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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第四章 決断編
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第十九話『問題児の打開策』6

 う~ん……休みがあるのに、どうもモチベーションが上がりません。何だか、すいません。もう少し頑張ります。

 俺の案が通ってから、会議は着実に進んでいた。

 恐らく、若月先輩と俺の気迫に押されて、意見をより発言しづらかったのが原因だ。とはいえ、ほとんどの生徒が俺の案を受け入れてくれた。

 ひとまずは計画通りということだ。

 今の所、俺と荒井先輩以外の案はない。この案は少し俺達を見直す良い機会になるはず。

 もちろん、本当はただ柊や伊吹、七瀬にちょっとしたチャンスを与えようと思っただけだが。

「もう意見は特にないわね……」

 瀬那生徒会長は周りを見渡しながら、そう呟く。

 視線が合った生徒達は深々と頷いている。どうやら異論はないらしい。

「じゃあ、最後に多数決を採るわ。この案に賛成の人はいるかしら?」

 まずは荒井先輩の決を採る。わざわざする必要もないと思うが、これは仕方がないのだろう。

 少し先輩がかわいそ…………いや、何でもない。

 見た様子だと挙手しているのは数人だ。ちなみに若月先輩は挙げていない。

「……もう下ろして結構よ。次はこの案に賛成する人はいるかしら?」

 瀬那生徒会長がそう言った瞬間、スッと多くの生徒の手が挙がる。

 よし、上手くいった。心の中でガッツポーズをする。

 俺は隣にいる荒井先輩を見た。案外、悔しそうな表情をしておらずむしろ納得した面持ちのようだ。

「……ほとんどの生徒が賛成ね。じゃあ、この案で決定ね!! 人員補充は人間側の生徒達からするわね。もちろん、私もその事に関してはしっかりと参加するから安心してね。

 やる気のある生徒、実力に自信がある生徒を必ず捕まえてみせるわ」

 瀬那生徒会長は決定事項を淡々と述べた。

 今更、異議はあるまい。とりあえず、安心だな。

 まったく、俺はどれだけ大変な役割に背負っているんだ。休む暇が本当にない。

「時間を取らせて悪かったわ。それじゃあ、解散よ!!」

「「「「「「はい!!」」」」」」

 相変わらず息ピッタリの返事と礼で疲労が募る会議は終わりを告げた。

 徐々に生徒達が部屋を出て行く。

 退出する生徒の中には俺を見て睨む者がいれば、呆気に取られている者もいて、俺の評判がどうなっているか少し気になった。

 まあ、そこまで考えていないけど。

 気が付けば、残っているのは瀬那生徒会長、瀬那先輩、若月先輩、千草と俺だけになっていた。

 さすがに俺がいる事は分かっていたよな。俺をちらっと見た後、千草は外に出て行った。

 恐らく廊下で待っているはずだ。

「ふっ。これからどうなるか、楽しみだ。もしかしたら、近いうちに一戦交えるかもな」

「さあ、どうでしょうね?」

 この挑発的な態度が若月先輩の素なのだろうか。

 そんな感想を抱きながら、俺も喧嘩を買うような態度で答えた。

「せいぜい、俺を退屈させないようにな。じゃあな、涼風」

「そちらこそ、度肝を抜かれないように気を付けてくださいね」

「そういう奴は嫌いじゃないぞ、涼風」

 何かを期待しているような笑みを見せ、若月先輩は廊下へと歩いて行った。

 とにかく悪い先輩ではないと思うが、少し鼻につく。

 若月先輩が去った後、瀬那先輩は大きなため息を吐いた。

「やっといなくなった……疲れる」

「お疲れさまです、瀬那先輩」

「まったくだ。それにしても司はよくあんな奴と長く会話出来るよな……。

 私なんて奴の口から一単語でも漏れたら、顔が歪むよ」

「そうですか……」

 さすがに嫌がり過ぎだろう。

 これはあれだな。生理的に受け付けないタイプなのだろう。

 俺にもそういう奴はいるので分からなくはない。もちろん、昔の話だ。

 確かに、瀬那先輩の顔色が先ほどよりだいぶマシになった気がする。

「とりあえず、ありがとうな。お前がいなかったら、この部屋は無くなっていたな」

「瀬那先輩はもう少し我慢をしましょう」

「そうよ、真央。いくら可愛いからと言ってやり過ぎだわ。そうよね、司君?」

「そ、そ、そ、そうですね!! はい、その通りです」

 なるべくならこういう同意は勘弁してほしいのだが。

 途中から少し考えがずれていたしな。いや、確かに瀬那先輩は美人の部類に入るが。

 この性格上、可愛いというのはどこかに吹き飛んでしまっている。

 時々見せる照れは何とも言えない。

 例えば、今とか。

「ね、ね、姉さん!! どうしていつもそうやってからかうんだ!! 私だって気にしているのだ……」

「そこが可愛いのよ、真央ちゃんは。ほら、ぎゅう~」

「ええい、くっつくな!! 司がいるんだぞ!!」

「いいじゃない、別に。まさか、司君のことが――」

「だ、だ、断じて違う!! 司も誤解するなよ!! お前の事、一切気にしていないからな!!」

 はいはい、分かってます。

 こういう様子を見ていると、この姉妹は学園を支えている人間だと思えないな。

 少し微笑ましくもある。それにしてもそんな顔を真っ赤にして抗議する必要はあるのだろうが。

 柊が見せる表情に似ているな。

 そんな事はいいか、別に。

「それじゃあ、俺もこれで失礼しますね。二人でどうぞお楽しみください」

「お気遣いありがとうね、司君」

「お前な!! 私を助けてくれないのか!!」

「いや、これは大丈夫ですよ。そうですよね、瀬那生徒会長?」

「ええ、そうよ。だから、ほら癒しだと思ってね」

「全然癒しの欠片もないわ!! いい加減にしろよ、もう!!」

 瀬那先輩は無理やり瀬那生徒会長から離れた。

 これぐらい元気があるのなら、もう大丈夫だな。

「仕方がないわ、今日はここまで。司君」

「はい、何でしょうか?」

「人員補充の話だけど、言うまでもないけどほとんどの確率であなた達のチームが選ばれるわ。それだけは頭に入れといてね」

「分かりました。ありがとうございます、瀬那生徒会長」

「いいのよ。さあ、もうお仕事終了よ。早く廊下に行きなさい。待っているのでしょう?」

「やはり瀬那生徒会長も分かりますか」

「ええ、だからもういいわよ」

 瀬那生徒会長の許可をもらい、ようやく解放された。

 俺は一礼し、退出する。もちろん、瀬那先輩にも。

「はぁ……疲れたな」

「…………お疲れ、スズ」

「損な役回りばかりやっている気がするな、まったく」

 廊下で待っていた千草と軽く会話を交わした。

 いつも通り無表情でどう話したらよいか困るけどな。

 だが、何となく千草には笑みがあった。

 少しくらい俺の事を分かってくれたのかもしれない。

「とりあえず、柊達の所へ行かないとな」

「…………そうだね。…………案内、お願い」

「ああ、分かってる。まあ、過度な期待はするなよ」

「…………分かった」

「それじゃあ、行くか」

 俺は千草は連れて柊達のいるいつもの部屋に移動した。

 それにしても本当に疲れたな。俺の気持ちはそれでいっぱいだった。


 

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