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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第四章 決断編
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第十九話『問題児の打開策』3

 翌日。生徒達は神王戦準備により一層力を入れている。

 そんな中、俺はまた風紀委員室に呼び出された。

 今度はいったいどんな仕事を押し付けられるのか、億劫になっている。とはいえ、瀬那先輩が後で何をしてくるか分からないので行かなけばならない。

「はぁ……大変だな」

 ため息を吐きながら風紀委員室の前まで着いた。

 すると、今日は珍しくこの部屋の扉が開いている。少し気になりつつ、部屋の中をそっと覗く。

 部屋の中にはどうやら瀬那先輩と姉である瀬那生徒会長がいるようだ。そして何やら瀬那先輩が少し怒り気味だ。

「姉さん!! このようなミス、前もあったよな……?」

「あはは……そうだったかしら……」

 喧嘩でもしているのか。入ってみないと分からない。

 とりあえず、何か問題が起きているのは一目瞭然だ。

 急に話の輪に入るも失礼な気がするが、ここに呼ばれてきたのだし別にいいだろう。

 俺はそう考え、あえて声を掛けてみる。

「先輩達、どうかしましたか?」

「ああ、司か。実はだな――」

「司君、助けて!! 真央が私に意地悪をしてくるよ~」

「えっ!? いや、ちょっと……」

 近い近い……。

 瀬那先輩の言葉を遮った瀬那生徒会長は俺に近寄り、手を握ってきた。

 これは色々とまずいな。瀬那先輩は俺に目掛けて銃を向けている。

「と、と、とりあえず一度離れてください!! しっかりと話を聞きますから」

「そう? もう少し話をしても良かったのに……」

「姉さん!! 悪ふざけはそこまでにしろ。話は私からする」

「は~い、真央」

 瀬那先輩に軽く叱られた瀬那生徒会長は素直に黙る。その様子を確認した瀬那先輩は俺の方を向き、話し始める。

「察しが良いお前なら分かると思うが、一つ問題が起きた」

 やっぱりそうだよな。何となく予想はしていた。

「司、神王戦のメンバーは選抜で決まることは知っているよな?」

「一応知っています」

 昨日、柊や千草から聞いたばかりだからな。

 確か、選抜は今日までに終わる予定のはずだ。その件でトラブルがあったらしい。

「そうか、なら説明はいらないな。予定としては今日で神王戦の代表は決まるはずだ。

 そうだよな、姉さん?」

「ええ、そうよ。生徒会もその予定になっているわ」

「もしかして神王戦の代表メンバーで何かあったんですか?」

「ああ、司の言う通りだ。今日、代表を辞退する人が現れた。

 それも一人や二人じゃない。五、六人だ」

「そ、そんなにですか……」

 瀬那先輩はそっと頷く。

 そういう事か……。代表メンバーを辞退する人がそんなに多いということは、抱えている課題は一つしかない。

――メンバー不足。俺の脳内にそれが浮かんだ。

 まあ、考えるまでもないか。

「お前が来るだいたい二時間前くらいだ。五、六人の生徒が私に辞退を伝えに入って来た」

「なぜ辞退したのか、理由は聞けませんでしたか?」

「それがな……全員『言いたくありません、とにかくすいませんでした』としか言葉を発してくれなかった」

「そうですか……」

「ちなみに私も聞いたけど、同じ答えしか返ってこなかったわ」

「瀬那生徒会長でも、ですか……」

 いったいどういうことだ。

 風紀委員長や生徒会長に尋ねられても答えないなんて、絶対おかしい。普通なら全員とまではいかなくても、数人は理由を教えてくれるはずだ。

 それなのに辞退した生徒はただ謝るだけで一切返答しなかった。誰かに圧力でもかけられているのだろうか。

 もしそうだとしたらこんな大イベントの前で起きていい問題ではない。

 そういえば、どのような生徒が辞退したか聞いていなかったな。

「あの辞退した生徒はいったいどのような者達ですか?」

「私も至極驚いたが、全員司と同じ一年生だ」

「どうして一年生だけが辞退を?」

「それが分かれば、今悩んでいない。私には見当もつかない。姉さんは何か分かったか?」

「ごめんね、真央。残念だけど、私にもよく原因が分からないわ」

 どうやら先輩達にもこうなったのか把握出来ていないらしい。

「参ったな……こんな大事な時に」

 瀬那先輩は罰が悪そうにそう呟く。

 確かに一大事だな。さぞかし瀬那先輩は大変なんだろう。俺に仕事が回ってくるくらいだからな。

 俺も多少思考を巡らせてみたが、結局分かりそうになかった。

「とにかく起きたことは仕方ないわね。それに辞退した原因を探るよりも先にするべきことがあるわ」

「姉さんの言う通りだな。先にメンバー不足を解決しようか。とは言っても……こっちも中々大変だぞ」

「そうね。とりあえず、私と真央は参加するとして……」

「えっ、瀬那先輩達は神王戦の代表じゃないんですか?」

「ええ、そうよ」

「もしかして知らなかったのか?」

 俺は素直に首を縦に振る。

 そんなの常識だよみたいな顔されても、本当に初耳何だからしょうがないだろう。瀬那先輩達の反応から察するに、生徒会や風紀委員は緊急じゃない限り神王戦には参加しないようだ。

 現に緊急事態になっているわけだが。俺がとやかく言うのもどうかと思うので、ここまでにする。

「司に後で詳しく説明するとして……残り四人はどうする?」

「後四人ね……他の生徒会や風紀委員をメンバーに加えるのは難しいから困ったわ」

「そうだよな。あっ、そうだ!!」

 瀬那先輩が閃いたらしい。

「一度、代表メンバーや生徒会、風紀委員を集めて話し合ってみてはどうだ?」

「意外と他力本願なんですね……」

「い、い、異常事態なのだから仕方がないだろう!! 姉さんはどう思う」

「それはいいかもしれないけれど……真央はいいのかしら?」

「いいって何がだ?」

「だから、あの人も呼ばなければいけないのよ……」

 その言葉を聞くと、瀬那先輩は苦虫を噛み潰したよう顔をする。

 よほど嫌な人物なのだろう。本当に嫌悪感を抱いているからな、瀬那先輩。

「…………それぐらい我慢するさ。そうしなければいけないくらい私達は苦しい状況なんだ、私情を挟んでいる余裕はない」

 と言いながら先程と同じ表情なんですが……。

 気にしない方がいいのだろうか。

「それもそうね。じゃあ、早速集めましょうか。メンバーには私が伝えておくから、真央は大勢の人数が入れる部屋を用意しておいて」

「分かった、集めるのは頼んだ」

「ええ、任せて」

 何とか一つの手段を見つけたらしく動き始めるようだ。

 さて、俺は関係なさそうだから他の所に……。

「言っておくが、お前にもしっかりと参加してもらうからな」

 ですよね……知ってました。

 また俺は面倒な仕事を担ってしまった。

 最悪だな、まったく。



 

 



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