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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第四章 決断編
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第十九話『問題児の打開策』7

 

 俺と千草が柊達のいる部屋に行くと、案の定柊はこの世の終わりでも見ているようなぐらいひどく落ち込んでいた。

 落ち込み過ぎだろ、おい。七瀬と伊吹は柊を色々と慰めていたらしい。

「あっ、司!! ちょうど良かったよ」

「あの柊さんを何とかしてもらえますか、司君?」

 とはいえ、そろそろ限界に感じたのか今ちょうど来たばかりの俺達に助けを求めてきた。

「分かった、何とかする」

 そんな事になるとは思っていたので、俺は素直に引き受ける。

 俺の言葉を聞いた二人は安堵の表情を見せた。

 ここまで心配させる柊にはまさに意気消沈という言葉が似合っているな。いや、気が滅入るのも分からなくはないが。

「お~い、柊。大丈夫か?」

「これが……大丈夫に見える……司」

「見えないな……」

 完全にやる気は消え入ってしまったようだ。

 下ばかり向いているしな。まったく、しょうがない奴だ。

 確かに柊は俺達の中で努力して実力を上げてきた。神人トーナメント戦の時は、一回戦だけだったが全力出し切れていた。

 俺と初めて会った時から確実に強くなっている。それは俺も分かっている事だし、他のみんなだって分かっているはずだ。

 だが、それと同時にまだ神王戦では対抗できない事も理解している。

 千草も柊の実力を知っていたからあのような言動が出来たのだろう。でも、柊は諦めていなかったのだ。

 俺達に無理だと言われている中、柊は今日まで信じていた。自分が選ばれると。

「司、私は駄目だったよ……。やっぱり、私は所詮最弱なのかな……」

 しかし、現実はそうじゃなかった。

 結局自分はその程度だったと気付いた瞬間でもあった。だから、柊は今こうしている。

 改めて実感してしまった実力と屈辱。きっと悔しいのだろう。

「せっかく司達と沢山訓練して強くなったのに……チャンスをものにできなかったよ」

 柊は自分に悔いている。俺達に対して罪悪感でもあるのかもしれない。

 別に気にする必要ないと思うが、柊は気にするのだ。

 そんな理由でもあるから、俺と目を合わせようとしない。

「なぁ、柊。お前は本当どうしたかったんだ?」

 俺はそんな問いをしてみた。

 これは俺からの試験でもある。

 柊は少しの間の後、口を開く。

「もちろん、代表メンバーに選ばれたら今まで以上に訓練に励んで、この学園の優勝五連覇に貢献したいわ。でも……一番したかったのは私は、もう最弱じゃないということを証明したかったかな。

 それが私の目標でもあるし、司達に出来る最高のお礼だから。まあ、あくまでもしもの話だけどね……あはは」

 悲しそうに笑いながら、言葉を紡いだ。

 最弱ではないということを証明したかった……か。柊らしい誠意かもしれない。

 さて、柊の真意は理解した。後はやる気があるかどうかだ。

「そのもしもが本当だったらどうする?」

「……えっ?」

 さすがに驚いたのか、ようやく顔を上げた。

 七瀬や伊吹も少し気になっているようで、早く話してほしいという様子だ。

「そう、仮定ではなく実際の話だとしたら柊。お前には覚悟があるか?」

 どこの熱血教師だよというツッコミはなしで。

 俺も少し恥ずかしい。でも必要なことだ。

 七瀬や伊吹、千草もそれは了解しているはず。

 もちろん、柊にも。

 柊は俺の顔をしっかりと見てこう言い切った。

「あるわよ、もちろん。私は最初からそう決めてる」

 当然だとでも言いたそうな表情だった。

 今の柊には確かな決意がある。なら、俺はそれに応えてやればいい。

 その為に俺はわざわざ会議でこの策を提案したのだから。

「そう言うと思ったぜ、柊。もし柊がここでないと言ったらどうしようかと思っていたさ。まあ、あり得ないけどな」

「それじゃあ、司。まさか……」

「ああ、そのまさかだ。神王戦に一つ特別枠が出来た。柊、俺の言いたい事は分かるな?」

「ええ、その枠で神王戦に参加しろってことね!! でも、どうしてなの?」

 嬉しい気持ちがある中で、柊は尋ねてきた。

 普通なら会議の事を話すのはあまり良い行いではないが、この際は別に構わないだろう。

 そう思い、俺は素直に話した。

「実はな、今年の代表メンバーの一年生が突然五、六人辞退してしまった。それで人員不足が発生したんだよ。そこで特別枠出来たというわけだ。

 ちなみにこの話を提案したのは俺だけどな」

「「「えっ?」」」

 柊、七瀬と伊吹の三人が揃って目を見開いた。そんなに意外なのか……。

 何とも言えない気分だ。

 それはさておき、俺は話を続ける。

「まあ、なんだ。俺は瀬那先輩の命令で会議に参加して誰も提案しないものだから自分が案を出したという感じだ。最初はほとんどの生徒が賛成してくれなかったさ。

 だけど俺の意思が伝わったのか、みんな受け入れた。だから、こうして機会がある」

 いや、荒井先輩も提案していたけどそれは割愛。

 色々と大変だったが、とりあえず異例の特別枠を獲得できたのだ。

 この大船に乗らないのはあとで必ず後悔するだろう。

「ここまでの過程はよく分かったわ、司。でも、今の話を聞くと私だけじゃメンバーが足りないわよね?」

「確かに柊の言う通りだ。でもな、柊。俺は一言も柊だけなんて言ってないぞ。特別枠が出来たと言ったんだ。しっかりと説明してやる。

 特別枠は人間側の団体戦一チームだ」

「……!! それは本当ですか、司君!!」

「本当なの、司!?」

 最後の言葉を聞いた瞬間、七瀬と伊吹が驚愕した表情をしながら聞いてきた。

 さすがにこれは黙っていられないか。

 柊も驚いているしな。

「ああ、事実だ。それが特別枠の条件でもある。今年は五連覇がかかっているのがある。だから、恐らくほとんどの団体戦チームは参加しないだろう。

 それがチャンスだ。今までの実例は一切ない。けれど、俺達にも実力を見せる場が存在しているんだ。七瀬や伊吹はどうする?」

「もう私には復讐心ないです。ですが、見返してやりたいという思いはまだあります。望むところですよ」

「僕は正直言えば自信はあまりないよ……。そんな大舞台で活躍できるかどうか。でも、僕も強くなりたい。こんな所で満足なんかできないよ」

 七瀬と伊吹は自分の思いをそれぞれ俺に伝えた。

 なるほどな……。

 柊は強さを証明したい。七瀬は神人を見返したい。伊吹は強くなりたい。

 俺は…………最強になりたい。

 ごほん。全員目指している事はこの通りばらばらだ。

 だけど、そこが俺達らしく良い所なのかもしれない。

 きっと頑張れるはずだ。そんな希望がある。

「そうか。なら、決まりだ。この特別枠は俺達が取る!! それでいいよな?」

 柊達は頷いた。

 少し面白くなってきたな。

「ここから神王戦準備で忙しくなるが、訓練は絶対に忘れるなよ」

「分かってるわよ、司」

「私もです」

「僕もだよ」

 みんなの決意は変わらないらしい。

 本当に良かった。そう安心しつつ、俺の話はまだ終わらない。

「よし、その意気だ。それじゃあ、これで最後だ。新たに仲間が入ることになった。

 な、千草?」

「…………うん。改めまして……宮美千草。これから……よろしく」

 千草は軽くお辞儀をした。

 これは千草と最初に会った時から考えていた。

 千草が俺達のチームに入ってしまえば、わざわざストーカーまがいの行為しなくて済むからだ。

 実力はまだ知らない。

 ちなみにチーム加入の事を話したのは、今さっきだ。

 最初に聞いた時はさすがの千草も驚いてたが、何とか無事了承してくれた。

 まあ、私情が入っているが柊達は分かってくれるはずだ。

「そう、よろしくね。ちなみにヒナは止めてよね」

「こちらこそよろしくお願いします、宮美さん」

「僕もよろしく」

「…………うん」

 無事、千草の加入も終わった。

 ようやく一つ大きな問題が無くなった気がする。

 とりあえず、自分にお疲れと言っておこう。

 だが、これからだ。

 まったく、大変だな……。

 

 


 

 

 


 投稿が遅れて申し訳ありません……。とりあえず、これで第十九話は終了です。 次回は第二十話です。投稿は頑張りますのでこれからもよろしくお願いします!!

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