表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第四章 決断編
121/134

第二十話『揺らぐ信頼』1

「じゃあ、司君達のチームが神王戦のメンバーに加わるということでいいわね?」

 柊達に参加の確認した後、俺は生徒会室に赴いていた。

 今、瀬那生徒会長に参加の承諾を頂くところである。

「はい、瀬那生徒会長が承諾してくださるのなら全然構いません」

 俺は淡々と言う。

 とりあえず、瀬那生徒会長が断る要素は無さそうだ。そもそも、俺達が出るというのは元々伝えてあった。

 だから、これは確認であり俺からの一方的な要望ではない。

「なら、良かったわ。これで何とかメンバー不足は防げそうかしら。もちろん、一応メンバーの応募は募るつもりだからそれは分かっておいてね」

「はい、了解です」

 これで瀬那生徒会長としても肩の荷が下りるのだろう。安心している表情がその証拠だ。

 瀬那先輩も少しは楽になるかもしれない。そうでもしてくれないと、俺の命が危ない。扱いが酷いからな、まったく。

 そんな事はさておき、

「そういえば、瀬那生徒会長。神人の一年生が何人も辞退した原因は分かりましたか?」

 ふと気になっていた事を思い出したので尋ねた。

 俺の質問を聞いた瀬那生徒会長は難しい顔をする。

「残念だけど、まったくね。個人的な見解としては誰かに脅されたかが妥当かなと思っているわ」

「そうですか……。すいません、もう関係のない話をしてしまって」

「いいのよ、別に。私も引っかかっていた件だし、何か分かったら教えるわ」

「ありがとうございます、瀬那生徒会長」

 この様子だとこの件に関しては瀬那生徒会長達がやってくれそうだ。情報はあわよくばだな。

 俺の心配する必要はもうない。少し考え過ぎた気もする。

「礼は良いわ。とにかく、神王戦の活躍を期待しているわ」

「ご期待に添えるように努めます。それでは、俺はこれで」

「ええ、わざわざありがとうね」

 俺は挨拶を済ませ、生徒会室から退出する。

 廊下に出ると、既に日は沈み掛けていた。

 もうそんな時間か……。

 今日も訓練は他の場所でするしかない。俺だってしっかりと訓練はしているからな。

 自分で言うのも変だが、最近は割と真面目に行動している。

 だから、俺は別に問題児じゃないぞ……問題児になってしまったが。

 きっと心までは問題児ではないから大丈夫だ。何だが悲しくなってくるな、これ。

 とりあえず、帰宅しよう。

 恐らく柊達はもう学園にいないはずだしな。

 そう思い、部屋に寄ることなく外に出る。

「…………やっぱり誰も待っていないか」

 結構遅い時間なのだし、帰ってしまっても仕方がないだろう。

 とはいえ、少し寂しい気分には……ならないからな。

 それにしても疲れるような、最近。

 瀬那先輩にあらゆる場所を掃除させられるわ、千草にストーカーまがいのことされていたわ、面倒な会議に参加させられるわ、何かと俺はトラブル体質なのかもしれない。

 なんて、理不尽だ。

 ひょっとして俺は問題を起こすのではなくて、問題を抱える意味での問題児かもしれない。なんて、迷惑だ。

 まあ、いい。

 少し頭を空っぽにしよう。俺は歩きながら、そんな事を思った。

 あんまり考え過ぎのは良くない。無心で家路を目指すのも悪くないかもしれない。

 自宅まで残り半分くらいだ。

「…………」

 誰も人がいない。

 やけに静かだな、今日。不気味なくらい俺が歩いている場所は静寂に包まれている。

 無心になったせいで、人も無になったのか。いや、狙っていったわけではない。

 少し警戒した方がいいか。

 そう思っていると、

「……!! 誰かの視線か?」

 またもや変な視線を感じてしまった。

 この感じは千草ではない。何というか千草の時より背筋がぞっとするような視線だ。それに憎しみを感じる。

 まったく、ついてないな。

 ここで剣を出すなんてことは出来る限りしたくはない。

 俺は辺りを見渡す。ここ一帯は植林が多いから隠れるには持って来いだな。

「…………出てくる気はないか」

 そもそも俺の勘違いもある。

 だから、自分から向かって行くことはない。

 それに仮に相手がいたとしても、今は敵対心ないと思った。

 なら、無視するか。

 警戒心を解き、俺は歩き始める。

 視線が無くなった。

 気のせいだったかもしれないな。

 そう思い、俺は歩みを止めない。だが、違和感はあった。

「……急に人が多くなったな」

 視線が感じない場所には人が先ほどとは嘘のようにたくさんいたのだ。

 やっぱり気のせいではないのだろうか。

 俺の疲れでもなさそうだ。とりあえず、早く帰ろう。

 家まではあと少しだ。

 変な事に巻き込まれないのを祈る。

 そう思いつつ、俺は家路を急ぐ。

「…………」

 よし、見えてきたぞ。

 さっさと家に入って疲れを癒やすとするか。

 俺が疲労を感じながら、家の傍で行くと、

「あっ、あかつき教官」

 家の前で暁教官が立っていた。

 新しい情報でも手に入れたのだろうか。

 暁教官も俺に気が付いたようだ。

「久しいね、涼風司君」

「こちらこそお久しぶりです、暁教官。それでなぜ家の前で待っているのですか?」

 以前なら、暁教官は普通に俺の家にお邪魔していた。

 それなのに、今日は外で待っているいや待たされている。

 すると、暁教官は何だか困った表情しながら訳を話す。

「いやあ、その事なんだが……君の弟が料理をご馳走するから外で待っててほしいと言って中に入れてくれないのだよ。

 何やら驚かせたい様子ではあったが」

「はぁ、そうですか……」

 なるほど、なぎさのせいか。

 確かに俺の弟である渚は訪問客が来ると、料理を何としてでもご馳走したがる。他の素直なのに、そこだけは意地っ張りなのだ。

 それも俺の母と似ている。まあ、天使だからこっちとしては嬉しい限りだが暁教官に悪いだろう。

「まあ、事情はそういう事だ。そろそろ夏だからいいものの、冬は厳しいぞ」

「すいません、暁教官。俺と一緒なら、恐らく大丈夫だと思います」

「そうか、それは助かる」

「それじゃあ、入りましょうか」

「そうだな。何だか、すまないな」

 そんな会話をしながら、俺と暁教官は家の中へと入っていった。

 

 

 


 

 

 


 追記

 明日、投稿予定です!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ