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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第四章 決断編
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第十九話『問題児の打開策』5

 今回、結構長いです……。

「会議が始まったけれど、まずは今回から人間側の生徒達にも協力してもらうことにしたわ。とりあえず、挨拶をお願い出来るかしら、真央」

 話題に入る前にどうやら自己紹介をしなければならないらしい。

 瀬那生徒会長に指示された瀬那先輩は頷き、席から立ち上がる。瀬那先輩と同時に他の生徒達も立ち上がった。

 相変わらず息ピッタリだな……。当然か。

「生徒会長から紹介に預かった瀬那真央だ。人間側の風紀委員をしている。

 私の周りにいるのは、風紀委員とボランティアで集まってくれたものだ」

 一応紹介されたので、俺達はお辞儀をする。

 その後、瀬那先輩はこう付け加える。

「まあ、中には問題児もいるが……」

 いや、それいらないです。

 そして、どうして俺が問題児だと分かるんだ。俺ってそんなに有名なのか、もちろん悪い意味で。

 自分の仕出かしたことを思い出しながら、情けない気分になる。

「とにかく、私達は力の限りに準備に協力するつもりだ。どうぞ、よろしく頼む」

 瀬那先輩は軽く会釈をした。

「……ということだから、みんな仲良くしてあげてね」

 瀬那生徒会長の言葉に全員が頷いた。

「今年は大変なんだな、ちびっ子」

「な、な、何だと!! 貴様は何回も何回も私を――」

「瀬那先輩、落ち着いて下さい。気にしても仕方がありません」

「すまない……また」

「よく分かっているな、問題児君」

 この先輩にもそう認知されていた。

 多少、心に傷が出来たが大丈夫だ。それよりも瀬那先輩の逆鱗に触れないでほしい。

 完全にからかっているのだろうな、この先輩。

「会議が進まないので、先に行くわよ。今日の議題はこれよ」

 瀬那生徒会長が言った瞬間、俺達の目の前に資料が出現する。

 凄いな、誰かの固有スキルだろうか。

 生徒会の中にはやはり相当の実力者がいるのかもしれない。確証があるわけではないが。

 俺は出現した資料を手に取る。その内容はもちろん代表メンバーについてだ。

「みんな、資料を見れば分かると思うけど実は代表メンバーが不足しているのよ」

 生徒達は資料に目を通し、顔を曇らせたり微妙な表情をしている。

 まあ、それもそうだよな。急にメンバーが足りないと言われても困惑するだろう。

 他の代表メンバーを見る限り、この状況を知らなかったみたいだしな。

 知っているのは生徒会、風紀委員、俺と荒井先輩だ。

「それに一番の問題は不足しているのが一年生だという事よ。少し人任せかもしれないけど、今の状況を打開出来る策を考えてほしいの」

「「「「…………」」」」

「さすがにすぐには思い付かないと思いますよ、瀬那生徒会長」

「それもそうよね……」

 瀬那生徒会長は資料を見ながら考えている。他の生徒達も名案は浮かんでいない様子だ。

 ちなみに俺もだ。

 ほとんどの生徒が策を探していると、荒井先輩が口を開いた。

「あの、ちょっといいですかね?」

「何か名案があるの、荒井君」

「いや、そんな大それた案はないです。僕としては単純に他の一年生を探せばいいと思うのですが」

 俺もそれは考えた。

 恐らく他の生徒も一度は考えたはずだ。まあ、悪くないと思うが。

「う~ん……確かにやる気のある一年生を探すのは悪くないかもしれないけど……」

 瀬那生徒会長も微妙な表情だ。

 きっと瀬那先輩に良いところを見せたかっただろうが、仕方がない。

 次頑張ってください、荒井先輩。

「すいません、もう少し考えてみます……」

「いや、全然大丈夫よ!! 一応一つの案が出たのだし、一歩前進よ。

 早速ありがとうね、荒井君」

「こちらこそ、意見を尊重してくださって感謝してます」

「いいのよ、それじゃあ――」

「却下だ」

 突然、俺の向かい側から厳しい言葉が飛んできた。

 その席は神人の風紀委員長の確か……若月先輩だ。先ほどまでは口を一切開く事はなかったが、急に沈黙を断ち切った。

 正直少し驚いている。周りも俺と同じ感じだな。

「一切参加していなかったお前がどうしてここでしゃしゃり出るのだ!!」

 一番に反応したのは瀬那先輩。怒りは再び頂点に達しようとしている。

 銃をまた若月先輩に向けているし、もう面倒になってきた。それに荒井先輩は瀬那先輩に守ってもらって凄く嬉しそうだ。

「まあまあ、落ち着けよ。別に言いがかりをつけるつもりはない」

「だったら、なぜこんなにあっさりと荒井の意見を否定したのか答えろ!!」

「はぁ……ちゃんと話すからさ。俺に銃を向けるのは止めてくれよ。話しにくいだろう」

「チッ……分かった」

 瀬那先輩は銃を下した。

 毎回、人をひやひやさせるのは本当に勘弁してくれ。

 それはさておき若月先輩にもしっかりとした理由があるらしい。

「神人の風紀委員として今日までの一年生の試合等を見させてもらったが、あれでは無理だな。ほとんど神王戦のメンバーに相応しくない」

「それはどういう根拠から来ているのかしら?」

「もちろん、試合結果からだ。それに俺はこれでもこの学園の強い部類にいる。残念ながら今回は神王戦で活躍出来る一年生はほぼいないに等しい」

 そんなに強い人なのか、この先輩。

「あの、瀬那先輩。この若月先輩って実力は相当ですか?」

「ああ、遺憾ながらな。あいつはこの学園の二番目に強い生徒と言われている」

 それは驚いたな。

 瀬那先輩が悔しそうな表情をする理由がよく分かった気がする。

「とにかく、だ。他の一年生は参加させても恥をかくだけだ。今年は五連覇がかかっている。生半可な気持ちで挑んでほしくない。

 それが俺がこの案を否定する理由だ」

「こ、考慮するわ……。みんな、何でもいいから案を出してね!! 抽象的な意見でも構わないわ」

「それは駄目だろう、姉さん……」

「あははっ……そうよね。とにかくたくさん案を出してちょうだい!!」

 瀬那生徒会長はそう言ったが、もう他の意見は出ないかもしれない。

 理由はもちろん若月先輩だ。遅刻や口調から非常に適当な先輩かと思っていたがそうではなかったようだ。

 神王戦の事をしっかりと考えている。だからこそ、的確な反論されそうで意見を出しにくい。

 しばらくこの部屋は沈黙に包まれるに違いない。


 × × ×


「「「「「「…………」」」」」」

 案の定、他の生徒達から意見は出ない。

 この状況には瀬那生徒会長も苦笑いだ。瀬那先輩も何とも言えない表情をしている。

 どうするんだ、いったい。そんな感想を持って意味ないだろうが。

 誰も話さなくなってから二分ぐらいが経った。まったく、協力してないな。

 俺はそっとため息を吐いた。

「さすがに埒が明かないわね……そろそろ一人くらい意見を聞くわ」

 えっ? どうしてそこで俺を見るんですか……。

 いや、まだたまたま目が合っただけかもしれない。

「どうかしら、司君?」

 やっぱり、俺か……。まあ、知っていた。

 周りを俺の方をじっと見ている。これは答えるしかない。

 俺は少しの間、策を考える。

 確か六人の生徒が代表を辞退していたはずだ。その内、二人は瀬那先輩と瀬那生徒会長だ。残りは四人ということになる。

 四人か……。よし、少し私情が入っているがいいだろう。

 柊も神王戦に参加したいって言っていたからな。これしか機会がない。

「そうですね……一つだけ案が浮かびました」

「そ、そ、それは本当なの!?」

「はい」

 俺の言葉を聞いた瀬那生徒会長は安心した表情をしている。

 上の立場というものがあるから責任を感じていたのだろう。とはいえ、俺の案でそれが解消されるどうか分からない。

 とりあえず、言わなければ始まらない。

 俺は一拍置いたあと、口を開く。

「先ほど、若月先輩は神王戦の代表に一年生は相応しくないと仰っていましたよね?」

「確かに言ってたわね、彼は」

「しかし、それはあくまで神人側の話です。俺が提示する案は人間側のある団体戦のメンバーを入れるというものです。

 どうでしょうか、瀬那生徒会長?」

 とりあえず、結論だけを述べた。

 理由はまだ言わない。何となくみんなの反応が分かるからだ。

「なるほど、それは悪くない話ね。私としては賛成したいわ。

 みんなはどうかしら?」

 瀬那生徒会長の思いがけぬ賛成のせいか、ほとんどの生徒達が困った表情をしている。

 俺が提案した時は怪訝そうな顔をしていたから無理もない。瀬那先輩や荒井先輩、千草は静かに頷いていた。少人数ではあるが、俺の意見を尊重してくれてほっとする。

 それはさておき、ここからどうやって話を進めるか。

 あの先輩なら黙っていないはずだ。

「ちょっと待った」

 やっぱりな。俺の予想通りだ。

「またか……今度は何の言いがかりだ?」

「だから、変な言い方は止めてくれよ。まあ、それよりも。問題児君、理由を教えてくれ」

「理由は簡単です。今年の人間側の一年生は神王戦に見合った実力者がいるからです」

「「「「「「…………!?」」」」」」

 周りの生徒達は俺の言葉を聞いて非常に困惑している。

 少し挑発もしているから仕方がない。

 若月先輩ですら少し動揺を見せているからな。

「ほう? 中々面白いことを言ってくれるね。そういえば、君の名前を聞いていなかったね」

 知らなかったのかよ。

 てっきり知っているのかと思って俺は接していたのだが。

「……涼風司です」

「俺は若月遼河わかつきりょうがだ。せっかくお前みたいな奴と出会えたんだ。

 涼風、俺と握手してくれないか?」

「あ、握手ですか……」

「ああ、そうだ」

 握手なんてどういうつもりだ。

 俺と友好関係でも築くのか。いや、そんな風に思えない。

 まあ実際してみれば何か分かるだろう。

 俺は席を立ち上がり、若月先輩のもとへ歩く。

 若月先輩は手を俺に向けて差し出している。

「じゃあ、よろしくお願いします……」

「ああ、よろしくな」

 俺と先輩は握手を交わした。

「……」

「……」

「……あの、いい加減離してほしいのですが」

「…………そうだな」

 握手の時間が異様に長い。

 他の生徒達が見ているから本当に終わらせたい。

 そう思っていた時、ある謎の行為に気が付く。

 どうしてこの先輩は右手を力強く握っている。それに何だ、この殺気は。

 ま、ま、まさか!!

 嫌な予感がしたのもつかの間。

 バシィっ!!

 拳が振り下ろされた。は、は、速い!!

「中々、物騒ですね……」

「驚いたな、片方を封じられているのに受け止めるとは」

 俺の右手を離さない理由はそれかよ。

 ふぅ……危なかった。

 咄嗟に左全身を使って攻撃を受け止める体制をして良かった。

 それにしてもどういう神経しているんだ。さすがに俺も少し気を悪くした。

「貴様、どういうつもりだ!! なぜ司にそんな真似をする!!」

 瀬那先輩が本気で怒っている。

 こんな瀬那先輩は初めて見た。幼馴染みを心配する気持ちはまだあったみたいだ。

「なに、ちょっとした力試しだ。この結果には予想していなかったけどな。少し認識を改める必要があるな。

 手荒な真似をしてすまない」

 そう言って若月先輩は手を離した。

 根は良い先輩なのだろうか。俺にはよく分からない。

「涼風の案は俺も賛成する。少し興味が沸いた」

 まさか一瞬で俺の実力を測ったのだろうか。

 もしそうだとしたら学園二位は伊達じゃないな。

 若月先輩の賛成を聞いた瀬那生徒会長は、

「それは良かったわ……ようやく案が通りそうね」

 嬉しそうに微笑んだ。

 会議は何とか無事終わりそうだ。

 俺はようやく一息が出来るような気がした。

 


 


 

 


 


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