「今、何時だ……?」

 ふと時間が気になり、第一訓練場の時計に見る。

 ちょうど午後三時か……。

 他の生徒達は今も準備をしているだろう。いや、別に油を売っているわけではない。

 今日は珍しくあの瀬那先輩から休みをもらったのだ。最近、全然休んでいなかったから本当に助かる。

 とはいえ、今日は他で色々と忙しくなるが。それに後で暁教官の研究所に行かなければならない。こっちは楽しみだが。

 久しぶりの柊達の指導だしな。まあ、教官になったわけではない。

 一応、瀬那先輩が監督役なのだがいつの間にか俺がチームを仕切るようになっている。

 そんな理不尽な事情もあって、今に至るわけだ。

「それにしても柊達、遅いな……」

 俺が訓練場に入ってから二十分は経っている。いつもは早めに来て、訓練しているのになぜ今日に限ってこんなに遅い。

 まあ、気長に待つか。俺が休憩できるしな。

 とは言うものの、暇だ。とりあえず、喉が渇いたので飲料水で潤す。

 その後、軽くストレッチをした。

 しばらく団体戦はないが、体がなまっていては元も子もない。神王戦という大舞台のあるわけだし手を抜いては駄目だ。

 考え事もしながら、体をほぐしていこう。

 出るからには勝利を掴まなければ。今年は五連覇が懸かっている。

 俺がアドバイスするのも大事だが、まずは自分から強くならなければ意味がない。

 あいつらの為にも頑張ろう。

 そんな決心をしていると、ようやく柊達が中へと姿を現す。

「あっ、司。珍しいわね、あなたがいるなんて」

「どうやらあの先輩から休暇をもらったようですね」

「うん、良かったよ。最近司、死にそうな顔をしていたし」

「…………スズ、お疲れ」

「なるべくなら、普通に挨拶してほしいんだけど」

 心配してくれるのはありがたいが、俺だけ場違いみたいな空気を作るのは止めてほしい。

 まず、柊は今日会ってるだろうが。他にも色々と文句があるけど、面倒だから言わないでおく。

 意外とこの中で一番千草がまともかもしれない。

「それよりもどうして柊達は一緒なんだ?」

 とりあえず、気になったことを尋ねる。

「ああ、それは簡単よ。私達は瀬那先輩に呼び出されたのよ」

「なるほど、そういう事か……って待て。だったら、どうして俺だけ呼ばれなかったんだ?」

 もしかして休みがもらえたのはそういう理由なのか。

 嫌な結論に辿り着き、少し悲しい気分になる。

「まあ、休憩出来たんだから良いんじゃない?」

「分かった、文句は言わない。それで柊達は瀬那先輩と何を話した?」

「それはもちろん神王戦よ」

「……そうか」

 どうしてだから俺を呼ばないんですか、瀬那先輩。

 精神的に疲れてきた。まったく、勘弁してくれ。

 とりあえず、俺がいる目的と同じ話題なので我慢しよう。

「俺も神王戦の事を考えていた所だ。今まで戦ってきた団体戦とは格が違うからな。それは分かっているだろう?」

 俺の問いに全員頷く。

 まあ、聞くまでもないな。ここで少しでも動揺されたら、俺が困る。

 無用な心配で安心した。

「柊、詳しく話してくれないか?」

「司がそう言うなら話すわ。瀬那先輩から聞いたのは神王戦の競技種目について。私や七瀬、伊吹、千草がどの種目に参加するか考えておけだってさ」

「教えてくれてありがとうな、柊。とりあえず、事情は分かった」

 今更俺には選ぶ権利がない事は無視する。

 一応、俺は提案者だったんだけどな……。瀬那先輩、恐るべし。

 そんな愚痴はさておき、競技種目か。

 神王戦はただ学園で実施されている団体戦やトーナメント戦のようにただ戦うわけではない。

 速さなら速さを、正確さなら正確さをというようにある一つの観点ごとに競い合う。もちろん、実力は必要だけどな。

 一つを極めた大会が、神王戦なのだろう。表彰は個人と総合があったはずだ。

 だから、何が長所で何が短所なのかしっかりと見極めておく必要がある。その為の競技種目選択かもしれない。

 つまり、今の俺達は改めて自分を知らなければいけないのだ。

「一応聞くが、柊達はどの競技種目に出るか決めたのか?」

「私は決めたわ!! これしか私には合わないわ!!」

「その自信は凄く不安なんだが……」

「だ、だ、大丈夫よ!! し、心配いらないわ!!」

 後で柊が出ようとしている競技種目を確認しよう。

 柊の事を半信半疑の目で見ながら、そう思った。

「七瀬はどうだ?」

「私も一応。色々と訓練してきていますから、何が不得手かは分かっているつもりです」

「うん、七瀬は大丈夫そうだな。じゃあ、次は伊吹だな」

 まったく心配する要素はないので、さっさと答えを聞いていこう。

「あっ、僕は……まだ考え中かな」

「別に焦ることはないさ。神王戦までは余裕がある。じっくりと考えて答えを出せ。まあ、もし不安だったら相談しろよな」

「うん!! ありがとうね、司!!」

 こちらこそ天使の笑顔をありがとう。

 伊吹はまだ不確定要素が多いから、俺も考えないとな。とりあえず、今は大丈夫なはずだ。

 さて、最後に千草だ。

「どうだ、千草? お前は決まっているか?」

「…………決まっている」

「そうか、なら良かった」

「…………スズは心配する必要ない」

「そう言ってくれるなら助かる」

 千草からは一つの決意が見えた。やる気満々のようで安心する。

 あらかた、問題なさそうだな。

 後はここから吟味していけばいい。

「さて、柊達の意見が聞けた所で訓練といこうか」

「そうね、私もいい加減動きたかった所だわ」

「やる気十分なのはいいが、柊。少し待て」

「えっ、何よ?」

「今日からはだいぶ訓練内容を変える。もっと柊達に強くなってもらうためにな」

 今までは団体戦用のトレーニングだ。

 だが、それでは明らかに神王戦という大舞台には意味を為さないだろう。だから、変更だ。

 それは柊達も分かっているはずだ。

 とりあえず、反対はない。

「分かったわ。それでどのようなメニューなの?」

「ああ、ここからはより個人個人で変化してくる。というわけでまずは一対一で試合をしてもらう。これが自分を知るうえで一番効果的な方法だ」

 普通に訓練をするだけでは全てを理解するのは難しい。

 もちろん、試合でも全てを理解出来るわけではない。ただ、試合はハプニングという訓練ではあり得ない状況が起こる。

 勝利に絶対がないというのはこういう事を指す。精神、身体などその全てが関係してくる。

 だから、そこで自分を知る機会を得られるのだ。俺も暁教官に稽古をつけてもらっていた時は何度も試合をした。

 勝つのも負けるのも良い経験となって自分を成長させる。

 とまあ、俺の考えが伝わっているといいが。

 見た様子、分かっている者もいれば分かっていない者もいるようだ。

「まあ、試合をしてみれば嫌でも分かるさ」

「そう。なら、その提案に私は乗るわ」

「私も賛成です」

「僕もだよ」

「…………スズ、良案」

「よし、文句は無さそうだな。それじゃあ、始めよう」

 後で用事があるけど、少しぐらいいいだろう。

 さて、久しぶりの指導やってやるか。

 


 


 


 

 明日も投稿します……。

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